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ファルケンの販売強化に加えて、今後の勝敗の鍵を握るのが、高性能の低燃費タイヤ。その競争領域は素材そのものの開発にたどり着く。住友ゴム初となる、タイのゴム農園に潜入した。

「捨ててもいい服で行ってくださいね(笑)」。前日に住友ゴム工業幹部に頂いたアドバイスを半ば冗談だろうと聞き流した本誌記者は、その日に着ていた服から下着までを後日、本当に捨てる羽目になった。天然の産物であるが故に、腐敗などによって天然ゴム加工所に漂う“独特の悪臭”が染み付き、何度洗濯しても取れなくなってしまったのだ。

 タイの首都・バンコクから飛行機で北に約1時間。ラオスとの国境付近にあるウドンタニ県を訪れた。タイヤの素材である天然ゴムの農園と、ゴム加工所を見せてもらうためだ。

 住友ゴムは2011年、ゴムの生産をタイで開始した。世界の9割以上の天然ゴム栽培はアジア地域に集中しており、中でも世界一の栽培国がタイである。

 一見、単純な製品と思われがちなタイヤだが、開発の歴史を振り返ると、今日までさまざまな技術進化を遂げてきた。

 1839年、発明者グッドイヤー氏がゴムと硫黄の化学反応(加硫と呼ばれる)を発見。硫黄を加えることでゴムの分子が強く結び付くことが分かり、強度が飛躍的に増した。

 88年にはアイルランドの獣医ダンロップ氏が空気入りタイヤを発明。20世紀に入り、1948年に仏ミシュランが現在の乗用車の大半に使われているラジアル構造(サイドが柔軟で縦方向にたわみやすい)を発明した。これらは、タイヤの“三大発明”とも呼ばれている。

 さらに現代においても、タイヤメーカー各社は低燃費タイヤの開発にしのぎを削る。その競争領域は今やタイヤの開発にとどまらず、素材そのものの開発にまで広がっている(下図参照)。

【企業特集】住友ゴム工業(下) <br />素材そのものまで開発に着手 <br />タイのゴム農園に初潜入!