イヤミ、陰口、無視…「いじめ」は犯罪なのか、その境界はどこにある?あらぬうわさ、イヤミや陰口、無視、ついには恐ろしい手紙が……。いじめはどこからが「犯罪」なのか イラスト:ソノダナオミ

「いじめは犯罪だ」と言われることがある。どんないじめが犯罪となるのだろうか。犯罪にならないいじめなら許されるのだろうか。ケーススタディーを用い、いじめを構成する行為を法の視点で分析してその境界について考えてみよう。

試合で失敗したら脅迫された

 今回からは、学校で起こる問題をいま少し詳細な法の視点から見ていきたいと思います。毎回「法は個人の尊厳を守るためにある」というお話を繰り返してきましたが、そこから一歩進んで、「人が有する権利は、それぞれの場面で具体的にどの法律によって守られるか」を検証してみましょう。

■ケース3■ 恐ろしい手紙が投げ込まれた

Aくんは、強豪校として知られるB中学校のサッカー部に所属しています。
先日の地区大会の決勝戦で、誤ってオウンゴールをしてしまったAくん。その失点がもとで、チームは試合に負けてしまいました

後日、次の選手権に向けてレギュラーメンバーが発表されましたが、監督は、Aくんを引き続きレギュラーに選びました。「地区大会で負けたのはAのせいなのに」と、特に、レギュラー入りできなかった部員たちは、決定に大きな不満を持っているようです。

程なく、サッカー部内で「Aはお父さんが監督と親しいから、レギュラーに残してもらった」という根拠のないうわさが流れるようになり、それ以降、Aくんは事あるごとに部員からイヤミや陰口を言われるようになりました。そしてついには、キャプテンのCくん以外の部員たちから無視されるようになってしまいます。声を掛けても返事をしてもらえず、ペア練習でもCくん以外に組む相手はいません。

そんなある日、「レギュラーを辞退しなければ、二度と動けない体にしてやる」という、恐ろしい内容の手紙が、登校したAくんの靴箱に投げ込まれていました。Aくんはついにつらい気持ちが抑えられなくなり、サッカー部を辞めたい、学校に来たくないとまで思うようになります。

次第にAくんは、練習に出てこなくなってしまいました。危機感を抱いたCくんは、ある日、全部員の前で言いました。「チームメイトの失敗を許さない。そんなチームで本当にいいの?」