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“3・11”に合わせるかのようにメルケル独首相が来日。われわれの胸に響く数々の言葉を発して去った。
かねてから私は、強い関心を持って、メルケル首相の言動に注目してきた。
彼女はしばしばサッチャー英元首相と対比されてきた。両者は共に「鉄の女」と呼ばれることがあるらしい。顕著な共通点もある。女性政治家であることはもちろんだが、2人とも保守政党に属する。そして、サッチャー氏は化学、メルケル氏は物理学と理系女子であることもふしぎな共通点だ。
最も違うのは、サッチャー氏が化学を学んでいた若い頃から政治家を目標としていたのに対し、メルケル氏はベルリンの壁の崩壊、冷戦の終結、ドイツ統一の激流の中で政治家への道を選択したことだ。
大きな野心と構想力で英国首相の座を得たサッチャー氏と違い、メルケル氏は現実政治に柔軟に対応して最善の道を選び現在の地位に至ったと言ってもよい。その流儀は脱原発への大転換を成し遂げることに発揮された。
メルケル首相には、わざとらしいパフォーマンスは見られない。言動もすこぶる抑制的である。言わば「静かなるサッチャー」と言うところだろうか。
ヨーロッパだけでなく、世界政治の中でも年毎に彼女の存在感は増している。それは、ロシアと中国からも信頼されていることによるものだろう。だからと言って、八方美人の域にはいない。
日本とドイツの違いを感じさせた
メルケル首相の3つの発言
今回の訪日で、彼女は日本に対して示唆に富む発言をした。これは「静かなる警告」と言ってもよい。