志願者の増減を左右した要因

後藤 続けて私大の志願者数ランキングを見ていくと、6位法政大学9万948人(同▲1万2680人)、7位東洋大学8万9808人(同▲1万1968人)となり、8位立命館大学8万3512人(同▲2万157人)、9位関西大学7万9526人(同▲8099人)と、関西の大学も出てきました。

 昨年は、立命館までは10万人を超えていました。こういう時には必ず何らかの手を打ってきた立命館の落ち込み幅は大きく、もう弾が尽きてしまったのかもしれません。立命館に限らず、10万人という志願者数を競う時代ではなくなったのでしょうね。もちろん、量が質を担保する側面はいまだ残りますが。

安田 11位の立教大学は6万5475人(同+4167人)で、今年総合大学で一番志願者を増やした大学です。

後藤 立教に来れば英語をきちんとやれるんだとアピールできたことは大きいと思います。

安田 「英語の立教」というのに加えて、今年志願者が増加したり、減少幅が少なくて済んだ大学を見てみると、対面授業が影響しているようにも思えます。

 去年の11月から今年の1月の時期に「4月からは原則対面授業です」と言っていた龍谷大学(12位5万6379人/同+3098人)とか関西学院大学、上智大学や明治大学がそうです。

 早稲田とか慶應義塾は、入試後に「対面重視」と言いだしました。この対応の差も志願者数には影響していると思います。オンライン授業なら地元の大学でいいじゃないかと言っていたのが、キャンパスに来てもいいとなればね。

後藤 これも一つの理由になるということですね。18位の京都産業大学が前年比▲1万5295人の4万925人と27%も減らしましたが、これはたぶん風評被害だと思います。最初に帰省した学生のクラスターが発生して、かわいそうなことにだいぶたたかれましたでしょう。大学側はPCR検査センターを造ったりしてすごく懸命に対策しています。4月から原則として対面授業を実施すると言っています。 

安田 19位の青山学院大学は4万123人(同▲1万7699人)と減少幅が大きい。3割減らしています。

後藤 今回の事態に、学内はかなり混乱しているようです。なんでこんなに志願者が減るのか、減りすぎだろうということですね。結果的には、きちんとした学生が増えて良かった側面が、特に経済学部などにはあったと思うのですが。

 青山学院には全国から受験生が来ていますから、新型コロナの影響もあったと思います。 でも、最大の要因は共通テスト利用型にあるのでしょう。7割くらい志願者が減った学部もあります。これは、国立大学でも同様のことが顕著に表れています。

 たぶん高校の進路指導の意識がまだ追いついていない。私大文系は3教科に決まっているのに、改めて数学をやれなんて、ちょっと大変だと思います。文理分けした後にカリキュラムを変えられないですからね。だからこそ、入試方式の2年前周知がこれまで以上に大切なのですが、いつの間にか告知の期限は「夏まで」が「年度末」でも大丈夫になっている。2021年度の入試概要の発表も遅れに遅れて、文部科学省が自ら蔑ろにしています。受験生の負担だけでなく、高校のカリキュラム編成をも含めて考慮していただき、変更点は早めに周知してもらいたいものです。

安田 この話の続きは、次回、東京大学をはじめとする国公立大学について語るときにでもいたしましょう。