小学3年生までの集団塾と個別指導塾の使い分け

 集団塾と個別指導塾の使い分けは、お子さんにとって効果的な学習環境を用意するためにとても大切です。そして、集団塾と個別指導塾のどちらがよいかは一概には言えません。

 ですが、3年生以下のお子さんの場合、基本的にはまず集団塾に行ってみることをお勧めしています。3年生以下は勉強への興味関心を高めることが特に大切で、集団の中で友達と楽しくワイワイ学ぶことはそれにあたりとても有意義だからです。

 ただ、もし集団の中で委縮してしまったり、姿勢面や学力面で集団塾は少し厳しかったりするようであれば、個別指導塾を検討してみるとよいでしょう。3年生以下は本格的な受験勉強の前の助走期間ですので、まずは本人が自分のペースで楽しく学べることが一番だと考えてください。

小学4年生以上の集団塾と個別指導塾の使い分け

 それでは4年生以上の場合はどうでしょうか。これについてのもっとも重要な判断基準となるのが現状の「成績」です。

 成績別にA〜Eでレベル分けをしてみます。

A 成績上位 偏差値63以上
B 成績中上位 偏差値55~63
C 成績中位 偏差値46~55
D 成績中下位 偏差値40~46
E 成績下位 偏差値40未満

※四谷大塚の偏差値を基準にします

 仮にこのように分けた場合、以下のようになります。

  • A……集団塾向き
  • B&C……集団塾と個別指導塾の併用向き
  • D&E……個別指導塾向き

 生徒ごとの個性もあるので、100%これが当てはまるとは言いませんが、経験上、概ねこのように考えて問題ありません。

【成績上位】偏差値63以上の場合

 成績上位であれば集団塾が明らかに向いています。進度の早いカリキュラムや大量の課題をこなす学力があり、多少の困難には挫けずにむしろ楽しむような精神力も、これまで「できてきた」経験から備わっている生徒が多いです。

 また、このレベルの学力層の子が狙う学校は、小学6年生にもなれば「志望校別コース」が集団塾の中に存在している可能性が高いです。そのコースを活用し、同じ学校を目指す仲間でありライバルでもある人たちと、切磋琢磨しながら頑張るのが一番でしょう。

【成績中上位】偏差値55~63の場合

 成績中上位も集団塾だけでやれる生徒です。ただしこのゾーンの生徒は何か弱点教科を抱えている可能性が高く、その教科について個別指導塾を併用して補強するのが効果的です。お子さんが今4~5年生ならその先に登場する応用問題への対応力を上げられます。6年生ならワンランク上の志望校を目指していくことも可能になります。

【成績中位】偏差値46~55の場合

 成績中位については、特に5年生以上ならば、ぜひ個別指導塾を併用したいところです。このゾーンにいる生徒は、特に弱点教科についてはほぼ間違いなく、集団塾の授業中に理解しきれなかった内容が存在しています。さらには、本人が理解できていないと気づいていない場合すらあります。個別指導塾でそのフォローアップをすることによる効果は絶大です。

 このゾーンには多くの生徒がいます。そのため、得点が伸びた時の順位の上がり幅は必然的に大きくなり、頑張りを成果として実感しやすくなります。成果が実感できればモチベーションも上がり、「やる気になる→もっと成果が出る→もっとやる気になる」の好循環に入っていくことができるのです。

 一方で、得点が下がった時の順位の落ち方も大きいです。うまくフォローしないと、気持ちが落ち込んでそのままズルズルと行ってしまうこともあり得ます。上に行くか下に行くか、その分岐点にいる成績中位の生徒は頑張りどころですね。ただ、まだ集団塾をうまく活用していける位置にいると思います。

【成績中下位・下位】偏差値46以下の場合

 過去に何例も見てきましたが、成績中下位・下位の生徒については集団塾よりも個別指導塾の方が合っている子が多いと感じます。集団塾に行っている場合には、思い切って個別に切り替えることで吉と出る可能性が高いです。

 大手集団塾の安心感のようなものは捨てがたいと思いますし、その気持ちはとてもよくわかります。しかし、大手集団塾のカリキュラムは、このゾーンにいる生徒に優しくないのも事実です。「急がば回れ」ということわざがあるように、立ち止まってじっくり考えたり、過去の内容に遡ったり、問題を取捨選択したりしてうまく間引きながら進めていかないと、「いつまでたっても身につかない」なんていうことになりかねません。

 そうなれば、お子さんが勉強嫌いになってしまうのも無理はありません。画一的なカリキュラムで進めていくのが非常に難しいのがこのゾーンの生徒です。10を詰め込もうとして最終的に1~2しか記憶に残らないのであれば、やる量を10から7に減らして、そのうちの5~6を定着させるような作戦が有効になります。

 また、6年生になったら欠かせない志望校対策については、成績中下位・下位のゾーンの場合、大手集団塾では志望校のコースが存在しない場合が多く、効率的に行うのは難しいです。個別指導塾で正しく志望校対策をすれば、偏差値で10程度はひっくり返せるという事例をたくさん見ているだけに、これは本当にもったいないことだと思います。

まとめ|集団塾と個別指導塾はどっちがいい?

 今回は集団塾と個別指導塾の使い分け・選び方について、私がこれまで20年間中学受験に携わってきた経験に基づく考えをお伝えしました。お子さんに合う環境を用意することで、勉強の姿勢や成績はみるみる変わっていきます。

「今までできなかったものが、きっかけひとつでできるようになった!」という成功体験は大きな自信にもなります。そうした成功体験を得ることは、中学受験という経験の中で、志望校合格と同じくらいかけがえのない大切なことだと思います。

 ぜひお子さんにとってベストな形を見つけてあげてくださいね。