オープンキャンパスとは
オープンキャンパスとは、大学が高校生や保護者に向けて学内を公開し、参加者たちが大学の教育内容や施設、雰囲気を直接体験できるイベントのことです。進学希望者にとって、パンフレットやWEBサイトだけでは分からない情報を得る貴重な機会です。大学生活のリアルを知り、自分に合った進学先を見極める重要な判断材料になります。
オープンキャンパスがよく開催される時期
オープンキャンパスは、主に以下の時期に集中して開催されます。
①夏休み期間(7月〜8月)
もっとも多くの大学が集中して開催する時期。高校生の夏休みに合わせて、ほとんどの大学が大規模なオープンキャンパスを開催します。全国の大学でスケジュールが組まれており、複数校を比較検討するチャンスです。
参加申し込み予約は6月から始まる大学もありますので、夏前には情報収集が不可欠となります。
②春休み期間(3月)
学年が切り替わる進級前のこの時期も、志望校選びの第一歩として活用できます。特に高2から高3へと進級する受験生にとっては、本格的に進路を絞っていくために有効なタイミングです。
③秋(10月前後)
入試直前期の開催です。高校生は模試や文化祭と日程が重なることが多いため、早めの計画・調整に注意が必要です。このタイミングのオープンキャンパスは総合型選抜・学校推薦型選抜の直前対策や、一般入試への志望校再検討に使われます。
②③の秋以降の開催については入試説明会・個別相談が中心の小規模な内容が多めです。夏以外は開催しない大学もあります。
夏がメインの開催となり、多くの高校生が集まるため、予約が即時満席となることも多いです。早めにスケジュールを確認して、申し込みを済ませましょう。
オープンキャンパスで実施されること・体験できること
オープンキャンパスでは、単なるキャンパス見学にとどまらず、多様なプログラムが用意されています。
模擬授業の体験
大学の先生による「本物の講義」を体験できる模擬授業は、学問の奥深さや自分との相性を知る良い機会です。難解な内容もありますが、「興味を持てるか」「もっと知りたいと思えるか」が大切です。総合型選抜入試の受験予定者はこういった機会に体験したことを、志望理由書や面接での対話に活用できる可能性もあります。
キャンパスツアー
在学生が案内するキャンパスツアーでは、教室、図書館、食堂、サークル棟などを見学できます。施設の充実度だけでなく、学生の雰囲気や校風を肌で感じられます。
私の元教え子も進学した大学でオープンキャンパスの実行委員となり、高校生をキャンパスツアーで引率していました。その際に様々な質問を受けてたくさん話をしたと言っていましたので、こういったツアーに参加することで、在校生とたくさんコミュニケーションがとれ、大学について様々なことを知れる可能性もあるのではないかと思います。
入試・進路相談ブース
入試制度の説明や、学部選び、就職実績の確認、個別相談ができるコーナーも充実しています。総合型選抜入試の志望動機作成や受験戦略にも役立ちます。大学側も多くの受験生に自分の学校を受験してもらいたいと思っていますので、親身になって話を聞いてくれます。気になることは遠慮なく質問して大丈夫です。
オープンキャンパスで確認したいポイントは?
オープンキャンパスには参加するだけで満足せず、自分に必要な情報を意識的に収集していくことが大切です。どのようなポイントに注意すべきか、下記に例を挙げます。
学部・学科のカリキュラム
まだ自分の進学したい学部学科が決まっていない人は、様々な学部の話を聞いて、まずはどんな学問があるのか知ることが大切です。高校での勉強とどう違うのか、興味を持ち続けられそうな内容かなどを確認しましょう。
自分の進路が明確になっている人は、さらに深い部分を知るためにゼミや研究室のブースを訪れるなど、どんどんイメージを具体化していくとモチベーションの向上に繋がります。
他にも、学部横断で様々なジャンルの授業を履修できるかどうかなどは、まだやりたいことが明確化していない人は確認してみるとよいかもしれません。大学1、2年で幅広く学びながら、3、4年で専門的に学びたい学問を探せるはずです。
大学・在学生の雰囲気
キャンパスの雰囲気だけでなく、学生の話し方や服装、雰囲気から自分に合うかどうかを肌で感じ取ることができるチャンスです。ただ、大学には全国各地から様々な学生が集まります。オープンキャンパスで実際に話したり見かけたりする学生は、その大学の学生のほんの一部ですから、その印象だけで受験の有無などの重大な判断を下すべきでないとは思います。
