中学受験の漢字は重要?

 最初に、中学受験における漢字の重要性について説明しましょう。

「漢字、ひいては語彙を身につけるメリットは、国語の入試だけにとどまりません」(明利学舎塾長の鈴木明男さん)

 文章は、算数や社会、理科など、どの教科の問題にも必ず書かれています。子どもは、まず各設問の文章を読んで、書かれている問題の意味を理解しなければいけません。

 大人であればスラスラと読めたり、知らない語句が出てきたとしても脳内で補足しながら大枠の意味を理解できたりするかもしれませんが、子どもは知らない漢字や言葉が出てくると、チンプンカンプンになってしまいます。算数の成績が悪い子は、国語力も低いというケースも少なくないようで、全ての教科を学ぶ上で土台となるのが漢字の力です。

当塾でも漢字をしっかり学んだことで、それまで算数が苦手だった子どもの成績が20点くらいアップしたこともあります」(同)

 もちろん国語に関しても、中学受験における国語の作問は「ひらがなより漢字で書く方が、より文章自体の意味を伝えやすい」という考えがベースとなっており、子どもが漢字を覚えているかを非常に重要視しています。しっかり身につけていないと、単に漢字の問題で失点してしまうだけでなく、国語や他の教科も含めた受験全体の点数にも影響することを覚えておきましょう。

中学受験漢字問題の具体的な出題傾向

 中学受験の漢字に関する出題傾向はどうなっているのでしょうか。漢字のみを一つの大問で出題したり、文章中の語句から漢字を抜き出して出題したりするといった構成の特徴はありますが、「漢字だけを切り出して、特定の傾向が出ているということはありません」(鈴木さん)。

 国語全体を通して見ると思考力や判断力が問われる問題が増えている傾向はありますが、入試に求められる漢字の量や出題方法は変わりません。後述する学習方法やおすすめの問題集を通じてしっかり身につければ、十分対応できるそうです。

効率的な中学受験の漢字の覚え方

 ひと言で「漢字」といっても覚える量は多く、他教科も並行して勉強する必要があるため、効率良く身につけたいところでしょう。ここでは漢字を覚える際のポイントを紹介していきます。

部首や漢字の成り立ちを理解して覚える

 単に漢字を書き取って記憶しようとするのではなく、部首や漢字の成り立ちも理解して覚えることでイメージがしやすくなり、より記憶にも定着しやすくなります。また、部首や成り立ちは複数の漢字で共通しているケースも多いため、効率良く身につけることにもつながります。

音読みと訓読みを一緒に覚える

 漢字を勉強するときは、音読みと訓読みを一緒に覚えましょう。その漢字が持つ意味の理解につながり、他の語彙を増やすきっかけにもなります。例えば「牛歩(ぎゅうほ)」という漢字の意味がわからなくても「歩」を「あるく」と読めれば、「牛のように歩く」という、意味の推測やイメージができて理解も深まります。

中学受験漢字の勉強方法

 中学受験における、最適な漢字の勉強方法はどんなものでしょうか。基本的には地道に取り組んで、確実に定着させることが大切です。「漢字の学習は歯を磨くように習慣化しましょう」(鈴木さん)

毎日コツコツ漢字学習を行う

 漢字の学習は、問題集などを使って毎日取り組むことが大切。明利学舎では毎日宿題を出したり、通塾するたびに小テストを行ったりしています。また、書き取りの際は、「牛」という漢字であれば「うし」と声に出した上で、書かせるようにしているそう。

声を出すと自分の耳に入ってくるため、記憶を司る前頭葉にもいい刺激になって覚えやすくなります」(同)

漢字辞典を利用して勉強する

 明利学舎では、1年生の段階で夏休みの特別講座として、「辞書引き講座」を開催しています。辞書の引き方を覚えれば、漢字を身につける手助けになるだけでなく、わからないことは自分で調べる「自学自習」の習慣が身につくようになります。今はネットで検索すればすぐに答えは出てきますが、「ネットでパッと調べるだけだと子どもは覚えられません」(同)と、辞書を使う重要性についても教えてくれました。

間違えた漢字を覚えるまで復習する

 間違えた漢字は覚えるまで繰り返し復習をしましょう。明利学舎では、小テストで合格点に達しない生徒には、強制的に塾へ来させて自習をさせるそうです。「保護者の方や子どもにも、『不合格の場合には強制的に通塾させ、自習をさせます』と入塾前の段階で伝えています」(同)。

 子どもは基本的に目の前の楽しいことに夢中になって、自主的に勉強をやることはほとんどありません。本来は自学自習が理想ですが、最初はある程度の強制力をもって習慣化させることも重要でしょう。

目的意識を持ってモチベーション高く取り組ませる

 目的意識がなく言われるままに漢字を書いているだけの子どもは、覚えが悪い傾向にあります。子どもの中には、親や先生がうるさく言うからとりあえず机に向かっているだけで、中学受験をしているという意識すらないケースも。目的意識がなくおざなりに勉強をしているだけでは、記憶に定着しないのも当然と言えるでしょう。

 そんな子どもには折に触れて何のために勉強をしているのかを考える機会を設けるのが重要です。何のために取り組んでいるかを本人がイメージできないと、モチベーションが上がらず、成績も伸び悩んでしまいます。たとえ親が敷いた中学受験というレールに乗った状態でも、子どもが前向きに取り組めるように気を配ることが大切です。

中学受験漢字のおすすめ問題集

 最後に、中学受験に必要な漢字を学ぶ上で、鈴木先生がおすすめする問題集を教えていただきました。どれも掲載されている漢字の数や対象学年はわかるので、個人に合った問題集を使いましょう。

『漢字の要』

 入試問題で頻出する漢字に絞って徹底的に学習できる。単元別や学年別などさまざまなシリーズも。

『中学入試 でる順』

 近年の入試から特に頻出の問題を「でる順」に掲載した問題集。

『漢字とことば』

 漢字と合わせて四字熟語や慣用句、同音異義語などの「ことば」を一緒に学ぶことができる教材。一つの漢字を複数の文章とともに繰り返し学ぶことでインプットできる。

中学受験漢字の勉強法や問題集まとめ

 日本語における漢字の数が増えたり減ったりすることはなく、「中学受験で求められるレベルもこれ以上は上がりようがありません」と鈴木さんも話す通り、必要な範囲が明確に決まっているという意味では、漢字学習は取り組みやすい分野と言えるかもしれません。

 ただし冒頭でも説明したように、漢字の重要性は国語だけにとどまりません。明利学舎でも毎日宿題や小テストを繰り返しているように、毎日コツコツと積み上げることが大切です。特定の傾向に振り回される心配はないので、おすすめの問題集や普段使っている教材をベースに、地道に漢字の力を伸ばしていきましょう。