共働き家庭で中学受験を成功させるポイント
共働き家庭は、そうではない家庭に比べて時間的な制約があります。特に、両親ともフルタイムで仕事をしている場合、平日に学習や通塾などのサポートをするのは困難でしょう。
そのため、子どもが主体的に行動できるような環境を整えたり、スケジュール管理をしたり、休日を活用したりと、限られた時間の中で効率よく受験に向けた対策をすることが大切です。
子どもに自立を促す
共働き家庭が中学受験を目指す場合、子どもが自立していることが必要になります。学校の宿題をするのも、塾の予習をするのも、授業に必要なものを用意するのも、全て親のサポートがないとできないような子どもでは、受験を乗り切るのは難しいでしょう。
自立心を培うためには、自分のことは自分でさせたり、自分ひとりでもできるという成功体験を積み重ねたりといった方法で、自主性や主体性を育むことが大切です。しかし、この方法は時間がかかるため、「今からでは間に合わない」という方もいるかもしれません。
その場合は、「志望校合格」という目標が、しっかりと子どもの目標になっているか振り返ってみてください。もし子どもが本気で「あの学校に入りたい」と思っているのであれば、少なくとも学習においては自立できるはずです。
例えば、学校説明会やオープンスクールなどの行事に積極的に参加して中学校の魅力を体感する機会を作る、「テストの結果は自分の努力次第」ということを繰り返し伝えてやる気を喚起させるなど、子どもの性格に合った方法を試して自立を促したいところです。
保護者として「子どもの人生は子どものもの」という広い視点をもつことも大切です。親が一方的に指示を出すだけでは、子どもは反発して中学受験そのものがうまくいかなくなってしまいます。
中学受験における親の大きな役割としては、子どもの「メンタル管理」「健康管理」「スケジュール管理」があります。特に、親がスケジュール管理をしっかりとしていて、塾から出された学習の進捗状況を把握することができていれば、共働きでも良い結果を得られやすいと思いますよ。
手厚いサポートがある塾や家庭教師を選ぶ
共働き家庭は、サポート体制が整っている塾や家庭教師を選ぶのがおすすめです。「塾で宿題のチェックをしてくれる」「自習室があって、分からないことがあれば、講師が答えてくれる」などの手厚いサポートが整っていると、子どもが塾に通いやすくなり、親も安心して子どもを預けることができます。
塾には、「家庭でも勉強のサポートを必要とする塾」と「家庭での勉強のサポートは基本的に不要な塾」があります。共働き家庭の場合、塾に任せることができる後者の塾を選ぶのも1つの方法です。塾に任せられる方が悩みも少なくなるので、勉強については「塾に任せてください」「家庭では手を出さないでください」というスタンスの塾が、共働き家庭にはおすすめです。
塾にはどんなサポートがあるのか?
手厚いサポートで言えば、通塾のサポートをしている塾があります。
「塾へのアクセスがあまり良くない場所に住んでいるし、仕事の都合で塾の送迎に間に合わない」という場合には、送迎バスのサービス等がある塾を選ぶと良いでしょう。例えば、俊英館や馬渕教室の一部校舎や第一ゼミナールでは、無料送迎バスが運行していますので、送迎ルート上の近くに自宅があれば、安心して通塾させられます。
通塾に関しては、入退室時間をメールやアプリで確認できるサービスを提供している塾は増えており、共働きの親にとっては安心材料になります。例えば、ベネッセグループが運営する東京個別指導学院・関西個別指導学院では、入退室メール配信サービスを行っています。職場にいながら子どもの通塾状況を把握できるのは、仕事で忙しい親にはありがたいサポートです。
また、親が不在でも授業をしてもらえる家庭教師やオンライン家庭教師を活用するのもひとつの方法です。例えば、家庭教師のゴーイングでは、「母子・父子家庭応援プラン」として、親が不在でも指導をしてもらえるようになっています。
実際に、ゴーイング利用者の約1/3の家庭は共働き家庭とのことです。共働き家庭が、家庭教師だけで中学受験に取り組むのは無理があるため、基礎固めや学校の補習として利用する分には、便利な手段かもしれません。
