中学受験のための費用は一体いくらかかるのか?

 中学受験をするためにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。中学受験では塾の費用だけでなく受験料なども必要です。これらの費用を具体的に説明します。

中学受験用の塾に通う場合の費用

 まず、中学受験用の塾に通う場合の費用は合計でどのくらいになるのでしょうか。例として大手の集団塾である日能研に4年生から6年生まで通った場合の費用を紹介します。日能研に3年通った場合の費用は3年間の合計で約238万円です。

中学受験用の塾に通う場合の費用※標準的カリキュラムをこなした場合の費用概算(石田達人作成)。日能研のHPにて公表されている金額(2022年~23年の資料)を基に算出しました。金額詳細未公表であったり、季節講習等の未定分等については、過去の実績値から筆者が見込んだ金額です。受講パターンや受講教室により実際にかかる金額は異なりますので、あくまで目安としてください。

 ご覧のように4年生のときは約53万円、5年生で約76万円、6年生で約108万円と学年が上がると金額も上がり、6年生の費用は4年生のときの2倍にもなります。これらの合計金額は約238万円です。

 また、集団指導塾のほかに、個別指導や家庭教師からの指導も並行して受ける場合もあるでしょう。個別指導などを受ける場合の1年あたりの料金は以下のとおりです。

中学受験用の個別指導や家庭教師の指導を受ける場合の費用※各塾のHP等で料金が明示されている塾のみ記載しました。地域・教室等により金額は変動します。石田達人氏の協力で作成

 このように個別指導は安い場合でも1年間に約18万円、高い場合で約98万円かかります。3年間だと単純計算で約54万~294万円です。集団指導塾にかかる金額を合計すると、292万~526万円にもなります。

中学受験の出願にかかる受験料

 中学受験には受験料も必要です。公立の都立小石川などを受験する場合は2,200円ですが、私立中学を受験する場合は2万5,000~3万円程度かかります。例えば、開成は2万8,000円、女子学院は2万5,000円、聖光学院は3万円です。受験料が3万円の私立中学を5校受けると、それだけで15万円の出費が必要となるため、ある程度受験校を絞ることも検討すべきでしょう。詳しくは後ほど説明します。

中学受験の合格後にかかる費用

 無事に中学受験に合格したあとにかかる費用はどのくらいになるのでしょうか。ここでは、東京(開成)、神奈川(聖光学院)、千葉(渋谷教育学園幕張)、埼玉(浦和明の星女子)と公立中高一貫校の東京都立小石川の費用を比較してみました。

中学受験の合格後にかかる費用※各学校のHP・入学案内等から著者作成。積立金・制服代等の扱いが統一されておらず単純な比較には適さない。石田達人氏の協力で作成

 ご覧のように、私立中学校はどこも約200万円を超える金額となっています。一方で、公立中高一貫校である都立小石川は約75万円と私立中学校の3割程度の金額で済んでおり、大きな違いを見せています。

中学受験をしない場合にかかる費用

 中学受験をせずに公立中学へ進み、高校受験を行った場合はどの程度の金額がかかるのでしょうか。塾にかかる費用や受験にかかる費用などに分けて解説します。

高校受験の塾にかかる費用

 まず、塾の費用を調べてみましょう。ここでは、中学1年生の4月からSAPIX中学部に通った場合の金額を計算してみます。

高校受験の塾にかかる費用※SAPIX中学部のWebサイトに掲載された情報をもとに作成(受講教科5科のケース)。参考:SAPIX中学部のHP

 授業料や季節講習費用などを合計すると226万1,160円になります。中学受験で小学4年生から6年生まで日能研に通った場合の費用が約238万円でしたから、塾費用だけを比較するとそれほど大きな違いがないことがわかります。

高校受験の受験料や入学金

 次に、受験費用や入学金はどのようになるのでしょうか。ここでは、私立高校の例として開成に入学した場合と、公立高校の例として都立日比谷へ入学した場合を比較してみます。

