入塾のタイミングは、通う塾のカリキュラム・子どもの能力・志望校のレベルなど、さまざまな要因が絡むため、一概に「いつから通うべきか」を判断することはできません。

 しかし、中学受験の入試に対応する力を身につけるためには、塾に通うことは必須と言っても過言ではありません。
なぜなら、小学校で学ぶ学習内容と中学受験で問われる内容は全くと言っていいほど別物だからです。

「いつから塾に通うべきか」は、それぞれの時期にメリットとデメリットがあるため、子どもや家庭に合ったタイミングを検討しましょう。

 なお、集団指導塾の場合、中学受験のカリキュラムは2月から始まることが多いことにご注意ください。

新3年生までに塾へ通うメリットやデメリット

 最難関中学を目指すなら、できるだけ早めに塾に入るのがおすすめです。

 学習習慣が身につく、確実に実力を伸ばしていける、先取り学習で小学校の学習内容を早めに習得できるなどのメリットがあります。

 ただし、長期間にわたる通塾は、精神的にも時間的にも経済的にも負担が大きくなることはデメリットです。

 例えば、SAPIXでは、1年生の授業料が約26万円、2年生が約28万円、3年生が約30万円です(月謝×12カ月で試算)。別途、春期講習などの特別講習料、入室金3.3万円が必要になります。

 早稲田アカデミーでは、1年生・2年生対象の「スーパーキッズコース」は、年間の受講料が約20万円、3年生対象の「ジュニアコース4科」は約32万円かかります(月謝×12カ月で試算)。その他入塾金2.2万円、教材費やテスト代も必要です。

 また、SAPIXや四谷大塚などの塾で、上の学年になった時に入塾できない可能性を見込んで、低学年のうちから塾に通わせる家庭もあります。

 この「入塾できない」というのは、募集定員がいっぱいになってしまうということです。
塾生は進学できますが、定員が埋まってしまうと「募集停止」という状態になり、外部生は入塾することができません。

 例えば、SAPIXでは募集停止クラスをホームページ上に掲載しており、2023年2月24日10時時点では、以下のような状態になっています。

 ただ、一度募集停止になっても、定員を増やしたり、空きが出たりして、再募集がかかる場合もあります。

【SAPIXの募集停止クラス(再募集のあったクラスを除く)】2023年2月24日10時時点
王子校(新3年)、白金台校(新1年、新3年)、白金高輪校(新1年、新2年一部コース、新3年)、豊洲校(新3年)、月賀校(新1年) 引用元:SAPIXホームページ(募集停止)(追加募集

新4年生から塾に通うメリットやデメリット

 多くの塾では、新4年生から受験に向けた学習の基礎固めが始まります。

 5年生の2月までに入試範囲の学習を終わらせることを見通した場合、このタイミングで受験勉強を開始するのが現実的だからです。

 ただ、4年生になると小学校でも授業時間が多くなるため、学習量の増加で子どもが体力的にきつくなることもあります。

 新4年生の1年間の授業料だけで、SAPIXは約51万円かかります(月謝×12カ月で試算。別途、夏期講習等の特別講習の費用、地図帳や問題集等の書籍代、公開模試の費用がかかる)。