ただし、オンライン家庭教師の場合、パソコンの操作に慣れており、なおかつ学習面でもある程度自立している子どもでないと利用するのは難しいでしょう。子どもの性格によっては、親が不在でも授業をしてもらえる家庭教師やオンライン家庭教師が不向きなこともあるので、子どもの性格を見極めながら利用を検討する必要があります。
さらに、学童的な要素をもった塾で指導を受けるという選択肢もあります。例えば、日能研が運営する「まなびわらべクラブ」は、宿題のサポートや日能研の授業がある学童です。最長21時まで子どもを預けることもでき、夕食の提供までしてもらえます。
他にも、「授業の振替ができる」「講師との相性が合わなかったら講師を変更できる」「学習状況に応じて個別サポートが受けられる」「定期的な保護者会や面談で情報を提供してもらえる」など、必要に応じたサポートがある塾を選ぶと良いでしょう。
このような手厚いサポートがある塾や家庭教師を選択することで、保護者の負担を減らすことができます。
土日を両親と子どもで有効活用する
比較的時間が取れる休日を有効活用して、親子で塾の復習やスケジュールの見直しなどをしましょう。
例えば、その週に塾でやった問題やテストを確認して、間違えた問題はしっかりやり直しまでできているかチェックできます。子どもはやり直したつもりでも、答えを写しただけできちんと解法を理解できていないことが往々にしてあります。
間違えた問題があったら、同じ問題や類題を解かせて、理解度を確認するのが良いでしょう。小さなミスや間違いを見逃さないで復習させることで、しっかりと学習が定着していきます。
スケジュール管理でいえば、土日のうちに1週間のスケジュールを立てておくと良いです。1週間のスケジュールを立てると言っても、学校や塾などの予定は大体固定されていますから、残った時間でどのようなペースで学習を進めるかを決めておくだけで大丈夫です。学習サイクルが確立してくると、子どもでもある程度自分でスケジュールを立てられるようになります。
例えば、「与えられた課題はやるけれどそれ以外の学習はやらない」という子どもには、市販のテキストを買ってあげて、「今週は何ページ以上進める」などの具体的な目標を一緒に立てます。その際、1日のどの時間を使って宿題をするのか具体的に予定を立てることが必要です。
「塾の宿題がなかなか終わらない」という子どもは、タイムマネジメントができない、または塾のレベルが子どものレベルに合っていないことが考えられます。塾のクラスの変更や、転塾といった対策が必要になるかもしれません。
また、まとまった時間が取りやすい土日には、過去問を解く時間を確保することも大切です。過去問を解くためには、6年生の学習内容を一通り終えていないと解くことができません。
しかし、入試直前になってから過去問を解くのでは、スケジュール的に間に合わないこともあります。中・長期的な見通しをもって、土日に過去問を解く時間を設けるようにしましょう。
その他にも、土日を活用して、自宅でもできそうな理科の実験や観察をしてみたり、家族で社会科見学に行ったりするなど、体験的な学習をするのもおすすめです。このような体験的な学習は、子どもの興味・関心を高めて、学習意欲を刺激できます。ただし、入試直前期になるとこのような体験的な学習をするのが難しくなりますので、やるなら早めにやるのが良いでしょう。
あるいは、程よくストレスを発散させてあげることも親の大切な務めです。心と体と脳は密接な関係がありますので、親子で適度に体を動かしてみるのはどうでしょうか。
適度に体を動かすことは、脳にも良い影響を与えてくれることが脳科学的にも証明されています。根を詰めがちな受験勉強ですので、子どもに無理をさせすぎないように上手に土日を活用しましょう。
多感な時期の子どもは、親から一方的に与えられたことに反発することもあります。土日の過ごし方を決めたり、1週間のスケジュールを立てたりするのは、親と子どもの共同作業であるという意識をもつことも大切かもしれません。
土日の活用の仕方に限ったことではありませんが、子どもの気質を見極めて、子どもの長所を伸ばすような声かけをすることが大切です。
これまで中学受験カウンセラーとして中学受験の相談を受けてきた中で、「子どもが勉強をしないのでやる気の出し方を教えてください」という相談を多くいただきます。確かに、やる気と自信を引き出す声かけは勉強において非常に大切ですが、「書籍などで学んだ『やる気を引き出す方法』をそのまま活用しようとしても子どもの気質と合わずに効果がない」ということがよく見られます。
