急速に変化する仕事と雇用に対応するには
後藤 今年の受験生は4年後に就職するわけですが、これだけ円が弱くて、自民党が崩壊して、いまよりも国際競争力は低くなっていると想定できる。日本の経済が不安定になっていることで、産業構造や雇用システムがガラッと変わる可能性は高いです。
営業職は人間がやらず「電子」がやる時代になるでしょう。人工知能が進化すれば、経理業務に人材を割り振ることもないでしょうね。社会科学系が養成していた人材の活躍の場がどんどん狭くなっていきます。
雇用システムも、特定の業務に対して人材を求めて賃金を支払うジョブ型雇用が増えてくるでしょうから「○○大学△△学部を卒業した」ことはあまり評価されず、「あなたは何ができますか」を問われるようになり、護送船団方式の大学システムは意味をなくします。
――そうなると、偏差値や大学間の序列も崩壊していきますね。
後藤 いかに学生を育て上げるか。大学教育の実質化を求められます。その大学教育にふさわしい能力の基盤となる教育が、高校教育にも求められていることを忘れてはいけないですね。基礎学力がないところに学力は積み上がりません。
――難関中高一貫校からの海外直接進学も年々増えているそうです。
後藤 一方で、トップ進学校では、保護者がこうした状況を既に見越しています。あるトップ公立女子校では、文系クラスよりも理系クラスが多くなりました。これは保護者の意向です。産業構造の転換を見据えているのですね。
さらに言えば、人工知能では対応しにくい保育士の待遇は改善し始めています。保育所不足の影響もあり、既に初任給は公務員よりも厚遇になる地域も出ています。ここでは短大卒と四大卒の給与格差はあまり大きくないようです。少子化とは言え、子どもが生まれないわけではない。今後、特に第3層の受験生は、人工知能が発達した世界を思い描いて高校卒業後の進路を落ち着いて考える必要があるでしょう。
井沢 首相がグレートリセットだとか言っている状態ですから。
後藤 そこまで読み込んで、偏差値だけではない大学選びをしないといけないわけです。