普天間基地の辺野古への移設問題は、このところ急速にその問題構図が変わってきているように見える。
1996年4月の普天間返還の日米合意の当初は、日本と米国、あるいは日本政府と米国政府の綱引きであったはずだが、今日では沖縄と日米両政府連合の綱引きのようになっている印象だ。
紅白の綱引きで、白組の日本政府が、紅組の米国側について必死に綱を引っ張っている。それも米国に負けないような力で引っ張っているような感じがする。
日本の国民の大半は未だ白組側にいるが、次第に綱の手をゆるめ、応援の声も小さくなってしまった。
米軍が移設反対リーダー2人を拘束
なぜ政府は米国に抗議しないのか
こんな折の2月22日、沖縄で奇妙な事件が起きた。辺野古への移設に反対する運動のリーダー2人が米軍に身柄を拘束されたというのである。その後2人は日本側に引き渡され、逮捕・送検されるに至った。
2人はキャンプ・シュワブのゲート前で敷地内にわずか踏み込んだだけだと報道されている。しかも他の人たちが敷地内に入るのを制止して「引け」と叫んでいたという。そうだとすれば、待ち構えていたような強権的措置だ。
これに対して、日本政府は米政府に何ら抗議をしていない。むしろ、この強硬措置に納得しているようにも見える。少なくとも、米国政府に事情説明を求め、その結果を国民に説明すべきではないか。
「沖縄の人たちには、戦中、戦後を通じてわれわれのために大変な苦難を担ってもらった。だから、沖縄のためになることなら、何でもできることをやるのは当然だ」
外務省などの反対を押し切ってクリントン大統領との会談で普天間返還を要請した橋本龍太郎首相が、帰国の翌朝、私にそうつぶやいたことは既に本欄でも紹介した。
そのとき橋本首相は、日本側の先頭に立って綱を引いていたと言えるだろう。
だが、今は政府が沖縄をいじめているような感じがする。