 早稲田アカデミーでは、約36万円かかります(Sコース4科、月謝×12カ月で試算。別途、特別講習の費用、教材費・カリキュラムテスト代)。

新5年生から塾に通うメリットやデメリット

 中学受験のカリキュラムが本格的に始まることが多いのが新5年生です。

 入試に直結する学習内容が増えるため効率的に学習を進められますし、受験に向けて子どもの意識を高めやすい時期というのもポイントです。

 一方で、6年生になるまでに受験範囲の学習を終わらせることを考えると、学習のスケジュールがタイトになりがちです。

 新5年生の1年間の授業料だけで、SAPIXでは、約65万円かかります(月謝×12カ月で試算別途、特別講習の費用、書籍代、公開模試の費用が必要)。

 早稲田アカデミーでは、授業料で約58万円かかります(Sコース4科、月謝×12カ月で試算。別途、特別講習の費用、教材費・カリキュラムテスト代)。

新6年生から塾に通うメリットやデメリット

 新6年生でのスタートは、かなりの短期決戦になります。

 志望校に絞った対策を立てる必要がありますが、短期決戦のほうが精神的にも経済的にも負担が少ないというのがメリットです。

 しかし、塾によっては5年生までに受験範囲の学習を終わらせていることもあり、入塾テストの成績次第では断られることもあります。

 例えば、早稲田アカデミーでは、5年生のカリキュラムで6年生までの学習内容を一通り終わらせており、入塾テストの結果が芳しくないと入塾できません。

 また、四谷大塚は「選抜制進学塾」と銘打っており、入塾テストの合格率は約50%になっています。

 入塾テストに不合格の場合でも、何度も入塾テストを受けることは可能です。

情報元:四谷大塚ドットコム

 新6年生の1年間の授業料だけで、SAPIXでは約74万円かかります(月謝×12カ月で試算別途、特別講習の費用、書籍代、公開模試費用)。

 早稲田アカデミーは、授業料だけで約59万円かかります(Sコース4科、月謝×12カ月で試算。別途、特別講習の費用、教材費・カリキュラムテスト代)。

 大手塾に通わせた場合、学年が上がるにつれて塾代は高くなり、6年生では100万円以上かかるのが普通です。

中学受験の塾は小学4年生から通う家庭が多い

 進学塾のカリキュラムは、4年生や5年生から入試範囲の学習が始まり、6年生ではカリキュラムを進めながら志望校別の対策を含めた演習を行うことが多いようです。

 6年生の2月に受験をすることから逆算すると、確かにこのスケジュールが現実的ですので、新4年生から塾に通う家庭が多くなっています。

中学受験で塾に通う必要がある理由を解説

 塾は他の習い事に比べても費用がかかりますし、親のサポートも必要になります。

 そのため、「塾に通わないで受験を...」と考える方もいますが、中学受験をする上で通塾は必須であると考えるべきです。

志望校別の勉強のサポートをしてくれる

 難関校以上の中学を受験する場合、公立小の学習だけでは入試に対応できません。

 志望校の難易度に合わせたカリキュラムで学習を進めてくれることが、塾の強みです。

 定期的な実力判定テストで得意・苦手分野を分析し、適切に勉強のサポートをしてもらえます。

学校や受験についての詳しい情報を提供してくれる

 受験では、学力と同じくらい受験情報が大切になります。

 入試問題の傾向、面接の対策、受験までの見通し、願書の書き方、子どものサポートの仕方など、受験のプロだから分かる情報を提供してもらえるのは、大きなメリットです。

クラスメイトと勉強しモチベーションを高められる

 小学生の受験ではモチベーションを高めることが重要で、クラスメイトと切磋琢磨できる環境は学習環境として理想的です。

 競争原理を取り入れて、テストの順位で座席を決めているような塾もあり、向上心をもって学習に臨めるようになります。

中学受験で塾に通う前の親の準備とは?

中学受験の塾に悩む親の画像
出典: pixta

 中学受験は「親子の受験」ともいわれます。

 塾に入れても、受験疲れやモチベーションの低下、劣等感などが原因で退塾してしまう子どももいます。
そうならないためにも、しっかりと保護者がサポートする必要があります。

家の勉強を親がサポートする必要がある

 中学受験をするためには膨大な学習量が必要であり、塾の宿題や予習・復習、時間管理など、親のサポートが必須です。

 例えば、早稲田アカデミーは宿題の量が多いといわれている塾です。

 早稲田アカデミーは『予習シリーズ』(四谷大塚の教材)というメイン教材が宿題に出されることが多く、単元の予習が必要になることが時間がかかる理由のひとつです。

 通塾日数が多いことも、宿題の量が多くなる原因のひとつでしょう。

 また、SAPIXも、宿題が多いといわれている塾です。

 宿題がプリント中心に出されますので、適切に宿題の管理をしないと、単元の復習をするときに役立てることが難しくなってしまいます。

 宿題量が多いことに加えて、宿題プリントの管理もサポートが必要になるでしょう。

 また、馬渕教室も、宿題が多いといわれています。

 ただ、自習室で宿題の分からないところを質問することができるため、塾の先生にサポートしてもらいやすい環境にあります。

 時間管理をしたり、分からない所を教えてあげたり、時には実体験をさせてあげたりしましょう。
途中で挫折しないように、「勉強は楽しい」「やればできる」と思えるような精神的なサポートも大切
です。

子どもの健康状態に気をつける必要がある

 受験は、子どもにとって精神的にも肉体的にもストレスがかかります。

 生活リズムを整えたり、栄養のある食事を作ってあげたりして、健康管理をしてあげましょう。

子どものモチベーションに気をつける必要がある

 中学受験は子どものモチベーションを維持できるかが非常に大切です。

 短期的な目標を設定したり、肯定的な言葉かけをしたりするなどして、モチベーションの維持に努めましょう。

中学受験を行うメリットは?

