科目別の中学受験の勉強法
まずは算数や国語など、科目別に有効な勉強方法を教えてもらいました。
算数の勉強法
文章題や図形など、同じ算数でも子どもによって得意不得意はありますが、もっとも大切なのは、「数」に触れる機会をたくさん作ること。低学年の頃から日常的に数に接している子は、中学年や高学年になっても、計算を工夫できたり、大きな値にも苦手意識なく取り組めたりする傾向にあります。
数に触れる機会は教材だけではありません。外に出れば品物の値段や電車の運賃、ドライブをすればスピードメーターや車のナンバーなど、あらゆる場所に数は溢れています。親は、子どもが街中で目にする数に興味を持てるように、水を向けてあげましょう。子どもが料理を手伝うときに「何等分にしてね」とお願いするだけでも、等分という言葉や数字の理解につながります。
教材やテストでは、文章からイメージを膨らませなければいけませんが、その際に役立つのが実体験なのです。スクールFCでも「数字に興味がある子は、日常生活での実体験が多い」と松島さんは話します。
国語の勉強法
国語における一番の肝は「語彙力」を増やすこと。国語の力を伸ばす方法として、「本を読みなさい」とよく言われますが、必ずしも読書だけが手段ではありません。有効なのは、家庭における家族との会話。「日ごろから会話が豊富な家庭の子どもは、国語に対しても強い印象があります」(松島さん)と話す通り、教材に取り組む前の段階で、知っている言葉の数を増やすことも大切です。
家庭では、子どもに合わせるのではなく大人の言葉遣いで話して、理解できないときは、きちんと教えてあげればOK。大人が読むような文章が、入試の設問で当たり前のように登場するのが中学受験の世界です。国語が苦手な子どもは、単純に書いてある文章の意味がわからないというケースも多いため、知っている言葉の数は多ければ多いほど本人の力になります。
「今日学校どうだった?」というところからでも構いません。また、子どもは間違った言葉遣いをすることも多いので、気づいたらスルーせずに、その都度正してあげましょう。「わからない言葉は聞いてね」と子どもが質問しやすい空気を作ることも大切です。
社会の勉強法
基本的には得意不得意の前に、社会に対する興味関心付けをできるかどうかが、重要です。歴史に関しては、子どもが前向きに接することさえできるのであれば、漫画や大河ドラマでも構いません。歴史に触れるときは、全体の流れを意識しましょう。歴史は、子どもが好きなRPGゲームなどと同じようにストーリーがあるのに、局所的にしか教わらないと理解が進みにくく、覚えるのが苦痛になってしまいます。
地理であれば、旅行などで実際に現地へ行くのが一番。「当塾生の親御さんの中には、子どもの勉強にもなる歴史に関連する場所へ、毎年何回も連れて行っていたと話す人もいます」(松島さん)という通り、親が積極的に「体験」を提供してあげましょう。特に子どもは、きっかけさえあれば、今まで嫌いだったものが好きになることは容易にあります。
社会を丸ごと嫌いな子どもはあまりいません。日常生活の周辺にある好きな事柄から誘導していく手段もあります。
理科の勉強法
理科も社会と似ています。「理科は嫌い」と話す子どもでも、実験は大抵好きなもの。入試は、「この実験から何がわかりますか?」という実験・考察を問う問題が大半なので、普段の学習でも取り入れることができれば、楽しく学ぶことができます。スクールFCでも、月に1回程度は実験の授業を導入しているそうで、「それが楽しみで塾に来る子もいる」と松島さんは話します。
実験は準備が大変で、予定通りにいかないこともありますが、そこで興味を持てれば理科が好きになるでしょう。学校の授業で行うような器具を使った実験ではなくても、紫キャベツの変化など、インターネットで調べて気軽に取り組めることでも力になります。道端にも教材は溢れていますし、親も一緒になって、ああでもないこうでもないと考える時間を作るのも効果のある学習方法です。
学年別の中学受験の勉強法
続いて、学年別の効果的な学習方法を解説します。
低学年の中学受験の勉強法
本格的な受験勉強に入る前の段階である低学年の子どもは、五感を使って学ぶことが、後々の学習に活きてきます。また、科目別の勉強法でも話したような、旅行や実験などの体を使った学びにおいては、座学が中心の学校や塾だけでなく家庭の役割も大切です。
低学年のうちから受験勉強ばかりを意識して無理に取り組む必要はないので、親と子どもが一緒になって、興味の赴くままに楽しんでください。買い物や料理でも、楽しんで学ぶことが土台になり、子ども自身にとっても大きな財産になります。低学年のうちは親子で学ぶ時間を大事にしましょう。
