上位2割の大学を目指す中学受験生
2022年の出生数は、どうやら80万人を割り込みそうな情勢である。現在の四年制大学の入学定員が20年後もそのままであるのならば、大学進学率を80%近くまで上げなければならないが、それは現実的ではない。
ここで、現在の大学を巡る状況を確認しておきたい。文部科学省の学校基本調査(令和3年度)によると、国公私立の四年制大学は全国に803大学あり、その学部入学定員の合計は63万人強となっている。23年の18歳人口は120万人ほどで、直近の大学進学率は53%強だから、すでに全入状態である。
22年度入試では過去最大の47.5%と、半数近い大学が定員割れを起こしている。このまま推移すれば、募集停止など大学の淘汰(とうた)は必至である。人口減が激しい東北や四国が厳しいことは分かるが、より厳しいのが東京の周辺である。
国立大(82校)約9万6000人、公立大(96校)約4万人の学部定員がある国公立大も例外ではなく、教育系や工学系の地方大では、倍率1.5倍程度の学科も数多く見られるようになっている。
中学受験で中高一貫校に入った生徒が目指すだろう大学について考えてみよう。国際的に競い合える大学として学術研究懇談会に集まった11の研究型大学(RU11)、具体的には、旧7帝大と筑波大・東京工業大の国立9大学(学部入学定員合計約2万3000人)と早稲田大・慶應義塾大の私立2大学(同約1万5000人)、それに一橋大を加えた入学定員合計4万人弱の12大学あたりが、いわゆる難関大としてまず挙げられそうだ。
国公私立の入学定員合計(22年度)が9347人だった医学部医学科も引き続き人気がありそうだ。東京理科大、同志社大、関西学院大、ICU(国際基督教大)、上智大、明治大クラス、世界の若者と生活して学ぶ特別な価値のあるAPU(立命館アジア太平洋大)や大学の校舎も設備もコミュニケーションを重視するはこだて未来大のような特色のある大学、国立大でも改革意欲のある岡山大や金沢大など、そして中央大法学部、立命館大総合心理学部のような実績のある一部の学部を見繕って合わせると、学部入学定員は10万人を少し欠けるぐらいになる。
大学新入生の2割程度を占めるこの10万人の枠に入ることが、中学受験をして中高一貫校に入った生徒とその保護者にとってはボーダーラインといえるかもしれない。
そうなると、「MARCH」よりも入学が容易な約3万人の「日東駒専」(日本大・東洋大・駒澤大・専修大)や約2万人の産近甲龍(京都産業大・近畿大・甲南大・龍谷大)クラスの大学にまで「全入化」の波は、早晩打ち寄せる可能性があり、こうした中堅大は微妙な立ち位置になるだろう。
「偏差値」が無力化し機能しなくなったとき、多くの大学は“横並び”になる。そうした状況で、受験生はどのように大学を選ぶのか。いま「偏差値52.5の壁」という言葉がある。平均である偏差値50より1ランク上にあることも示唆的ではあるが、このラインより下の大学では、大学選びが学びたいことよりも就職や資格取得を意識する(せざるを得ない)圧力が強まるという境目を示す。