「探究学習×イノベーション」のカリキュラムはどのように作られていったのか【前編】探究学習カリキュラムの重要な役割を担う、新たな創造を実現するための「5つのフェーズ」 画像提供:芝浦工業大学附属中学高等学校

芝浦工業大学附属中学高等学校での探究学習は、同校が独自に検討と工夫を重ねたもので、2年間にわたって一貫した方針で設計されたカリキュラムだ。外部の協力も得ながら試行錯誤し、挑戦的な取り組みを続けてきた。その具体的な進め方や工夫などをカリキュラム作成に携わった2人の担当教諭に聞いた。(取材・文/奥田由意、撮影/平野晋子)

「深化と探索」を
5つのフェーズで実践 

   芝浦工業大学附属中学高等学校の高校探究学習は、国語科の今井正道教諭と美術科の山岡佳代教諭が中心となって授業を設計している。プロセス思考とデザイン思考の2点に重点を置きながら、キャリア教育や国内教育旅行(後述)との連動も図っている。

 山岡氏は、探究学習の担当になる以前からイノベーション教育学会の高校教育部会と研究部会に参加し、それぞれ月1回の研究会などで他校の探究活動やイノベーションに関係する研究などのイノベーション教育プログラムについての情報を収集し、知見を深めてきた。

 それを校内で共有し検討を重ねた結果、探究学習の方向をイノベーション教育に絞ったという。イノベーション教育の第一人者、堀井秀之氏が主宰する大学生や大学院生を対象としたi.schoolの6つのアプローチ、「アナロジー(類推)思考」「ニーズ×シーズ発想」「未来探索アプローチ」「エスノグラフィック(訪問観察的)アプローチ」「エクストリームユーザーリサーチ」「バイアスブレイキング(先入観をなくす)」も参考にしながら、芝浦式イノベーション教育プログラムを独自につくり上げている(第52回参照)。

 まず、今井氏主導で「深め繋がり創造する未来」をテーマに、「自信を持って仲間とともにプロセスをデザインできるようになる」ことを目標に設定した。実践に当たっては、米国スタンフォード大学経営大学院教授のチャールズ・オライリーの組織経営理論のベストセラー『両利きの経営』にヒントを得た「深化と探索」という2つの軸を中心に据えた。

 深化期には、生徒1人1人の好きなこと・得意なこと・専門性・思考・問いを深めるために、自分の考えをオープンにする。

 探索期では、深化期でオープンにした自分をベースに、人・組織・知識・世界とつながり、新たなモノ・コトを創造していく。

 これを次の「5つのフェーズ」で実現する。

【フェーズ1】 未来の見つけ方(アイデア出し、思考訓練)
【フェーズ2】 自己深化プレゼンテーション
【フェーズ3】 自己深化レポート
【フェーズ4】 チームビルディング
【フェーズ5】 コンペ参加(社会に新たな製品やサービスを提案する)

 1年次にフェーズ1~3を通じて自分の興味や強みを探し、自分の考えを効果的に表現する手法を学ぶ。2年次で各自の強みを生かしたチームを組織し、自分たちで外部のさまざまなコンペに向けたプロジェクトを進める(フェーズ4)。そしてコンペに参加(フェーズ5)までが一連のプログラムだ。