そこで、私がおすすめするのは、「子育て3ステップ会話法」です。子どもが悩みを抱えた時には、次のような声かけを試してみてください。今回は、「勉強したくない」場合を例にしています。
【ステップ1】子どもに共感する
「勉強したくない」という子どもの悩みに対して、「そうだよね」と気持ちに寄り添ってあげましょう。子どもの感情が落ち着いて、前向きな気持ちに切り替わることがあります。
【ステップ2】保護者の気持ちを伝える
しかし、共感しただけでは、なかなか子どもの気持ちを切り替えるのは困難なこともあります。そのような時には、「I(アイ)メッセージ」という方法を使います。
これは、「私」を主語にして自分の気持ちを伝える声かけです。例えば、「そんな風に言われるとお母さん・お父さん困っちゃうな」「お母さん・お父さんは○○してくれると助かるな」などと、親の気持ちを伝えてみます。そうすることで、「お母さん・お父さんがそんなに困っているなら、僕は○○してみようかな」と、自発的に行動してくれることが期待できます。
【ステップ3】相談の場を設ける
共感し、Iメッセージを言っても、うまくいかないこともあります。その時はステップ3の「相談」に進みます。「じゃあどうしたら良いと思う? あなたの意見を聞くよ」「お母さん・お父さんも案を出してみるね」と相談の場を設けましょう。お互いが腹を割って話し合うことで、双方が納得できる解決策を探すことができます。
例えば、「子どもが宿題をしない」という場合、もしかしたら宿題が多すぎて対応できないのかもしれません。このような時は、まず子どもの話に共感し、その後、どうしたら良いか話し合って解決することが大切です。
子どもの状況やお互いの意見を理解した上で、「そうか、宿題が多すぎるんだね。そうだったら、最低限するべきものだけ決めて、後は余裕があったらやることにしよう」という結論になったのであれば、子どもも納得して自分のできる範囲で宿題をがんばることができます。
このように、声かけをする際は頭ごなしに叱るのではなく、子育て3ステップ会話法などを効果的に活用して、子どもがやる気と自信をもつことができるように心がけましょう。
夫婦で必要な役割分担を明確にする
共働き家庭は、そうではない家庭に比べて時間的な制限があります。「中学受験は親子の受験」とも言われますので、夫婦で役割分担を明確にして、限られた時間の中でしっかりと子どもをサポートしていくことが必要です。
例えば、「土日には母親が家事をしている間に父親が学習のサポートをする」「父親が模試に連れて行く間に母親が溜まったプリントの整理をする」など、両親で協力する体制を整えましょう。
特に、学校説明会やオープンキャンパスが平日に行われる場合、どちらかが仕事を休まなくてはいけません。仕事のスケジュールと受験のスケジュールを調整して、子どもをサポートできる体制を整えましょう。また、学校説明会や塾の面談で得た情報などは、しっかりと両親で共有しておくことも大切です。
さらに、春休みや夏休みなどの長期休みの過ごし方などについても考えておく必要があります。「子どもの弁当はどちらが作るのか」「宿題のチェックはどちらがするのか」など、役割分担を明確にして、仕事と受験を両立できるようにしましょう。
どちらかの親が受験に納得していないと、両親で協力する体制を確立するのが難しい場合があります。家族全員が納得して受験に臨めるように、受験することについてよく話し合っておくことが大切です。
共働き家庭の塾選びのポイント
塾選びをする時に、「大手の塾だから」「友達も行っているから」などと安直な理由で入塾してしまうのはよくありません。先述の通り、共働き家庭の場合は、学習や受験に関するサポートが手厚い塾を選ぶようにすると良いです。
共働き家庭では、サポートが充実している塾を選ぶことをおすすめします。親のストレスや負担が減ることは、結果的に子どもにとっても良い効果をもたらします。親が精神的に安定していられるように、塾に任せられるところは塾に任せて、家庭では広い心で子どもをサポートできるようにしましょう。
自宅からのアクセスが良い塾
親の送り迎えが必要だと、フルタイムで共働きをしている家庭は通塾させることが負担になってしまいます。高学年になると週4日や週5日塾に通うことも珍しくありませんので、子どもだけで通える塾を選択するべきでしょう。
