「プログラミング教育」の到達度を決めるのは教え手の質受講生5~6人に1人の割合で「メンター」(中央)を配置するグループ学習形式を始めてから、受講生の学習到達度が向上した  写真提供:ライフイズテック

一部の例外的な人を除いて、親が子どもに教えることが極めて困難なのがプログラミングだろう。親世代に自分自身が教わった経験がないからだ。学校でも、きちんと教えることができる教員は限られている。中高生が行き詰まったときに一緒に問題を解決してくれる存在が必要だ。大学生をメンターとして育成し、プログラミング教育の到達度を上げているライフイズテックの讃井康智さんに、教育現場の様子と、良い教え手になる上での重要なポイントについて語ってもらう。(ダイヤモンド社教育情報)

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メンター主導によるグループ学習の理由

 6学年の生徒が同じ学び舎で過ごす中高一貫校では、学校行事などで高2生が新入生である中1生の面倒を見る例が多い。高2生も、自分が新入生として入学した時に、期待と不安を胸にした記憶はまだ鮮明に残っているはず。新入生の面倒を見ることは、彼らのリーダー教育にもなっている。一方で、新入生にとっての先輩は、自分のロールモデルであり、相談相手になって教えてくれるメンター(師匠)でもある。

 生徒によって学習進度に差がある場合、1人の先生が多数の生徒相手に同時に授業を進めるというのは難しい。本来、1対多の間を埋めるためにはメンターのような存在が必要だ。理解度もまちまちな初心者の場合には、特にその役割は大きい。

 プログラミングなどのITスキルを学ぶ際、ライフイズテックでは中高生5~6人のグループに1人の割合で「メンター」と呼ばれるスタッフを配置している。メンターの役割を担うのは現役の大学生と大学院生である。このくらいの年齢差のお兄さん・お姉さんだからこそ、中高生にとって気軽に相談できる相手であると同時に、最良のロールモデルとなれるのだ。

「ライフイズテックの講座には、週1回開講する通年型の『スクール』と、春・夏・冬休みに全国の大学キャンパスなどで開催している短期集中型の『キャンプ』があります。

 スクールでは、パソコンに触ったことのない初心者からでも、プログラミングを楽しみながら学び、最終的にはネット上のストアでアプリやゲームをリリース(作品公開)できるまでのカリキュラムが組まれています。キャンプはプログラミングに触れるきっかけを与えるだけでなく、映像やデザインや音楽などさまざまなコースがあるため、スキルや視野の幅を広げる役割もあります。

 実際、スクールに入塾してくる中高生のほとんどが最初は全くの初心者ですが、そこから約1年間で85%の受講生がオリジナル作品を世にリリースしています。プログラミングに詳しい方でも、リリースのハードルの高さは常に感じていらっしゃるでしょう。ましてや初心者の中高生がそこまで到達するのですから、彼・彼女たちは開発からリリースまでの過程でいくつもの壁にぶち当たります」(讃井さん)

 プログラミングでつまずく箇所は、受講生それぞれで全く異なるという。コードに1カ所でも誤りがあるとプログラムは動かない。初心者がその誤りを自分1人で発見して修正することは難易度が高く、独学ではそのまま挫折してしまう可能性もある。

 10年前、開校当初は社会人のエンジニアを講師に招き、20人ほどの受講生を前に一斉にレクチャーしてもらっていたこともあったというが、なかなか思うように開発が進まなかった。それがグループごとにメンターを配置するグループ学習形式に改めたことで、受講生の到達度が大きく高まった。