株式市場の混乱は
なぜ起きてしまったのか
円安に進む速度にも大きな問題があった。年末に対ドル円相場100円というところが望ましかったのではないか。当初私は来年中に90円台後半に至ればよいと考えていたから、あまりの速度に不安を禁じ得なかった。
もしも、円安が急激に進んで、そのメリットが一部の人や企業に集中し、そのデメリットが大半の人たちを苦しめることになれば、アベノミクスは経済論としては成立したとしても、政治論としては成立しなくなる。実際、輸入品が相次いで値上げされ、賃金が上がらない現状には日一日と不満が蓄積されつつある。
結局、3本目の矢である“成長戦略”が鍵を握っているが、今のところ期待するほどの心理効果も生まれていない。今までの「子育て」や「農業」に続いて「特区構想」も打ち出されるらしいが、いかにも間に合わせで国民的支持が盛り上がる気配はない。むしろ、総花的な提案ではなく、即効性のある規制改革などで単発的に一気に進めたほうが効果があったように思う。そして、“新しい技術の開発”という本筋に向かって突進すべきである。
やはり、4月4日の黒田東彦日銀総裁の明確過ぎる金融緩和政策が今日の不安定な事態を招いていると言わざるを得ない。せいぜい「来年末までに物価上昇率2%を実現させるため最大限の努力をする」でよかった。「来年末までに市場に流す金を2倍にする」と明言したことにより、現在の株式市場の混乱は不可避になったと思う。
アベノミクスの発動以来、長期金利の上昇や株の暴落など「想定外」の事態が次々に起きている。
だが、これは日銀が万能ではないから当然のこと。海外経済や投資家心理は日銀の手に負えるものではない。内外の政治的要因はさらに手強いもの。そうであれば、日銀はできる限り手の内を見せるべきではない。手の内をさらけ出した中央銀行は臨機応変の対応ができなくなる。そんな中央銀行は権威も影響力も失われる。
アベノミクスに誤算があったか。そうであれば、それを修正する努力も必要だ。



