30日を超える欠席は法律上の「重大事態」

 Bさんは、CさんやDさんたちの行為によって「心身の苦痛」(いじめ防止法第2条第1項)を感じており、E先生は、Bさんのお母さんの相談がきっかけでその事実を認識しています。ですから、学校は今回の出来事を「いじめ」として対応することになります。
 
 具体的には、まずE先生は、1人で情報を抱え込むことなく、学校と共有し(いじめ防止法第23条第1項)、校内に設置が義務付けられている対策組織(同第22条)と協力してこの問題に対応する必要があります。

 特に、初期対応における事実関係の確認は、今後の被害者支援や加害者指導の方向性を基礎づける非常に重要な部分です。ですから、安易な決めつけや思い込みで進めることなく、慎重に行われなければなりません。
 
 この点、E先生は、Aさんの証言を確認前から「聞き間違いや勘違いかもしれません」と述べており、こうした姿勢は、被害者側の不信感を招いてしまうだけでなく、事実関係の適切な把握も難しくしてしまいます。

 なお、学校にはそれぞれ、いじめ防止法第13条により作成が義務付けられている「学校いじめ防止基本方針」があり、その学校のいじめへの対処法が記載されています。いじめを受けた生徒の保護者は、学校の対応がこの基本方針に合致しているかを確認し、必要があればその通りに進めてもらうよう伝えることも大切です。
 
 今回のケースでは、Bさんが学校を休み始めて1カ月以上が経過してしまいました。いじめ防止法では「重大事態」とされる期間です。同法第28条第1項第2号は、「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」、学校は組織を設置して事実関係を明確にする調査を行わなければならないと定めます。

「相当の期間」は、年間30日が目安とされ、原因となる「いじめ」はその「疑い」だけで「重大事態」の要件を満たします。したがって、万が一学校が調査を開始しない場合、Bさんの保護者は学校に調査の開始を求めることになります。
 
 いじめは発生から時間がたてばたつほど、加害行為がエスカレートしてしまうおそれがあります。また、事実関係もより複雑になり、当事者間の感情的な対立も激しくなっていきます。Bさんのように、被害者が学校に行けない期間が長引いてしまうこともあります。
 
 ですから、いじめ防止法が目指す「早期発見・重大化防止」を共通認識とすることは、被害者のためはもちろん、学校に関わる全ての人たちにとっても極めて重要です。特にコミュニケーション操作系のいじめは、「仲間外れ」「悪口・陰口」「うわさ」「いじり」などの「評価」だけが独り歩きしやすいため、初期対応の段階でより慎重に、具体的な事実関係を明らかにしていくことが大切です。