増加する「Fランク大学」、“ボーダーフリー”時代の大学の選び方偏差値が無力化していくことで選抜機能も薄れて、中堅大学も横一線の競い合いに加わる時代になる(日本大学経済学部)

短期集中連載「2030年の大学入試」。5回目は、「ボーダーフリー」化が進む時代の大学入試について考えてみたい。模擬試験の志願者数が少なければ「偏差値」は付かず、不合格者が少なければ「ボーダーフリー」化していく。「2:8の法則」通り、これから偏差値が付かず競争選抜が働かない状況に向かう8割の大学は、横一線での学生獲得競争に直面していく。そのとき、受験生に選ばれる大学には、何が必要となるのだろう。(ダイヤモンド社教育情報)

増加していく「Fランク大学」

 連載3回目では、2030年に向けて、大学入試における「偏差値」が無力化していく様子について触れた。河合塾では、合否の可能性が50%となるラインを「ボーダーライン」と呼んでいる。すでに、偏差値35に満たない大学は不合格者が見られず、合否判定ができないため、判定不能=ボーダーフリー(BF)ということから「Fランク大学」として扱われていた。大学入試の易化や一般選抜入試の回避は、こうした「Fランク大学」が今後増加していくことも意味している。

 河合塾の「2023年度入試難易度予想一覧」を見ると、私立大の個別試験のところに「偏差値」が載っている。35.0までは数値が記されているものの、そこに満たないと「BF」となり、これがいわゆる「Fランク大学」である。九州・沖縄の56ある私立大だけで見ても、学部・学科に一つでも「BF」表記がある大学は34もある。これに「偏差値」35と37.5がほとんどの「BF」予備軍的な大学を加えると、多数派はすでに「Fランク」大学へと向かっているわけだ。

「Fランク大学」への流れは全国的にも止めることはできない。定員を充足するために外国人留学生をかき集め、“便宜置籍船”のように学籍の対価に授業料を徴収している大学も珍しくない。こうした現状を目にする限り、「大学は何のためにあるのか」が問われる時代に、すでに突入したと言わざるを得ない。

 全国の大学の多数派は、すでに「Fランク大学」とその予備軍である。現状で偏差値40台の大学も安泰とは言い難い。そうした流れは、女子大においてより顕著に表れそうだ。
 
 1985年の男女雇用機会均等法は、女子の高等教育の変革を促すことになった。国文や英文、家政などが中心だった女子大の教育内容は、短期大学の四年制大学化でも大きな変化はなかった。英語コミュニケーション的な学科の看板を「観光」や「異文化交流」に掛け替えて延命してきたものの、もはやその神通力も消えつつある。
 
 いずれにしても、英語によるコミュニケーションを教えようとする大学は不人気だ。これまでの女子大にはない、学部の設置が求められている。加えて中高でも同じだが、「共学校」人気にはあらがえないため、女子大の多くは人気をなくしている。 
 
 そうした現状を示すのが女子大の偏差値の低下である。共通一次が始まった40年前には、私立女子大のトップにリベラルアーツ系の津田塾大や東京女子大があり、一部には「偏差値」60を超えるところもあり、「MARCH」と遜色がなかった。ところが現状で見ると、いずれも50が多い47.5~57.5の間にある。日本女子大も一部60を付ける入試があるものの、おおむね同様だ。水準的には、いわゆる「日東駒専」と並ぶ。