長く付き合う顧客の存在があるからこそ
イノベーションが生まれてくる

松江英夫(まつえ・ひでお)
/ デロイト トーマツ コンサルティング パートナー Strategy&Operationsリーダー。中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授(「実践・変革マネジメント論」)、事業構想大学院大学客員教授。「経営変革」に関わる戦略・組織領域のテーマ(成長戦略、M&A、イノベーション、グローバル組織再編)などを多数展開。主な著書に『ポストM&A成功戦略』、共著に『クロスボーダーM&A成功戦略』(いずれもダイヤモンド社)など。本連載を基にした書籍『自己変革の経営戦略 - 成長を持続させる3つの連鎖』をダイヤモンド社より7月17日発売予定。

松江 元来日本には技術とかソリューションを生み出していく素地があると思うのですが、何が日本の特徴だと思われますか?

田中 日本は国民性として凝り性というか、「制約がある条件下で工夫する」のが好きとよく言われます。いくらでも大きくしていいというのは、日本人は得意ではない。たとえば、盆栽です。あのサイズで何をやっていくかを追求していくようなことが日本人は得意です。

 私どもは用途開発というのですが、日本では「工夫する」とういう工程を一緒にやってくれるお客さんがいます。一緒にやればそこで話が始まります。これはなかなか中国ではできないのです。

松江 一緒にやってくれるお客様がいるということ、お客様との持続的な関係がキーワードだと思うのですが、日本の関係性でユニークなところはありますか?

田中 日本のお客様が特殊だと思うのは、比較的、同じ会社に長くいらっしゃるという前提があります。ですから、一度、関係をつくると長く続くんです。30年ぐらい前からずっと付き合いがあるお客さんもいらっしゃいます。あと、面と面で重要なお客様もいて長い間やりましょう、という話になります。私どもが今やっている中では、定期的にいわゆる開発の打ち合わせを行なっているお客さんには10年、20年続いている会社がありますね。同じことは他の国ではなかなか難しいと思います。他国ではこっちの人間も替わりますし、向こうの人間も替わるので、もう少し短期的になってしまう。日本の場合は、それが比較的続けられる。

松江 まさに、顧客も含めてオリジネートできる部分が日本の価値ということですよね。
 こうした日本の価値はグローバルにはどう伝えれば評価してもらえるのでしょうか。

 例えば、先ほどの用途開発が日本の価値だとして、日本でアドバイスをして認定された材料が、自動車メーカーさんが中国で使うとなるとその材料は、弊社の場合だいたいアメリカから出ていくんです。アメリカが中国に輸出して、中国の子会社がメーカーさんに売ります。すると、売りは中国で立つんです。アメリカにも立たないし、当然、日本にも立たないわけです。だから、日本の貢献はあるのだけれど、直接的に数字としては見えません。それをいかに言うかが難しいところで、「それが日本だよ」という、さっきの以心伝心の話ではないですが、言わない限りはわかってもらえません。

 私は、グローバルにアピールするために良くチャートをつくったりしていますが、先の例では、まず売りの源泉となる部分は日本の用途開発にあることをわかってもらって、そこに数字を当てはめるしかないです。実際の売りは中国で立っているのですが、そもそも日本の用途開発にあること、日本が影響を与えた売りは、実はこれだけありますと数字を出すと、日本の中で売れている分と同じぐらいは外にありますとか、もっとありますという話ができます。日本の売りよりも、日本のメーカーが認定して外で使っているのは倍ぐらいありますから。それを入れて見るか見ないかで話が全然違います。

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短期的な株主の要求と長期的な成長シナリオをいかに両立させているのか

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