遅い受験勉強スタート
中学受験の勉強は、早い子どもだと小学1年生から始めています。小学校教師としての経験だと、受験対策として小学4年生から塾に通う子どもが一般的です。
息子の場合はかなり遅くて、小学5年生の3学期でした。「パパ、受験したい。塾に行きたい」と言ってきたので、理由を聞くと「かっこいいから」と、理解できない答えが返ってきました。よくよく聞いてみると、学校の休み時間に、中学受験のために教室で塾の宿題をしている友だちの姿に憧れたと分かりました……。
息子は小学3年生からソフトボールチームに所属していて、休日もソフトボール漬けでした。家庭学習は、赤ペン先生で有名な通信教育を受けさせる程度でした。
だから私も妻も、息子の「受験したい」という言葉を真に受けていませんでした。漢字が苦手だった息子のために、小学6年生で習う漢字ドリルを買い与えただけでした。
でも、昨年(2024年)の小学6年生の春休みに、「受験したいから、塾に行かせて」と再び言ってきて、本気で受験したいのだとわかりました。そこで、私が息子に「どこの中学に行きたいん?」と聞くと、「どこでもいい。とにかく受験したい。塾に行きたい」という適当な答えがありました。息子に腹が立ったのを覚えています。
そこから地元大阪で、受験する中学校を息子と調べることになりました。
受験校選びの条件と大切なこと
ただ、中学受験をする学校選びには条件がありました。その条件とは、学力や学費ではありません。家から近いことです。具体的には、自転車で通えるぐらいの距離にある学校です。というのも、息子は毎朝の身支度にものすごく時間がかかっていたからです。
毎日、夜の8時半ごろに寝かせても、朝は自力で起きることができませんでした。私が起こすのですが、なかなか起き上がりません。朝食は、私が急かしても30分以上かかります。着替えも、ぼーっとしていて私が急かさないと動きません。
私が息子に、「自転車で通えるぐらい近い中学でないと無理! 自分の毎朝の行動からわかるよな!?」と言って確認すると、「うん、わかった!」と返答がありました。
自立:自分のことは自分でできるようになる。
自律:テレビやゲームの時間も自分でコントロールできるようになる。
自立と自律ができないと、進学先の選択肢も少なくなってしまう。
このことを私も息子も、痛いほど身にしみてわかりました。そして、息子の受験校選びの苦い経験を学級の子どもたちや親御さんに話すと、とても頷いて聞いてもらえます。やっぱり、日頃の生活習慣の積み重ねが大事なんだと理解していただけます。
「自分がこの中学に行きたい!」と思って選んだ学校ではなく、「ここしか通える学校がないから……」というのは、子どもにとっても親にとっても悲しいことです。
そして調べてみると、1つだけ自転車通学圏内の中学校が見つかりました。そこは私立でなく、中高一貫の公立中学校でした。これまで担任した児童の中にも、その中学校に合格した子どもがいました。とても賢く、とても個性的な子どもが行く中学というイメージがありました。
息子が通える中学についてもう少し調べると、コースが「言語」「ものづくり(理工)」「芸術(美術・デザイン)」「スポーツ」の4つに分かれていることがわかりました。算数と理科が苦手なのと、絵やスポーツが特に上手なわけではないので、「言語」コースしか選択肢はありませんでした。受験校も志望コースも消去法で決めざるを得ませんでした。
塾選びは慎重に

受験したい中学が決まったら、次は塾選びでした。過去問が載った赤本をネット注文で取り寄せて読むと、これまでの小学校の授業や家庭学習だけでは解けないような、応用的な問題や論述問題ばかりでした。合格偏差値は60以上ないと厳しいということがわかりました。
そこで、塾を探すことにしました。受験勉強のスタートが遅い分、塾選びはとても大切でした。
中学受験に際しての塾の条件は、下記としました。
- 受験する中学対策をやってくれる
- 受験する中学に合格させた実績がある
私が住む大阪市内には、たくさんの塾があります。受験専門の塾もあります。しかしながら、中高一貫校の受験対策・合格実績のある塾は多くありません。
最初はCMなどで有名な塾へ見学に行きました。でも、息子が受験したい中学についての対策や合格実績を聞くと、「個別指導で、何とかさせてもらいます」と曖昧な答えが返ってきました。早く塾を決めたいという焦りもありましたが、結局そこはやめて、Sという学習塾に決めました。2つの条件をクリアしていたからです。
そうして、なんとか小学6年の春休みから、中学受験のための勉強をスタートすることができました。
これまでの習い事との両立
遅すぎる・壁の高い中学受験の勉強に際して、息子に確認しなければならないことがありました。それは、小学3年生からやっているソフトボールを続けるか、受験勉強に専念するためにやめるかでした。これは私の息子に限らず、受験勉強をスタートするご家庭にもあることだと思います。受験の合格率を少しでも上げるためには、勉強の時間を少しでも長くすることが大切です。
でも、このときに大切なことがあります。それは、子ども自身にどうするか、どうしたいかを決めさせることです。小学校教師として、これまで中学受験をする多くのお子さんを担任してきて気づいたことです。
もし、親が決めてしまうと後々、「好きな習い事(ソフトボール)を続けたかったのに!」「好きな習い事(ソフトボール)をやめさせられた!!」と言われることになります。
もし、中学受験に成功しなかったら、もっとつらいことになります。「親に言われて好きな習い事(ソフトボール)をやめたのに、合格できなかった! やめなければよかった!!」と言われることはほぼ間違いないでしょう。
子ども自身がどうするかを考えて、決めたという事実が大事です。息子は結局、ソフトボールをやめませんでした。
だから、ソフトボールと受験勉強の両立がしんどくても、「しんどい」「やめたい」と愚痴や弱音を吐くことはありませんでした。自分が決めたことだからです。(続く)