中学受験の準備として、3年生くらいから先行学習を始める塾もありますが、土台が身に付く前に難しい勉強に取り組んでも、砂上の楼閣で応用力もつきません。まずは、論理的思考パズルや特定の言葉を使ってゲーム感覚で作文を書くような、子どもが楽しくてずっと続けたいと思える勉強を中心に据えましょう。
4年生の中学受験の勉強法
4年生になると中学受験の勉強が本格的にスタートしますが、大抵はテキストばかりで、子どもにとっては途端に面白くない教材になります。ここで意識するべきなのが、本人にとって難しい問題には手を出さないことです。
4年生は、自分自身が「できた」と感じる自己効力感を持つことが非常に大事な時期です。子ども自身が面白くて、難しい問題にも前向きにチャレンジできるのであればもちろん構いませんが、親が「これをやって、次はあれをやって」と形式的に押し付けてばかりいると、勉強に苦手意識を持ってしまいます。
たとえチャレンジをしても、少し手を伸ばせば届く学習範囲に留めて、まずは計算力や漢字などの基礎をしっかり固めましょう。各教科の単元にでてくる基本的な問題がスムーズに理解できて、いつでも解けるようにしておけば十分です。
5年生の中学受験の勉強法
5年生は、中学受験における一番の山場といっても過言ではありません。大抵の塾では、この一年間で中学受験に必要なすべてのカリキュラムを学ぶスケジュールになっています。また、5年生は学校の授業とのレベル差が一番大きい時期でもあります。
さらに、本番を見据えた模試も始まるので、親としては当然偏差値も気になるところ。しかし、ここで偏差値を上げようとして、本人のキャパシティを超えた学習量を消化させたり、学習レベルを強要させたりすると、この段階で挫折してしまいます。
子どもを追い詰めてしまった結果、その場しのぎで宿題を丸写ししたり、カンニングをしたりしてしまうのもこの時期です。中学受験はゴールではありません。前向きに学んでいく習慣を将来にわたって持ってもらうためにも、親も含めた周りの大人は、今何が課題で何を学ぶ必要があるのかを見極める、冷静な目を養いましょう。
6年生の中学受験の勉強法
6年生はいよいよ志望校を決め、しっかり対策をしていく時期になります。まず、一学期から夏休みにかけては、5年生の一年間で学んだことを復習しながら、確実に定着させましょう。過去に学んだ内容を漏れなく完璧に身に付けている子どもはいません。得意教科を伸ばしつつ、弱点の穴を埋める勉強が必要になるこの時期の過ごし方は、非常に重要です。
スクールFCのアンケートによると、多くの家庭が夏休みから秋には、受験する学校を固めているようです。夏休みまでに復習を済ませてから、過去問対策などをこなしましょう。
なお、実際の試験では、各学校の頻出問題と子どもの得意不得意という相性もあります。苦手な単元がたくさん出る学校を受けると苦戦は必至。その点も、過去問をやりながら講師と相談して第一志望を決めてください。傾向と対策をしっかり分析して、自分に合った志望校を選ぶ重要性は、大学受験と変わりません。
また、模試の結果も続々と出てくる時期ですが、注意したいポイントも。模試は総合問題で、特定の志望校に対する傾向はありません。志望校の合格可能性や判定も記載されますが、その結果に振り回され過ぎないことも大切です。
家庭では、体調や健康面のバックアップも欠かせません。「合格者の親御さんに話を聞くと、食事や睡眠に一番気を配ったという家庭も少なくありません」と松島さん。眠い目を擦って学習しても能率が落ちるだけなので、規則正しい生活を送って勉強に集中できるようにサポートしましょう。
公立中高一貫校に向けた勉強法
ここまでは、私立中学受験の対策を解説してきましたが、より倍率が高い公立中高一貫校の勉強方法についても伺いました。
公立中高一貫校の受験で求められる力は、「自分の考えをアウトプットできる記述力」。例えば、設問の文章を読んで自由作文を書く国語の問題では、単に自分の意見を自由に書くだけではなく、文章の要点を踏まえた上でまとめる論理的な思考が重要です。
公立中高一貫校に関しても、専用の教材や問題集は用意されているため、記述力を上げる対策はできます。しかし、私立中学向け教材のように、「ここからここまで覚えればOK」といった形で、求められる知識が決まっている受験ではない点は、公立中高一貫校の難しさと言えるでしょう。基本的に、学校で習う範囲を逸脱するわけではありませんが、設問に書かれている習った内容から、類推できる事柄を導き出す力が必要です。
あえて極端な言い方をすれば、仮に教科書に書かれた知識が身に付いていなくても、自分の考えを表明できれば評価されるのが、公立中高一貫校の受験です。ただし、社会の一般常識や生活習慣、日本の文化や伝統など、いわゆる受験対策の教科書には載らないような教養は、私立中学受験よりはるかに求められます。日ごろから子どもが興味関心を持った事柄に対してしっかり親が応え、疑問を一緒に考えられるスタンスを持ちましょう。