高校受験の受験料や入学金
※開成高校、東京都教育委員会のWebサイトを参考に作成。参考:開成高等学校生徒募集要項、参考:東京都教育委員会

 開成の受験料や入学金は、中学受験の場合と変わりません。一方で、都立日比谷は1万円未満に抑えられており、公立の安さが際だちます。

中学受験と高校受験に必要な費用の総額を比較

 最後に中学受験で開成へ入学したケース、公立中学から高校受験で開成・都立日比谷へ入学したケースについて、入学までにかかる費用の総額を比較してみましょう。

中学受験と高校受験に必要な費用の総額を比較※開成高校のWebサイト及び前述のデータを参考に作成。参考:開成高校のHP

 開成中学の入学までにかかる費用は5,522,028円、開成高校は2,609,160円、都立日比谷高校は2,269,010円となっています。比較してみると、中学受験のほうが高校受験と比べて2倍近くの費用がかかることがわかります。ただしこの比較では、高校受験組は小学校でまったく塾へ行っていないことになっていますし、授業料以外の費用については計算に入れていません。そのため単純に2倍以上かかるともいえませんが、中学受験で私立へ行くほうが費用がかかるのは事実のようです。

中学受験出願の費用を抑える方法

 これまで説明してきたように、中学受験ではかなりの費用がかかることがわかりました。費用を少しでも抑える工夫として出願時の節約が考えられます。ここでは2つの方法を解説します。

志望校の数を少なくして受験する

 先ほども説明したように中学受験の受験料は1校あたり2万5,000~3万円程度かかります。不合格になったらどうしよう……と多くの中学校を受けたくなる気持ちはわかりますが、多く受ければ受験生本人にも大きな負担がかかります。必要最小限の中学校を受験することが、受験生本人にも費用的にも大切でしょう。

割引制度がある学校を選び受験する

 中学受験では、受験の機会を複数設定している学校も多くあります。この場合、複数回受験すると受験料が割り引かれるケースもあります。

 例えば、渋谷教育学園渋谷の場合、1回受験の受験料は2万3,000円ですが、2回受験は3万8,000円、3回受験は5万3,000円に割り引かれます。1回受験の受験料で3回受けたとすると6万9,000円で、20%以上割り引かれている計算です。

※参考:渋谷教育学園渋谷のHP

中学受験の合格後にかかる費用を抑える方法

 中学受験で無事合格したあとも、私立中学校ではかなりの費用がかかります。入学後の費用を抑えるにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは4つの方法を説明します。

公立中高一貫校へ入学する

 私立中学へ入ると中学の3年間で220万〜290万円かかります。しかし、都立小石川など公立の中高一貫校であれば費用は約75万円と、私立中学の3割程度の出費です。公立でも、都立小石川のように東京大学や一橋大学などの一流大学へ10人以上の合格者数を出している学校もあります。進学を考えながら費用を抑えたいと考えている方にとっては、公立も選択肢の一つとなるのではないでしょうか。

奨学金制度を利用する

 多くの私立中学校では奨学金制度が用意されています。学校によって用意されている奨学金は異なるため、中学校での費用を抑えたいと考えている場合はあらかじめどのような奨学金制度があるのか確認しておくとよいでしょう。

 また、奨学金には給与型と貸与型があり、貸与型が主流です。貸与型は返済義務があり事実上の借金のため、利用には慎重な判断が必要です。

特待生制度を利用する

 中学校によっては入学時の成績によって特待生扱いとなり、授業料などが免除される場合があります。例えば、渋谷教育学園幕張では、入学試験で成績優秀な生徒に対して、入学金・施設拡充費、授業料を1年間給付しています。各学年修了時に基準を満たせば6年間継続することも可能です。ギリギリで入学できる中学校を選ぶよりも、特待生をねらえるレベルの中学校をあえて選んで学費を抑えることも選択の一つです。

