日本の悲願である国産ドローンが社会課題を解決、日本の技術が世界へと羽ばたく

国産ドローンを開発するACSLが小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」を発売した。高いセキュアと飛行性能を実現したSOTENは、インフラ点検や防災・災害対策、測量などでの活用を想定し、日本が抱える社会課題を解決することが期待される。そしてその先に見据えるのは、海外展開だ。日本発ドローンがいま、世界に飛び立とうとしている。

社会課題の解決を目的に設立された大学発ベンチャー

 千葉大学野波健蔵研究室から生まれた大学発ベンチャーとして、ACSLの前身である自律制御システム研究所が設立されたのは2013年11月。きっかけは、東日本大震災により発生した福島第二原子力発電所の事故にある。人の立ち入ることのできない、放射線濃度の高いエリアにドローンを飛ばし、遠隔で作業ができないかと野波氏は考えたのだ。野波氏が20年以上かけて研究してきた成果を基に国産ドローンを開発し、社会課題を解決することを目的に同社は立ち上げられた。代表取締役社長兼COOの鷲谷聡之氏がその思いを語る。

「私たちが支えたいのは社会インフラです。そこで生じる、きつい、汚い、危険な業務から作業員を解放し、そして、持続可能な社会をつくっていくことをミッションに据えています」

日本の悲願である国産ドローンが社会課題を解決、日本の技術が世界へと羽ばたくACSL 代表取締役社長兼COO 鷲谷聡之氏
1987年生まれ。2013年4月マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク ジャパン入社。16年7月ACSLに入社し執行役員Vice President、同年12月取締役最高財務責任者(CFO)兼最高戦略責任者(CSO)に就任。取締役最高事業推進責任者(CMO)、取締役最高執行責任者(COO)を経て、20年6月代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任。

 同社の製品は産業向けに特化し、インフラ点検や物流、防災・災害対策、測量といった用途に主に活用されている。近年は少子化高齢化の影響もあり、時には危険も伴うような現場で働く人が減っている。しかし、高度経済成長の時代に日本各地に建設されたインフラは老朽化が進む一方だ。点検業務は今後ますます重要になっていくだろう。

 また、近年は気候変動の影響から大規模災害が頻発しており、被害を最小限に食い止めるための、現場の状況把握の重要性が増している。あるいは過疎地などでは、人口減少によって物流網を維持するのが難しくなっている。そうした数々の課題を解決する手段として、産業用ドローンのニーズは急速に高まっているのだ(図1参照)。