少子化時代の“学ぶ時”の考え方

 最近は、高校生起業家も増えている。これもスポーツ選手と同じことだ。高校を卒業してすぐに大学に行く必要はない。事業が安定したり、大学で学ぶべきことがあったりすれば、そのときに進学すれば良いのである。

 一方で、「何が何でも現役で大学へ」を望む保護者が最近増えていると聞く。経済的な負担という現実的な要因も背景にはあるとは思うが、そんなに焦る必要はない。年々少子化の傾向が進んでいる。受験人口が、現役時よりも1年浪人してから挑んだときの方が少なくなる年もある。

 受験人口が減れば、それだけ競争は緩和されるのだから、現役よりも浪人をした方が、難関大に入学できる可能性が上がるかもしれない。ただし、この4月から3年生になる現高2生は、卒業の翌年度から大学入試に適用される学習指導要領が新しい内容に変わったり、受験人口が一時的に増えたりするので、あまり強気にはなれないのだろうが。
 
 積極的に浪人を選択すれば、高校時代よりも時間をかけて勉強に打ち込むことができるから、成績も現役時代より大きく伸びる可能性が出てくる。現役で第一志望に落ち、そこで妥協して興味があまり向かない進学先で学ぶよりも、浪人して自分の好奇心や興味関心、課題意識につながっている分野を学ぶ方が、実りがあるのではないだろうか。浪人してじっくりその学問に向き合う準備をすることも大切なことだと思う。

 全入化時代の大学選びでは、こうしたことも含めて考えたい。“現役合格”にばかりこだわる高校は、選択肢から外してもよいかもしれない。そこにあまり価値はないからだ。大学入学共通テストは、いくら解法を暗記しても数学で高得点を取れるわけではない。細かい歴史事項を暗記すれば、入試で有利になるわけでもない。

 今後主流になっていく総合問題に暗記は不要だ。暗記に充てる時間を考えることに費やすべきだろう。暗記本位の学習では、自分の持つ知識や理解を総動員して解かなければならない、「その場でなんとかする力」を試すような問題には対応できないからである。

 こうして「自ら考える」ことを学び、自らのウェルビーイングを得るための下地や素養を培うのが中高時代である。その実現にどれだけ寄与してくれるのか、こうした観点で学校選びをしていくことがいいのではないだろうか。

>>次回に続く