様変わりした大学入試のスケジュール
――いまの受験生の親世代ですと、1月中旬の大学入試センター試験から始まって、2月に入るといよいよ私立大の一般入試と国公立大2次試験が始まるという実感が、それを報じる側も含めてあったように思います。
後藤 非一般選抜である総合型選抜や学校推薦型選抜で年内に合格を得た受験生の多くにはもう関係のない話で、半数の受験生にとって大学入試はすでに終了しています。かつてのように横一線で、というのはもはやあり得ない。後述するように、大学の層によっては年内に入学者の確保をほぼ終えている場合もあります。
井沢 2023年度のデータを見ても、私立大では募集人員の半分以上が年末にはもう決まっていましたから。推薦型選抜の枠は公募から指定校制に移行してその比重を減らしており、23年度の志願者数は前年度比0.5%増でしたが、24年度はすでに前年度比でマイナスに転じているというデータもあります。
その点、総合型選抜の志願者数は24年度も前年度比20%以上増加していると推測しており、それを上回る勢いで合格者も出ています。受験生としても、総合型選抜の方が学校推薦とは違って校長の推薦を必要としないので学校とは関係なく出願しやすい、ということがあるかもしれません。
後藤 総合型選抜では、評定平均値が規準とならないことが大きい。学力を問われないし、そもそも勉強をしていない(笑)。勉強しなくても入れるというのが総合型選抜受験生の感覚になっていることがとてもまずいと思います。
井沢 中には、オープンキャンパスに行けば合格がもらえてしまうような大学もあります。そういう大学が増えてくると、大変ですね。
後藤 23年度比で、24年度は18歳人口が4万人も減っているわけですから、大学側としては入学者の歩留まりを読みにくい一般選抜の前に、早く学生を取っておかないといけない。ここ数年、非一般選抜の枠も合格者数も増えていますから、一般選抜の実質倍率は落ちるに決まっている。年内に合格を出し過ぎると、かつての江戸川大のように、一般選抜の枠がなくなり、一般選抜で合格者を出せなくなっちゃいます(笑)。
井沢 24年度の大学入学共通テスト出願者数が50万人割れ(確定値は49万1913人)となったことは大きいですね。少子化と年内入試での志願者増もあって、現役受験生が2%ほど減少しています。
後藤 少子化の影響が大きいとはいえ、本当に大丈夫なの、という気もします。大学にとって、共通テストが基礎学力を最も端的に測定できるものです。大学入試で判定すべきは、基礎学力と学習意欲。その基礎学力を大学はしっかりと判定できているのか。この状況では疑義を持たざるを得ない。これはある教育委員会が調べて判明したことですが、総合型選抜でも学校推薦型選抜でも、上位国立大での合否は、結果的に共通テストの得点で決まっていることが分かってしまった。基礎学力の重視なんですよね。
井沢 リンクしているわけですね、学力と。そして、学力試験以外の面接やプレゼンテーションでは有意差を生まないのでしょう。日東駒専(日本大・東洋大・駒澤大・専修大)など準難関クラスを境に、それよりランクが下の大学の入試問題と共通テストの試験内容は志願者のレベルも含めてもはや別物ですから。平均的な高校では、共通テストで求められている思考力・判断力・表現力のような受験対策ができないと思います。
後藤 そういう高校の受験生は、そもそも共通テストの対策まで追いつかない。定期テストでそれなりの理解を求めるのが精いっぱいの高校も少なくない状況です。これまで高校の授業は、大学の一般選抜のような学力試験を目指して指導してきました。それが、一般選抜が広き門になり、そういった指導がしにくくなっている。
そもそも生徒に一般選抜を受ける意思はなく、総合型選抜や学校推薦型選抜に走ることになる。そうした高校では、共通テストを受ける受験生は、少数精鋭なんですよ。
井沢 そうですね。共通テスト出願期間(9月25日から10月5日まで)に指定校推薦の校内選考はもうだいたい終わっていますから。
後藤 その学内選考でも学力、つまり授業の成績である評定しか見ていない側面があります。しかも、大学の面接でそれほど差が付くわけではない。15分から20分の面接で何が分かるのか。しかも面接しているのは大学の教員ですよ、分かるわけがない(笑)。
校内の成績なんてローカルルールですからね。果たしてちゃんと基礎学力を担保できているか。ある大学で聞いた話だと、受験生の書類に高校のランクが書いてあり、評価してはいけない評定平均も書いてある。そういう指標がないと、大学の先生は受験生を評価できない。つまり、かなりバイアスがかかった面接になります。