探究の授業がなければ見逃されていた資質
「探究入試」を実施する大学が増加傾向にある半面、必須科目となった「総合的な探究の時間」の指導が苦手という高校教員は少なくない。アロー教育総合研究所が行った「探究学習」に関する調査結果(上のグラフ)【1】を見てほしい。
教員の探究の指導に関する悩み事で最も多いのは「指導に時間がかかることによる教員間の業務負担格差」(19.1%)であり、次いで「指導法が定められていない」(11.7%)ことだ。評価の基準はもちろん、何を教えたらよいかすら分からないという理由から「探究」への取り組みに消極的な高校は多い。その一方で、教科学習では伸ばしにくい生徒の潜在能力を引き出す機会として「探究」に注力する高校もあり、教育現場は二分しているのが現状だ。
「必修になったので、ひとまずSDGsをテーマに『探究』を行うが、教員も生徒も何をしているのか分からないという学校の話を聞いた」(都立高校教員)
「『総合的な探究の時間』に、英語や数学などの補習授業を行う高校もある」(同)
このような声がある一方、“積極派”の高校では、全校参加の「探究コンテスト」で生徒同士が「探究」の内容を競い、専門家も驚くような成果を上げるケースもある。例えば、他の教科の成績がいまひとつでも、大好きな「生物の研究」で探究に取り組んだ生徒が、高校生国際シンポジウムの最優秀賞を受賞するような事例も出てきている(都内私立中高一貫校の教員)。探究の授業がなければ見逃されていた資質だった。
また、グラフ【2】を見ると、企業や団体と連携(16.8%)、大学と連携(8.0%)して「探究」の授業を行っているケースも少なくない。高校の外の世界に問いかければ、惜しみなく協力してくれる企業や団体、大学や研究機関は存在する。外部との連携は「何を教えたらよいか分からない」を解消する有効な手段の一つだ。
特に大学との連携は、高校卒業後の学びと直接結びつく要素が大きい。次回は、関西学院大学の「探究評価型入試」の例を紹介しながら、高大連携、高大接続入試改革の現状について考えてみたい。