自宅から徒歩や自転車で行ける、最寄りの駅やバス停を利用して通えるなど、アクセスが良い塾を選んでください。特に、6年生になると帰宅時刻が遅くなりますので、安全な通塾路を確保できるかどうかも見極める必要があるでしょう。
自習室が用意してある塾
塾の宿題や予習・復習で子どもが困っていても、平日はなかなか勉強を見てあげられません。そういう時は、塾の自習室を利用して宿題や予習・復習をやらせるのが良いでしょう。
自習室にも様々な種類があり、「勉強用の机と椅子が利用できる自習室」「分からないところを質問できるチューターが配備された自習室」「Webコンテンツを利用できる自習室」などがあります。
例えば、栄光ゼミナールの自習室「i-cot」には、自習室専用のチューターが常駐しているので、いつでも気軽に質問することができます。また、馬渕教室の自習室では、Web講座やWebコンテンツを利用して授業の復習をすることができます。
ひとりでどんどん学習できる子どもなら学習用机があれば十分かもしれませんが、多くの子は講師のサポートが必要でしょう。特に共働き家庭の場合は自宅での学習サポートが難しいので、「チューターが配備された自習室」や「Webコンテンツを利用できる自習室」がある塾を選ぶのがおすすめです。
子どもの勉強管理が優れている塾
勉強管理には、「スケジュール管理」「学習状況管理」「メンタルサポート」など、様々な側面があります。
スケジュール管理では、志望校合格に向けた長期的な計画があるだけでなく、具体的なアドバイスをしてくれる講師がいると、子どもに合わせた調整がしやすくなります。例えば、個別教室のトライでは、2〜3カ月に1回、長期的なスケジュールの見直しをするための面談を行っています。学習が進んでいればより高度な内容を学習したり、学習が遅れていれば弱点強化を図ったりするなど、子どもの学習状況に合わせて柔軟に対応してもらうことが可能です。
学習状況管理では、模試の他にも、毎時間の小テストや毎月の塾テストを行って、子どもの学習状況を把握している塾があります。定期的にテストをして学習状況を把握することができれば、そこから弱点を分析して、対策を立てやすくなります。
例えば、「復習主義」を掲げている浜学園では、毎時間復習テストを行っており、学習の抜けや落ちがないか確認できるようなシステムを取っています。しかし、抜けや落ちがわかったとしても、子どもだけで対策を立てることは困難ですので、自習室のチューターに相談したり、土日を利用して親子で対策を立てたりする必要があることに注意してください。復習テストは1回解いただけではあまり意味がありませんので、間違えた問題が解けるようになるところまでサポートしましょう。
小学生にとっては、メンタルサポートも大切な勉強管理のうちのひとつです。なぜなら、特に子どもの場合は精神状態が勉強の進捗や結果に大きく影響するからです。気軽に相談できる講師がいる塾や子どもの調子を見ながら授業をしてくれる家庭教師など、子どもに合った先生のサポートを受けられると安心でしょう。
例えば、四谷大塚では、公開テストの結果によってクラス分けが行われます。このような競争を煽るタイプの塾では、競争心を駆り立てられてがんばれる子どももいますが、メンタルが弱い子どもでは結果が悪いと精神的なダメージも大きくなってしまいます。
特に、志望校判定が出るようなテストを受けた後は結果に一喜一憂しがちですので、子どもに親身に寄り添ってメンタル面もしっかりとサポートしてくれる塾を選ぶのが良いでしょう。
「共働きで中学受験を成功させる方法」まとめ
共働きで中学受験を成功させるには、両親で協力する体制を整えること、サポートが充実している塾を選ぶことなどが大切です。いずれの場合も、親が中学受験を先導して一方的に決めていくよりは、子どもの気質に合わせて、子どもに必要なサポートをするということが中学受験を成功させるポイントでしょう。
共働き家庭は時間的な制約がある分、安定した収入が見込めるのが強みです。その強みを生かして、塾や家庭教師を積極的に活用して受験に臨むのが良いでしょう。
「餅は餅屋」ということわざがあるように、学習や各種サポートを受験のプロに任せるのが中学受験を成功させる有効な方法です。塾や家庭教師の費用は他の習い事に比べれば高いものですが、子どもの将来への投資だと思って積極的な活用を検討してもいいでしょう。