年内学力入試が大学入試の前倒しを加速
多様な個性を持つ学生を早期に獲得する選抜方法として、総合型選抜や学校推薦型選抜の持つ意味は大きい。ただし、高等教育・研究を行う大学としては一定以上の基礎学力を備えた受験生を確保したいのも本音であり、年内に学力試験を行ってこれらの受験生が他大学に流れてしまうのを食い止めたいのは当然だ。
一般選抜で学力のある受験生を確保できるMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)以上、近畿圏では関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)以上の大学は年内学力試験の導入を見合わせると考えられるが、これらより難度が緩い大学は、導入を検討するだろう。
上記のような、いわゆる難関大学に入学できるのは受験生の上位約15%とされ、その大半は2~3月に行われる一般選抜をへて合格を獲得する。一方、私立大学全体で見ると、一般選抜以外の入試による入学者割合はすでに半数を超えている。24年度の統計では、全国の私立大学入学者の59.3%が総合型選抜、もしくは学校推薦型選抜によって入学しており、この割合は22年度からじわじわと上昇し続けている(※2)。
この数年間、受験生が一般選抜から総合型選抜、学校推薦型選抜にシフトした分だけ、少しずつ大学入試カレンダーは前に倒れてきたが、年内学力試験による入試の解禁でこの動きはさらに加速するだろう。
18歳人口はここ3年で110万人を割り始め、いよいよ踊り場に差し掛かっている。この先3年を過ぎると未曽有の下降が始まり、各大学は自身の立ち位置の見直しを迫られ確定しなければならなくなる。
あらゆる入試方式で全入の大学になるのか、学力試験をはじめ、受験生を選抜できる大学になるのか。26年度の「年内学力入試元年」は、より深刻な「大学サバイバル元年」でもある。
※2 令和6年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要 (文部科学省)