その他には、共学しか経験がない女子受験生が女子大の受験を検討しているのであれば、女子大という女性しかいない大学の雰囲気を見ておくことなどは重要かもしれません。
留学・資格・就職活動等のサポート体制
大学在学中には、留学をしたり、資格試験に挑戦したり、就職活動をしたり、様々な活動に触れることになります。その際に大学側がどのようなサポート体制で在校生を支えてくれるのかは大切です。
留学であれば提携校の数や奨学金の有無、過去の実績など。資格試験であれば、各種講座の有無や過去の合格実績。就職活動であればキャリアサポートセンターの充実度や過去の就職実績などが簡単に思い浮かぶところです。
パンフレットに実績数値などは記載されていることがありますが、実際に担当者の話を聞くことなどができれば、より具体的なイメージを持てるでしょう。またそういった質問への担当者の対応や話しやすさなど、教職員の雰囲気も併せて確認しておきましょう。
通学の利便性・下宿の環境
通学時間や交通手段、下宿予定の場合は周辺の住環境や治安も確認しておきましょう。途中でキャンパスが変わる大学などもあると思いますが、4年間の通学にあまりにも負担が大きいと、途中で大学に行くことから足が遠のく人もいます。このポイントは意外と大切な着眼点です。
オープンキャンパスに行くべき理由
多くの高校生が口をそろえて「行ってよかった」と言うのがオープンキャンパス。以下の理由から、積極的に参加することをおすすめします。
雰囲気を肌で感じられる
パンフレットやWebでは分からない空気感や学生のリアルな様子を直接見ることで、志望度が一気に変わることもあります。受験直前期において、「夏に行ったあの大学のキャンパスで大学生活を過ごしたい」というような実体験をベースにした強い憧れや想いは、受験勉強を頑張り切るための原動力にもなり得ます。
学部・学科選びに役立つ
模擬授業を受けたり学科の説明を聞いたりすることで、自分が何を学びたいのかが明確になります。なかなか自分の進路が明確にならない高校生も多いと思います。そんなときは「絶対にこれは学びたくない」というものが見つかるだけでも少し進路が絞れます。
受験の出願について考えるとき、何も選択基準がないと戦略が立てられず困ることがあります。好きなもの、嫌いなものを漠然とでも見出すために、オープンキャンパスは有用です。
入試対策に生かせる
最新の入試情報や合格者の傾向など、受験勉強に直結する情報が得られます。最近は多くの大学が入試問題のポイント解説や過去問配布など、受験についての情報提供を積極的に実施しています。こういった機会は受験生も積極的に参加して活用すべきです。
志望動機に具体性が出る
オープンキャンパスで得た体験は、志望理由書や面接で使える具体的なエピソードになります。特に総合型選抜での受験を考えている人は、しっかりと大学学部の方針や学部学科での研究内容などを知っておく必要があります。総合型選抜の受験生にとって、オープンキャンパスで得られる情報はとても貴重なものです。
もちろんオープンキャンパスに参加したという事実が受験に有利になるなどということではありません。オープンキャンパスで見聞きした情報から、さらに自分なりの考え・仮説を見出したり、活動を深めたりして、自分の学びを深化させることができれば、総合型選抜入試においては、それが大きなアピール材料になります。
モチベーションが高まる
実際のキャンパスを見ることで、大学生活のイメージが具体化し、大学に合格すべく目の前の受験勉強を頑張ろうと思えるようになる人が多いです。特に夏休みのオープンキャンパスへの参加は、毎日長時間勉強している高3生にとってはちょうど良い息抜きにもなるため、リフレッシュ兼モチベーションアップにオープンキャンパスが役立ちます。
保護者との認識を共有できる
一緒に参加することで、保護者と進路について具体的に話し合えるきっかけにもなります。最近は保護者向けに説明会を開催している大学もあります。
志望校などについて共通認識を持てると、家族からより具体的なサポートをしてもらえるかもしれません。
比較検討がしやすくなる
複数校に行くことで、それぞれの特徴を比較でき、自分に合った大学を冷静に選べます。WEBやパンフレットからの情報で志望度が横並びだった2校に関して、オープンキャンパスに行った結果、明確な志望順位がつくことなども多いです。
オープンキャンパスはいつから行くべき?
