【今回のまとめ】
1. 緩和政策終了模索の記事が出た
2. 非伝統的緩和政策は終わらせ方が難しい
3. FRBは投資家に「心の準備」をさせている
4. 今回の記事は一段のドル高を示唆
5. 日本株はこれを好感する
6. アメリカ株は例年とは違う展開に
FEDウォッチャーの観測記事が話題に
5月10日、ニューヨーク株式市場が引けた後、ウォールストリート・ジャーナル(WJS)が「FRB(米国連邦準備制度理事会=アメリカの中央銀行)が緩和政策の終わらせ方を模索している」という見出しの、大きな記事を配信しました。
記事の署名は、ジョン・ヒルゼンラース記者。彼はいわゆる「FEDウォッチャー」の中でも最もFRBに近い新聞記者だと目されています。
FRBは、しばしば故意のリーク(漏えい)により、記事を書かせているフシがあります。従って今回の記事も「これはFRBによる実験アドバルーンだ」と感じた市場参加者が多かったようです。
つまり、このような記事に対して市場がどう反応するのか、まず小手調べというわけです。その意味では今週の為替、株式市場の動きは注目に値すると思います。
量的金融緩和政策は「幕引き」が肝心
これまで続けられてきた緩和政策は、非伝統的緩和政策と呼ばれます。
普通、中央銀行は政策金利を上げ下げすることで調整します。これは「伝統的」な金利政策です。しかし、不景気が長引くと政策金利がゼロになってしまい、もうそれ以上、金利を下げることが出来なくなってしまいます。
そうなると中央銀行が市中に出回っている国債などを購入することで、緩和を続けることになるのです。これは伝統的な方法に拠らない緩和ですので非伝統的緩和政策、または量的緩和政策(QE)と呼ばれています。
金利の上げ下げによる伝統的な金利政策は、中央銀行がいつもやっていることですから、慣れています。しかし、非伝統的緩和政策は、中央銀行の側でも、一般の市場参加者の側でもめずらしい経験なのです。
言い換えれば事例が少ないということです。
それだけに非伝統的緩和政策を幕引きする際には、伝統的金利政策の場合以上に、市場や経済に対するインパクトに配慮する必要があります。
具体的には中央銀行がこれまで貯め込んできた国債や住宅ローン証券を、市場に放出しなければいけないのです。それは供給過多で価格が崩れるリスクをはらんでいます。
この方向転換を市場にどう伝達し、市場かく乱を避けながら非伝統的緩和政策を巻き戻すか? それがいわゆる、出口戦略(イグジット・ストラテジー)と呼ばれるものです。
もっと簡単な言い方をすれば「こういう風に、処分しますから、ヨロシク」ということを、FRBが市場に対して一言ことわっておくわけです。これは市場参加者に「心の準備」をさせるための配慮です。
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