助成金を利用する

 私立中学校へ通っている場合、国や自治体から助成金が支給される場合もあります。例えば、現在は終了していますが、2021年度まで「私立小中学校等就学支援実証事業費補助金」という制度がありました。これは年収世帯が約400万円未満の家庭に対して、年額最大10万円の助成金が支給される制度です。

 今後も似た制度が設けられる可能性もあります。中学校での費用を抑えたいと考えているのであれば、こうした情報にもアンテナを張っておくことが必要でしょう。

中学受験の費用に関する体験談

Aさん(40代・女性・埼玉県)

中学受験をしたのは現在12歳の長女です。小学2年生の時に、全国的な小学生用の模試を受けたことがきっかけで、私立中学を目指し、小学2年の秋から大手の集団塾に通い始めました。

塾の費用は、2年時は約12万円、3年時は約22万円、4年時は約65万円、5年時は約103万円、6年時は約152万円となり、トータルは354万円ほどでした。この金額は通常の月謝・教材費・春夏冬期講習・夏期集中特訓・志望校別特訓を含んだ金額です。

受験校は1月に2校、2月に4校を前払いし、トータルで15万円ほどでした。合格後、入学金38万円を納入し、寄付金、授業料や制服、体操着、通学バッグ、靴、学校用PCなどを合わせると85万円ほどの支払いになりました。

受験の費用を抑える方法としては、通塾を4年生からにすることが1つです。また、我が子は3年生の時に塾の月テストで良い成績となり、3年生の半年間は授業料が半額免除となりました。さらに、我が家は受験予定校の試験料を1月の段階で全て払いましたが、ギリギリの状態まで待って、その都度払っていくことも受験費用を抑える方法の一つです。

ご覧の通り、お金は沢山かかりましたが、長女は本命校に合格し、今は充実した中学生活を送っています。もともと公立中に通うことを嫌がっていたことを思うと、自分で納得して通えているので結果として良かったと思っています。

Bさん(50代・女性・埼玉県)

地元の公立中学にそのまま進学させるつもりでしたが、本人の私立進学への強い希望により、4年生の夏休みから集団塾に通い始めました。一般的に中学受験準備は3年生の2月からと言われる中で、半年近く遅れてのスタートでした。

 

学年が上がるにつれて塾の曜日と時間が増えました。週末の学校別対策授業や夏季合宿や正月特訓などもあり、塾の費用はかなりのものでした。その他、個別集中クラスに通った時期もありましたから尚更でした。学年別で見ると、4年生時が約27万円、5年生時は約93万円、6年生時は約111万円で、トータルの費用は230万円ほどでした。

 

実際の受験校は3つで、受験料はトータルで7万円ほどかかりました。合格後には、入学費用や設備費等に約50万円を納めました。

 

もちろん何度も挫折はありましたが、何とか希望の学校に合格しました。諦めない精神や粘り強さ、前向きな気持ちが親子共々ついたように感じます。中学に入ってからも、親が勉強を促すような発言をしたことは皆無に近いくらいでした。なにより、素晴らしい先生や友人に恵まれた素晴らしい環境下で、娘が思春期・青春期を過ごせていた学校に感謝しております。

中学受験費用の総額まとめ

 中学受験の費用は塾だけで約238万円かかり、私立中学校の場合は入学後も3年間で約220万~290万円必要です。高校入学までの総額は約552万円にもなる一方で、高校受験から始めた場合の総額は約261万円と、中学受験よりも大幅に節約できます。

 ただし、どちらがよいのかは費用だけでなく受験生本人の希望や資質などにもよるため、必ずしも高校受験から始めたほうがよいというわけではありません。

 中学受験の費用を抑えるには、公立中高一貫校を選ぶほか、奨学金制度、特待生制度の利用などが考えられます。あらかじめどの程度の費用がかかるのか予測して、無理なく中学受験ができるように計画することが大切です。

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