オープンキャンパスには高1のうちから行くことが理想です。早くから参加することで、進路や志望校のイメージが具体化し、高2・高3の受験準備を計画的に進められます。ご存知のように、理系か文系か、国公立か私立かによって受験戦略は大きく変わってきます。早期に進路が明確になっていたほうが、対策を早期に開始でき、合格率を高めることができます。遅くとも高2の夏までにはオープンキャンパスに一度参加しておくのがベストです。
学年別!オープンキャンパスの活用方法
高校1年生
まず1年生にとっては大学とはどんな場所かを知ることが目的になります。漠然とした憧れや興味で訪問先の大学は選んでもよいので、少しでも気になる大学があれば迷わずオープンキャンパスに参加しましょう。将来の方向性を考える良いきっかけになります。
高校2年生
志望校選びを本格的に始める時期ですので、複数の大学を訪問して比較し、自分に合う大学・学部を探していきましょう。模擬授業や入試説明にも積極的に参加してください。興味のある学部、興味を全く持てない学部などが明確化するだけでも参加の意味があります。
高校3年生
受験直前の仕上げとして参加するイメージです。入試説明に参加して詳細を確認したり、複数受験する大学の中での最終的な志望順位の判断材料として活用できたりします。総合型選抜を目指す人は、面接や志望理由対策にも直結しますので受験予定校のオープンキャンパスには必ず参加しましょう。
オープンキャンパスを有意義に過ごすためのポイント
申し込みを忘れない
まず大前提として、気になる大学のオープンキャンパスの申し込みを忘れないようにしてください。多くは公式サイトでの予約が必須です。早いところは6月から申し込みが開始になります。6月に入ったら気になる大学のホームページをチェックして、申し込み開始日や方法を確認しておきましょう。
事前にタイムテーブルを確認し、回りたいブースや模擬授業を決めておく
オープンキャンパス開催中は、様々な教室・ブースにて同時進行で複数のプログラムが進行しています。事前にプログラムが公開されているはずですので、それをチェックして自分の当日の行動をシミュレーションしておきましょう。下準備なしで参加すると、全く希望のプログラムに参加できずに終わってしまうこともあります。
質問したい内容をリストアップしておく
相談ブースやその他の場所で、大学生や教授たちと話をする機会があるかもしれません。むしろ積極的に話しかけて会話をすべきです。
その際に、自分がどんなことを質問したいのか事前にリストアップしておくとよいでしょう。聞きたいことを忘れてしまったり、緊張してうまく喋れなくなってしまったりすることもあるかもしれませんが、質問リストを持っていれば安心です。具体的な研究内容、学生生活の雰囲気、入試体験談など、聞いておいた方がよいことはたくさんあるはずです。
キャンパス内では積極的に話を聞き、写真やメモを残す
前述の通り、受験生として収集しておいたほうがよい情報はたくさんあります。キャンパス内では勇気を出してたくさん話しかけてみましょう。
その際大切なことは、回答してもらったことを忘れないようにメモなどの記録に残しておくことです。帰宅後に、せっかく教えてもらったことを忘れてしまっていてはもったいないですよね。また、よくあるのが複数の大学のオープンキャンパスに参加していると、どの話がどこの大学で聞いたものなのか分からなくなってしまうという事態です。これもきちんと記録を残していくことで回避できます。
オンラインのオープンキャンパスも上手に活用する
コロナ禍以来、オンラインでオープンキャンパスを実施する大学が増え、現在でもオンライン参加が可能な大学が多くあります。一橋大学、筑波大学、千葉大学、東京外国語大学、学習院大学、明治学院大学などがその一例です。
キャンパスに実際に足を運ぶのは、大学の雰囲気をよく把握できる反面、移動などに時間がかかり受験勉強が圧迫されてしまう面もあります。志望度などに合わせて、オンラインも上手に組み合わせれば、効率的に多くの大学の情報を収集できるでしょう。
オープンキャンパスに関するよくある質問
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どのような服装で参加するのが良いですか?
特別な服装は必要ありません。動きやすく、清潔感のある服装がベストです。高校の制服があればそれでも大丈夫です。校風や大学によって、若干雰囲気が異なることはありますが、そこまで神経質になる必要はなく、必要以上に華美であったり肌の露出が多いような目立つ格好でなければ問題はありません。
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持ち物は何が必要ですか?
パンフレットや資料を入れるバッグ、筆記用具、メモ帳、スマートフォン(写真・録音用)などが必須です。当日の参加プログラムを含めた行動をシミュレーションした人や、質問リストを作成した人は、それも忘れずに持っていきましょう。
また、夏のオープンキャンパスは猛暑日に重なることもありますので、飲み物や日傘や帽子なども忘れずに持っていくことをお勧めします。
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オープンキャンパスにはいくつか行くべきですか?
はい。最低でも3校以上は訪問すると、比較検討がしやすくなります。同じ偏差値帯でも大学によって雰囲気や特色は大きく異なるため、実際に足を運んで確認しましょう。
ただし高3生は受験勉強の時間を削りすぎないように十分に注意してください。
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志望校は決まっていないのですが、参加するべきですか?
むしろ決まっていないからこそ参加すべきです。オープンキャンパスを通じて、自分に合った進路や学部を見つけることができるかもしれません。
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保護者がついていっても良いですか?
問題ありません。大学側も保護者向けの説明会を用意していることが多く、進学費用や就職支援について詳しく聞ける良い機会です。また我が子と共通認識を持つことで、その後のサポートがしやすくなるメリットもあります。
まとめ|オープンキャンパスには行くべきか?
大学選びは、人生の大きな岐路です。だからこそ、オープンキャンパスに「行って」「見て」「聞いて」「感じる」ことが極めて重要です。進学後のミスマッチを防ぎ、納得のいく進路選択をするためにも、ぜひ積極的に参加しましょう。
高校1・2年生のうちから動き出すことで、未来への選択肢が大きく広がり、受験戦略も明確になります。