中学受験の様子の画像
出典: pixta

 当然のことながら、中学校は義務教育です。

 受験をしなくても進学することができるのに、なぜ中学受験をするのでしょうか。

高校受験や大学受験で有利になる

 公立中学校よりも前倒しでカリキュラムが組まれていることが多く、早期に高校受験の対策を始められます。

 中高一貫校では、中学1年から高校2年までに中高6年間の学習を終わらせて、残りの期間は大学受験に備えるカリキュラムが組まれている学校もあります。

独自の教育や課外活動がある学校に通える

 英語教育、ICT教育、国際交流、校外学習、宗教教育、独自カリキュラムなど、各学校では特色のある教育を行っています。

 ハイレベルな授業を受けたり、他校ではできない体験や経験ができるのは大きな魅力です。

 以下に、特色のある教育を行っている学校の一部を掲載します。

特色のある教育を行っている学校

子どもが質の高い学生に質の高い学生に子どもが囲まれて生活できる

 子どもにとって生活環境はとても大切です。

「学習するのが当たり前」という環境で育てば、自然と勉学に励むことができますし、よい刺激を受けることでどんどん成長していくことができます。

中学受験で通う塾の選び方

 塾には、補習塾・進学塾、集団指導・個別指導、授業型・自立型など、カリキュラムやクラスの人数、指導方法によっていくつかの種類があります。
子どもに合った塾を選ぶことで、前向きに学習することができ、実力を伸ばしていくことができます。

子どもの学力に合う塾を選ぶ

 志望校が中堅校なのに最難関クラスに入るとついていけませんし、簡単すぎると志望校に合格する実力を身につけられません。

 大手塾では、学力や志望校別にクラスを編成していることがありますので、実力に合った塾やクラスに入りましょう。

行きたい学校の合格実績がある塾を選ぶ

 これから中学受験を考えている場合、子どもの実力が不透明であり、志望校も漠然とした希望であることが多いため、さまざまな合格実績を出している大手受験塾に入塾するのが一般的です。

 ただし、公立中高一貫校を目指す場合は、合格実績も大切になります。

 なぜなら、公立中高一貫校の入試は、「適性検査」という選抜方式をとっており、私立の受験とは異なる対応が必要になるからです。

 この場合、塾選びでは「適性検査」に対応したカリキュラムがある、大手以外の塾も選択肢に入ります。

 公立中高一貫対策で有名な塾としては、早稲田アカデミー、ena、四谷大塚、日能研、SAPIX、臨海セミナー、栄光ゼミナールなどがあります。

自分の家や学校からの通いやすい塾を選ぶ

 通塾に時間をかけるのは勿体無いですし、保護者にとっても送り迎えが負担になります。

 高学年になると夜まで授業をする塾もありますので、通塾時間や安全面に配慮しましょう。

「集団」と「個別」から塾を選ぶ

 集団指導なら、友達に刺激を受けながら勉強ができる、個別指導なら、自分のペースに合わせた学習ができるなど、それぞれにメリットがあります。

 ただし、これから入塾を考えている場合は、まずは集団指導塾を検討するべきです。

 その上で、「集団ではついていけない」などの場合には、個別塾個別指導塾を検討するのがよいでしょう。志望校に合わせた学習ができるか、子どもの性格に合っているかなどの観点で選びましょう。

中学受験の塾はいつから通うべきかまとめ

中学受験はいつから通うべきかの画像
出典: pixta

 いつから通うか迷ったら、新4年生(3年生の2月)をひとつの目安と考えてください。

 受験勉強に関して言えば高学年になってからではスタートが遅れてしまうこともあり、早めに塾に通うほうがよいですが、「受験疲れ」を起こさないためにも保護者のサポートは必須です。

「学習習慣を身につける」「受験勉強をするための基礎的な力をつけておく」などの意味では、早めに入塾することが受験に有利に働くことがあります。

 例えば、浜学園では、1年生から講座を開講しており、学習習慣をつけること、公開模試などの問題を解く力をつけること、学習への意欲を高めることなどを目標にしています。

 また、最難関校合格に向けて「最高レベル特訓算数」や「灘中合格特訓」のコース、飛び級制度を設けており、思考力育成や応用力・発展力の向上を目指して指導をしています。

「最高レベル特訓算数」や「灘中合格特訓」に入るためには、「浜学園で行われる公開テスト模試で上位の成績を収める」という条件があるため、この条件を満たすために早期に入塾する家庭も多いようです。

ただし、子どもの性格や能力によって入塾に適切なタイミングは異なるため、慎重に見極める必要があります。

監修:鈴木孝一氏のワンポイントアドバイス

 基本は新4年生(3年生の2月)から。ただしこれは、小学校での学習内容がしっかりと身についていて、学校のテストは全科目ほぼ満点しかとったことがない、という子どもに限ります。

 

 もしそうでない場合は、日本語力(国語力)の不足が疑われます。どの科目においても、問題文をきちんと理解できる、という力が必須だからです。小学1−3年生で毎回100点がとれていないようなら、新4年生よりももっと前からの通塾や何らかの対策が必須だと私は考えます。