中学受験において習い事を続けるメリットやデメリット
習い事を続けることにはメリットもデメリットもあるので、最終的には子どもの意思や両親の意向によって決めることになります。
子どもが「習い事を続けたい」と思っている場合、親が一方的に習い事を辞めさせてしまうのはあまりいい方法ではありません。子どもの意見を尊重しつつ、次に挙げるメリットとデメリットを参考にして子どもと親がしっかりと話し合い、お互いが納得する形で習い事を続けるかどうかを判断してください。
どの習い事をやっても受験にとってはプラスに働きます。「習い事は何がいい」ということはありませんが、「運動が苦手だから運動の習い事をする」などの「克服」を目的として習い事をさせると、子どもも精神的につらくなってしまいます。
子どもの学習と習い事の関係においては、ひとつの能力が上がれば、総じて他の能力も引き上がっていくという相乗効果をねらう方が大切です。これは習い事に限らず、教科の学習に関しても同じことが言えます。
4教科のうち、国語がダメだったり、理科がダメだったりすることがありますが、ダメな教科を引き上げるより、良い成績の教科を引き上げて行った方が、底上げができるので成績も上がっていきます。その逆のことをしてしまうと、親も子も苦しくなってしまいます。習い事も一緒で、子どもが好きで、楽しく通うことができる習い事をするというのがポイントです。
習い事を続けるメリット
●メリット1 気分転換になる
中学受験では、毎日何時間も勉強をしなくてはいけないので、子どもにとってはかなりのストレスです。しかし、習い事で適度に体を動かしたり、好きなことに取り組んだりすることで、頭がスッキリしたり、ストレス発散になったりします。自分の好きな習い事をする時間があった方が、精神的にも安定して受験ができたり、モチベーションUPにつながったりする子どももいます。
●メリット2 入試形態や受験科目によっては受験で有利になることがある
中学受験では一般入試の他にも様々な入試形態があるため、受験に有利になることがあります。
例えば、英語教室や英会話教室は、入試科目に英語がある場合に役立ちます。小学校で英語が必修化したことにより、一般試験の受験科目に英語を導入する中学校が増えてきています。
また、慶應3校(慶應中等部・藤沢・普通部)では、体育の実技試験が課されています。体育科の学校ではないので、運動ができないと即不合格ということはないでしょうが、ある程度運動ができるに越したことはありません。
他にも、東京都文京区の駒込中学校ではプログラミング入試が行われています。プログラミング入試はScratchを使ったプログラミングが出題されるため、プログラミング教室などに通っている子どもは受験に有利です。
当然、国立音楽大学附属中学校を受験するなら音楽が、女子美術大学付属中学校を受験するなら図画工作など、入試の傾向に合わせて習い事を続けた方が有利になることもあります。
●メリット3 効率的に時間を使えるようになる
習い事を辞めて時間がたっぷりあれば、その時間を全て勉強に使うかというと、なかなかそうもいかないのが実情でしょう。子ども自身が「勉強も習い事も両立できるようにがんばりたい」という熱意をもったら、自分で時間を管理して、なんとか両立できるように効率よく時間を使うこともあるかもしれません。その結果、ダラダラと時間を浪費してしまうことも減って、学習意欲を高める可能性も考えられます。
●メリット4 各種能力や社会性が向上する
習い事の種類によりますが、習い事を通して、集中力・コミュニケーション能力・体力・運動能力・空間認知能力・論理的思考力・リーダーシップ・忍耐力などの様々な能力の向上が期待できます。また、習い事の先生に対する礼儀、仲間とのチームワークなど、社会性の向上も期待できるでしょう。これらの能力は、受験勉強や入試に役立つこともありますし、長い目で見れば人生において役に立つ能力だと言えるでしょう。
習い事を続けるデメリット
●デメリット1 学習時間が確保できなくなる
習い事を続ける最大のデメリットは、学習時間が確保できなくなることだと言っても過言ではないでしょう。どんなに効率よく学習したとしても、塾や学校の宿題をしたり、授業の復習をしたり、過去問を解いたりするためには、相応の時間が必要になります。
難関校や最難関校を目指すなら、「どれだけ時間があっても足りない」という状況にもなりかねません。学習時間の確保ができなくなるなら、両立は難しいでしょう。
●デメリット2 体力的につらい
塾と習い事の両立は、体力的に負担がかかります。体力的につらい状態が続くと、体調を崩してしまったり、勉強に集中できなくなったり、精神的にもストレスがかかったりと、子どもにいろいろな悪影響を与えてしまいます。
体力的につらいだけで済めばまだよくて、ひどい時には、疲労やストレスが引き金となってチック症や自律神経失調症を発病してしまう恐れもあります。習い事を両立させようとする場合、子どもが体力的にも精神的にも大丈夫な範囲を見極めるようにしましょう。
●デメリット3 勉強に集中できない
習い事の発表会や試合が近づいてくると、そちらの方に意識が向きがちになります。「発表会で上手にできるかな」「試合で失敗しないかな」などと不安を抱えた状態だと、勉強に集中できなくなってしまいます。
発表会や試合などのイベントがなくても、将棋を習っていたら手筋が気になってしまったり、ドラムを習っていたら無意識にビートを刻んでいたり、どうしても習い事の方に意識が行ってしまい、勉強に集中できなくなることもあるでしょう。
習い事と勉強の気持ちの切り替えが上手い子ならいいのですが、気持ちをコントロールするというのは小学生にはなかなか難しいでしょう。
●デメリット4 「二兎を追うものは一兎をも得ず」になる可能性がある
両立させようとしても、結局どっち付かずになってしまうことが危惧されます。例えば、サッカーやバスケットボールなどの集団スポーツでは、練習を欠席する回数が多くなったり、練習不足になったりすることからレギュラーになれず、本気で取り組んでいる習い事の先生や他の子どもとの温度差に苦しむことになるかもしれません。
また、習い事を続けたことが要因となって、志望校に合格できなくなる恐れもあります。優先順位をよく考えて、中学受験に臨む必要があるでしょう。
6年生になると、子どもがどんなに受験と習い事を両立しようとしてがんばっても、「私はいつ休めばいいの?」と訴えかけてくるくらい忙しくなります。親から見ても、「スケジュール的に無理だな」と感じることもあるでしょう。
相当子どもがその習い事を好きでない限り、両立は困難です。場合によっては、「塾を辞める」(中学受験をやめる)という選択肢を検討することも必要になってきます。
中学受験で習い事を続けるべきか:まとめ
中学受験で習い事を続けるべきかどうかは、最終的には各家庭の判断になります。しかし、受験において勉強時間は非常に重要ですから、志望校に合格するだけの学習時間を確保できないと、習い事を続けるのは難しいのではないでしょうか。
ただし、子どもの気持ちを蔑ろにした判断は、受験のみならず子育てにも悪い影響を与えてしまうことになりかねませんので、十分に注意してください。習い事に関するトラブルを回避するためにも、「小学6年生のカリキュラムが始まったら辞める」「中学受験が終わったら再開する」など、事前に約束を決めておきましょう。
いずれにせよ、しっかり子どもと話し合って、親と子どもが納得できる選択をするようにしましょう。