むき出しのクッキーと個包装のクッキー、完食するまでにかかる時間に違いは?

「そのサポートとは何か?」というと、「手数の増減をコントロールすること」です。もう少し詳しく説明しますね。

 人はある行動をするときに、必要なアクションの回数が少ないほどその行動が多くなり、逆にアクションの回数が多くなるとその行動が少なくなるという性質があります。

 例えばある実験では、「試食調査」という名目で実験参加者たちにクッキーを渡しました。一方のグループでは、むき出しのクッキーを箱に入れた状態で渡しました。もう一方のグループでは、個包装されたクッキーを箱に入れた状態で渡しました。そして、どれくらいの期間でクッキーがなくなるかを観察しました。

 その結果、むき出しのクッキーが入った箱を渡されたグループでは平均して6日間でクッキーを完食しました。それに対して、個包装されたクッキーが入った箱を渡されたグループでは平均して24日間でクッキーを完食しました。

 こうした実験はさまざま行われていますが、「勉強」や「運動」のような増やしたい行動でも、「間食」や「飲酒」のような減らしたい行動でも、結果は一貫しています。その行動をするための手間が減るとその行動が増え、手間が増えるとその行動が減るのです。このことから、私たち親が「手数の増減のコントロール」を手伝ってあげれば、子どもの望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らせることがわかります。

勉強を増やすためには、勉強を始めるまでの手間を減らすサポートを

「勉強」を増やしたければ、勉強に取り掛かるための手数が減るようにしてあげましょう。例えば、机の上に勉強道具を並べてあげたり、復習すべき問題に付箋をつけてあげたりといったことが考えられます。こうした勉強の準備は確かに自分でやるべきことで、親がやってあげるのは「甘やかし」のように感じられるかもしれません。

 しかし学年やその子の発達の度合いによって、子どもが自分でやるのは難しい場合も多いのです。小学生だと、高学年になってもテキスト・ノートといった持ち物の管理が苦手な子は多いですし、自分が以前間違えた復習すべき問題の把握をきっちりできる子もそうそういません。

 特に、サピックスのようにテキストが製本されておらず毎回配られる形式だと、勉強の自己管理ができる子は10人に1人くらいしかいないかもしれません。

 子どもは能力的に困難なことを要求され、その手間にものすごく高いハードルを感じると、肝心の勉強するという行動が激減してしまいます。それでしたら親がサポートしてあげたほうがよいですよね。

遊びの時間を減らすには、遊び始めるまでにかかる手間を増やすサポートを

 また、「ゲームで遊んだり、テレビを見たりする時間」を減らしたければ、それらをするまでの手間が増えるようにしてあげましょう。例えば、「待機電力の節電」という名目でテレビのコンセントを使わないときには抜いておくというルールにしたり、タブレットなどは「セキュリティ強化」という名目で使わないときには毎回ログアウトして、「使うときには長いパスワードを打ち込まなければいけない」なんてルールにしたりするとよいですね。

 ゲーム機を片付ける場所は、次に出すのが面倒くさい場所にするというのもおすすめです。子どもが自分で片付けられなくて、出しっ放しになっていたりするご家庭も多いですが、それってすぐに手に取りやすいということですから、ゲームの行動が増えてしまうよくないパターンです。

 片付けが苦手な場合には、いっそのこと片付けてあげたほうが子どもの遊ぶ時間が減るので、親にとってもストレスがなくなってよいでしょう。

 こうしたサポートは親にとっても面倒なものですが、面談でお話をうかがうと、成績優秀な子の親御さんはこうしたサポートをされているケースが多いようです。特に勉強関係のサポートですね。

まとめ|勉強に集中できる環境をつくるサポートをしてあげよう

 思い返せば私自身が中学受験生でサピックスに通っていた頃、母親に教材の整理や復習すべき問題の管理など、いろいろとサポートしてもらっていた気がします。今思うと確かにそれは、勉強に集中するための大きな力になっていたと思います。

 私が開成に合格できたのは、間違いなくそうした母親のサポートのおかげだったというわけですね。自分がしてもらっていたことがなぜ効果的だったのか、後から答え合わせをしたような気分です。

 そして今は一人の親として、自分がしてもらったのと同じように、自分の娘にも勉強に集中できる環境づくりをサポートしていきたいと思っています。どんなサポートをしたらよいのか迷うこともあると思いますが、そんなときには「子どもが勉強するときの手間を減らすことはできないか?」「遊ぶまでに手間をかけることはできないか?」という基準で考えてみるとよいのではないでしょうか。ぜひ参考にしてみてくださいね。