中学受験の成績が上がらない勉強法
勉強はしているのに中学受験の成績がいまいち上がらないという家庭に向けて、注意した方が良い取り組み方と対処法もまとめました。
分野ごとの基礎固めができていない
基礎固めができていないと応用は効きません。成績が伸びないときは、難しい教材ばかりやらせている裏で、実は基礎がボロボロだった可能性もあるわけです。5年生の勉強法でも話しましたが、高学年になると模試も増えてきます。そこで、伸び悩む理由を見誤ってしまうと、さらなる応用や総仕上げに取り組む6年生になる頃には、泥沼にはまってしまいます。
今の勉強が子どものレベルに合っていなかったり、通っている塾がターゲットにしている生徒の層とミスマッチが起きていたりなど、基礎固めができない理由は千差万別。解決策が見つからないときは、塾講師などプロの力を頼りましょう。
「現状には必ず原因があるので、講師などに相談してアドバイスをもらうことも大切です」(松島さん)。
苦手分野の勉強をしていない
苦手な分野も志望校の試験に出てくるのであれば、潰しておく必要があります。ただし、本格的に対策をするのは、6年生の夏休み前後で構いません。
大人も同じですが、できない事柄について延々と指摘されるのは酷なこと。それまでは、先に紹介したように基礎固めや志望校で必要なカリキュラムの消化に努め、得意なことを伸ばしながら前向きに勉強に取り組ませてください。
学んだことの復習をしていない
学んだことは復習して定着させないと、試験で力を発揮できません。基本的に塾では、宿題などを通して子どもが復習をするようにカリキュラムを組んでいます。しかし、最初から何も言わなくても計画的に取り組める子どもは少ないので、「スクールFCでは、いつ宿題に取り組むのか、子どもが自分で決めて計画を立てるようにしています」と、松島さんが話すように、自覚を持って取り組んでもらうのが効果的です。
その上で、宿題を消化できなかったり、やってもおざなりだったりすると成績も伸びていかないため、軌道修正する方法を考えます。仮に宿題が多過ぎるのであれば、塾の講師と相談して、一時的に減らすのも手です。また、5・6年生であれば、半分大人の面もあるため、どうするかを本人とも一緒に考えて解決しましょう。
継続して勉強する習慣がない
継続して勉強する習慣は、早いうちから身に付けておくのがベター。子どもの気が向いたタイミングではなく、一日の中で勉強する時間を決めてしまいましょう。
低学年であれば、夕食前の10分や15分は必ず机に向かって計算や漢字ドリルをやるなど、短い時間で構いません。歯磨きと同じように、自然とできるようになってから、徐々に時間を伸ばしていってください。そのためには、勉強だけでなく食事や睡眠の時間も含めて、規則正しい生活を身に付けることも重要です。
また、子どものモチベーションも大切。小さな目標や、1週間や2週間の短いスパンで学習計画を立てて、着実に消化できるようになりましょう。6年生になる頃には、必要な勉強を自分で考えてできるのが当たり前になるように、学習を積み重ねていってください。
中学受験の勉強法に悩んだら塾に相談しよう
中学受験は、子どもの気持ちも大切です。4・5年生くらいまでは、たとえ第一志望が決まっていたとしても「そこに向けて一年間腰を据えて勉強しよう」とはならないのが当たり前。教材も基本的には味気ないものなので、成功体験がないまま興味関心を持てないと、辛いだけで頭に入らず、どんどん勉強嫌いになってしまいます。
塾では、受験に必要な知識だけではなく、学習計画の立て方やノートの使い方など、勉強に取り組むための方法をトータルで教えてくれます。悩みも100人100通りなので、迷うことがあったら、家庭だけで解決しようとするのではなく、塾にも相談してみましょう。
中学受験に向けての勉強法まとめ
中学受験は、「親子で取り組める最後の受験」とも言えるでしょう。高校受験になると子どもの希望や意思も強く、反抗期も始まったりして親はタッチしにくくなりますが、小学生の間は、家族ができるサポートもたくさんあります。
「受験勉強が始まると親も悩みは尽きませんが、他の子どもや周りの情報に左右されるのではなく、我が子にとって最適なゴールは何かを考え、一緒に受験を楽しんでください」と松島さんは話します。
親がけわしい顔をして成績と睨めっこしているだけだと、子どもは安心して取り組めません。もちろん最終的に合否という結果は出てきますが、その過程で親子共に成長する機会や、子どもの新たな一面の発見にもつながるのが、中学受験の期間です。