「仲間外れはなさそう」と先生は言うけれど……当事者や関係者の発言からどこまで「事実」を導くことができるか。「事実認定」は、学校で起こる問題の解決に最も重要なプロセスであり、最も難易度の高い課題である  イラスト:ソノダナオミ

学校で起こるトラブルは、“加害”や“被害”の事実認定が難しい。学校がいじめの認定にちゅうちょしがちな理由の一つでもある。第三者からの証言も学校に「聞き間違い」と判断されてしまった場合、心に痛手を負った生徒やその保護者は、いじめ問題解決に向けてどのような手段を取ればよいのだろうか。

「事実認定」が難しい“学校の問題”

 どんな身の回りのトラブルでも、解決には「事実認定」が必要です。学校で起こる問題も例外ではありませんが、当事者が子ども同士であることで一筋縄ではいかないことも数多く見受けられます。“加害者”も“被害者”も“通報者”も生徒という関係の中で、学校はどのような対応を取りがちでしょうか。また、“被害者”の保護者は、学校にどのような対処を求めればよいのでしょうか。

■ケース5■  学校に行けないのは本人のせい?

Aさんは、クラスメートのBさんが最近教室に1人でいることが多いのに気づきました。ある日、AさんはBさんのいないところで、Bさんの仲良しグループにいるCさんとDさんが、Bさんの悪口や「Bさんには近づかないようにしよう」などと言っているのを聞いてしまいます。

話の内容から、Aさんはグループ内でBさんが孤立していることを知りますが、どうしたらよいか分からず、その場をそっと立ち去ることしかできませんでした。

数日後、Aさんは学校の近くで偶然Bさんのお母さんに会いました。AさんとBさんは小学校の頃一緒に遊んだ友だち同士で、お母さんのこともよく知っています。Aさんは思い切って、「Bさんがクラスで仲間外れにされているかもしれない」とBさんのお母さんに話しました。

お母さんが家でBさんに話を聞いてみると、Bさんは「最近、CさんとDさんに仲間外れにされている。他の友だちからも陰でひそひそとうわさされたり、笑われたりしていて、とてもつらい。できれば学校にも行きたくない」と言い、それからは学校を休みがちになりました。心配になったお母さんは、担任のE先生に電話で相談を持ち掛けます。

ところが後日、先生から返って来た返事は「Bさんと仲の良いCさんやDさん、ほかの生徒にも聞きましたが、誰もBさんを仲間外れにしたことはないと言っています」というものでした。お母さんはその言葉があまりにも意外だったので、「実はAさんから……と聞きました」と、Aさんから聞いた内容を打ち明けました。

「では、Aさんにも確認してみますが、皆Bさんを仲間外れになどしていないと言っていますし、Aさんの聞き間違いや勘違いかもしれません。学校に行きたくない理由は、ほかに考えられませんか」――お母さんは、まるでBさんに原因があるかのようなE先生の言葉に不信感を抱くようになりました。それからもBさんが学校へ行けない日々は続き、やがて休み始めてから1カ月以上が過ぎました