長崎県平戸市に400年ぶりのバブル景気が到来?!
ふるさと納税調達額全国1位の平戸市が
「ふるさと納税」を通して狙っているものとは?

【第139回】2015年7月15日公開(2016年7月1日更新)
保田 隆明

野菜は野菜ソムリエが選定し、バーコードで商品を管理

 野菜も同様だ。地元の農家が市場に朝採れた野菜を持ってくる。なんの変哲もない、普通の市場である。これまでは、その市場に野菜が並んでおしまいであったが、ふるさと納税導入以降はそれら市場の商品の一部が返礼品として出荷されるようになった。

野菜市場は、地方でよく見る何の変哲もない市場。しかし、こういう普通の市場での野菜は首都圏の消費者にとっては非日常という価値を生む

 返礼品は地元を代表するものゆえ、野菜ソムリエの資格を持つ人間がクオリティの高い野菜を選定する。箱詰めは、荷崩れしないように、そして配送車が到着する直前に行うことで鮮度を保つ。地元の農家は、この市場から毎月の売上報告を受けるが、ふるさと納税導入後は、市場に卸した商品のうちどの程度がふるさと納税の返礼品だったかが分かるように、バーコードで管理されている。

ふるさと納税の返礼品に使われた野菜を農家ごとにバーコードで管理

 農家にしてみると、自分たちのつくった作物が地元を代表する返礼品として使われたという事は大きなモチベーション向上となる。そうすると次からは、農家の方から市場に対して、この野菜をぜひふるさと納税の返礼品として使ってくれ、あるいはふるさと納税者たちに喜んでもらえるような商品開発しようという意欲の高まりも出てきたということで、農家でも意識改革が進んでいる。漁師でも同じような事例がたくさんあるということだ。

重要な構成要素となるダンボールに込められた思い

 平戸市は、先般佐川急便とふるさと納税に関する包括提携を行った。これは、佐川急便が平戸市から発送される返礼品の配送の独占業務を請け負う一方、佐川急便がふるさと納税関連の業務の効率化や促進のために協力体制をとるという内容である。

 中身の一つとして、ふるさと納税の返礼品の発送に使われるダンボールを共同で作った。平戸市そして佐川急便の両方のイラストやロゴが入っている。このダンボールには、どこにもふるさと納税とは書かれていない。贈答品として受け取った人が、ガッカリしないように、そして、平戸市のブランディング戦略のためということだ。

平戸市のふるさと納税の送付用ダンボール。佐川急便のロゴが入っている

 また、平戸市の担当者の話によると、あえて佐川急便のロゴをダンボールに入れておいたのは、佐川の配送者が届ける時に、自社のロゴの入ったダンボールであれば、より気をつけて商品を運んでくるのではないかと思ったからということであり、こういう細部への気配りも学ぶことが多い。

ふるさと納税特需を特需で終わらせるとバラマキと同じ

 今後のふるさと納税の展望について、平戸市の担当者は「金額競争のフェーズは終わったと考えるべきだ。平戸市の生産者や事業者をかき集めたとしても、返礼品の生産量には限りがあるため青天井に金額を追うことはできない。それよりも、このふるさと納税をきっかけとして、地元の生産者、事業者を全国的に通用する息の長い力強い事業体にすることが最も重要であり、それが目標である」とコメントしていた。

 400年前に南蛮貿易特需に沸いた平戸市は、その後の江戸幕府による鎖国で栄枯盛衰を経験している。ふるさと納税を地方活性化に戦略的に生かそうとするその姿は、まさに400年前の教訓を生かそうとしているように見える。地方創生の一つのロールモデルであり、依然としてバラマキ色の強い策しか出てこない政府にも大きなヒントをあたえてくれよう。

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