政治的判断に従って投資すれば、もうかる可能性は低い。左派あるいは右派を引きつける企業は、投資対象としては良かったり悪かったりするかもしれない。だが、現在の政治において左派がクリーンで労組寄り、あるいは右派が石油や銃の使用に好意的だという事実は、この際どうでもいいことだ。重要なのはこうした企業の稼ぐ力と、その企業価値がどれほど高いかということだ。
環境を重視する投資家は過去1年、このことを思い知らされてきた。環境に優しいと認められているものは何でも一様に売られ、良いことをしながら金を稼ぐという考えは打ち砕かれた。
現実の世界は、ESG(環境・社会・企業統治)投資の擁護派が主張していたよりも厳しいことが分かっている。教訓は厳しいものだったが、このセクターに投資する人たちに投資の基本的事実の幾つかを思い出させるはずだ。株価の下落によって関連銘柄の見通しは改善している。
今年はクリーン投資にとって、ほぼ全般的に悪い年となっている。SP500種指数の構成銘柄で最もパフォーマンスが悪い2銘柄は太陽光発電関連企業で、エンフェーズ・エナジーは60%、ソーラーエッジ・テクノロジーズは70%それぞれ下落している。プラグ・パワーをはじめとする水素関連企業の株価は急落しており、同社は生き残れない可能性があると警告した。風力発電関連企業も業績が振るわないため幾つかの契約から撤退しており、デンマークのオーステッドはドルベースで48%、米ネクステラ・エナジーは29%下落している。
電気自動車(EV)も期待外れで、スタートアップ企業やサプライヤーが打撃を受けているほか、バッテリーメタルの製造に使われるリチウム鉱石の価格は4分の3余り下落している。ただし、市場をけん引しているテスラの株は例外だ。
グリーン株(環境関連銘柄)は軒並み値を下げていたが、過去1カ月ほどの間に一部値を戻す動きがあった。
ここから一つ目の教訓が得られる。それは債務だ。クリーンエネルギー分野は巨額の借り入れに依存しているため、高金利が大きな打撃になるということだ。オランダの資産運用会社ロベコでクリーンエネルギー・ファンドを運用するロマン・ボナー氏によると、主要なプロジェクトは通常、資金の80%を借り入れで賄っているため、資金調達コストの上昇が競争力に大きく影響するという。
グリーン株を買っていた投資家たちは、借金を元手に米国債を買っているような状況だとは思っていなかった。しかし、結果的にはそうなった。それはまた、企業の資金調達コストだけの問題ではない。高い借り入れコストは、屋根の上のソーラーパネルや、EVに対する消費者の需要を押し下げる。ソーラーパネルもEVもリースされることが多く、リースのコストは借り入れコストに左右されるからだ。
これは長期的な視点に関係することだ。低金利は投資家に長期的思考を促す。低金利下では、将来の利益と現在の利益はほぼ同じくらいの価値となるため、将来の利益確保を狙った借り入れを促す。
一方、高金利は短期的思考を促す。現在の利益が将来の利益よりもずっと大きな価値を持つからだ。米財務省短期証券(Tビル)で5%の利回りを得られる時に、将来の利益に賭ける意味があるだろうか。長期的利益を狙うなら、クリーンエネルギーや地球温暖化関連に投資するが、短期的利益を得たいなら化石燃料分野に投資する。投資家たちはこのところ、金利上昇を受けて短期的思考を促されている。
二つ目の教訓は政府だ。ロナルド・レーガン氏はそのことを誇張気味に表現し、「最も恐ろしい9語の言葉は、『私は政府の者です。お手伝いしましょう(I’m from the government, and I’m here to help)』だ」と語った。だが、国の補助金に頼って利益を確保しようとする投資家は、気まぐれな政治家とレーガン氏が懸念した官僚のなすがままにならざるを得ない。今年の下落に関しては、昨年成立したひどいネーミングの「インフレ抑制法(IRA)」に盛り込まれた多くの補助金の詳細を官僚が示さなかったことで売りが加速した。
BNPパリバ・アセットマネジメントで環境戦略グループの共同責任者を務めるエド・リーズ氏は「われわれはまだ、年内に詳細を得られるという期待を持っている」と述べている。次の問題は政治家かもしれない。少なくとも、ドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利し、IRAをほごにするようなことがあればそうなる。IRAで助成されるプロジェクトのかなり多くが共和党優勢の州に向けられているため、そうはなりにくいとリーズ氏はみる。だが、トランプ氏が環境保護派の主張への共感を持たないことは確かだ。
三つ目の教訓は、現在の買いに最も関係のあるバリュエーションだ。トレンドとなっており、大幅に割高な株を買うのは大きな災いの元だ。最近の最も極端な例は恐らく、クリーンエネルギー関連投資が盛り上がっていたロンドンで2021年2月に登場したLG(リーガル・アンド・ジェネラル)水素エコノミーETF(上場投資信託)だろう。このETFは上場初日から急落し、ローンチ価格まで戻すことなく、それ以降55%安となっている。
リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントのソニア・ロード最高投資責任者(CIO)は「非常に厳しい現実に直面している」と話す。
問題は、過大評価がなくなったかどうかだ。ロード氏は、高金利の1年間で、ゼロ金利に近い状態が続いた12年間に蓄積された過大評価が完全に崩れ去ることはないと懸念する。だが明らかに、バリュエーションは以前よりはるかに低くなっており、現在は好機もあるのではないかと同氏は期待している。
フィデリティ・インターナショナルでサステナブルファンドを運用するベリスラワ・ディミトロワ氏は「もはや、以前のように大幅なグリーンプレミアムはない」とした上で、クリーンエネルギー関連銘柄は「これまでよりずっと興味深く、再生可能エネルギーが終わったとは思わない」と述べている。
債券市場では、投資家はもう、あったとしてもそれほど多くの「グリーニアム(グリーン債に付くプレミアム)」を支払っていない。株式市場に関する判断はより難しい。SPグローバル・クリーンエネルギー指数には割安なものもあれば、そうでないものもあるため、セクター全体が素晴らしい掘り出し物だと結論付けるのは難しい。
それでも、過大評価がなくなったのは買い手にとって好ましいことだ。目的よりも利益にこだわる投資家は、やっとまた、クリーンエネルギー株を検討できるようになった。
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――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト



