ただ、ヤフーもSNSに関心がなかったわけではない。2006年には「Yahoo!360°」を開始している。だが、市場ではまったく存在感がない。新興の専業事業者に比べれば、力の入れ方も覚悟も足りなかったことは否めない。
そして、それらの事実をもってIT業界から「先行者として得た既得権にしがみつく巨象にすぎない」(SNS企業幹部)という趣旨の声も聞こえてくる。
既得権と呼ぶかは別として確かに安定成長の基盤は築けていた。たとえば、ソフトバンクモバイルがほぼ全機種に「Y!(ヤフー)ボタン」を搭載しているおかげで、携帯電話ユーザーをヤフーに誘導しやすい。これなどは左うちわを決め込むには十分な仕掛けだった。
ところが、そんな状況のなか、孫社長がソーシャル系サービスの最右翼であるツイッターを標準搭載すると発表してしまったのだから、仰天するのも無理はない。「孫さんの決断は速い。今後も何が起こるかわからない」(ヤフー幹部)。
一方、検索の分野では、グーグルというライバルがいる。
検索技術に優位性があり、必要な情報により早くたどり着けるという点では定評がある。すでに多くの国でヤフーはシェアを逆転されている。日本でグーグルがテレビ広告を始めた2009年末、業界関係者は「グーグルもヤフー追撃に本腰を入れるのか」とつぶやいた。
前門には将来の収益源になりそうなソーシャル系サービスで成功した企業が、後門には現在の収益源を奪いかねないグーグルが、控えている──。2兆円近い時価総額で、IT企業としては日本最大級となるまで企業価値を高めてきたヤフーだが、さすがにここにきて曲がり角を迎えているのか。
そう言い切るのは早計だろう。じつはこうした構図をいちばん理解しているのはヤフー自身だからである。



