中学受験の成功は合格・不合格だけではない?

 さて本日は、中学受験を経験した子どもに対して、親はどう接するべきか、3つの秘訣をお伝えします。

 その前に、ひとつ大切なことを。中学受験が成功したか失敗だったか、本当の価値が問われるのは、受験が終わった直後ではありません。

 どんな中高6年間を過ごしたか、どんな大学生活を過ごしたか、さらには大人になってからどういう人間になったか。それらをふまえて「今があるのは中学受験で頑張ったからだね」と言うことができたなら、中学受験は価値ある経験になったと言えるでしょう。

 つまり、中学受験の経験がお子さんの今後の人生に活きるものとなることが、中学受験の成功には欠かせない要素なのです。

 逆に、仮に第1志望に合格できたとしても、お子さんが「やっと勉強から解放された!」と言って遊びほうけてしまうようでは、中学受験は成功したと言えません。そこからサボり癖がつき、中学受験でせっかくついた勉強習慣もどこへやら、気づけば中高6年間深海魚なんてことも起こり得るのです。

 一方、受験で不合格になった悔しさをバネに勉強に励む子もいます。受験で合格できた喜びを糧に「次もまた頑張ろう」と決意する子もいます。お子さんにどんな影響を与えるかは、我々大人の働きかけ次第です。ぜひ3つの秘訣を実践して、お子さんの成長につなげてくださいね。

子どもの努力の積み重ねを評価してあげよう

子供の画像
出典: pixta

 まず1つ目の秘訣です。それは、合否の「結果」よりも、ここに至るまでの「努力の積み重ね」を評価することです。付け加えるのであれば、お子さんの努力の積み重ねを「減点法」ではなく「加点法」で評価することです。

 お子さんは、中学受験の勉強を始めてから本当によく頑張ってきました。

「小学生が週に何回も夜遅くまで塾で勉強している」

 たったそれだけのことでも、中学受験をしないご家庭から見たら異常なことです。もしご自身が中学受験をせず公立の中学校に行ったというお父さんお母さんであれば、その大変さがわかるのではないでしょうか。

 理想を言えば、家に帰ってきて復習をし、宿題をこなし、テストの解き直しをしてと、キリがありません。実際にその理想通りに行動できていないことも多々あったでしょう。

 ですが、人間そうそう理想通りの行動なんてできるものではないですよね。翻って自分自身を省みれば、我々大人もスキルアップ・キャリアアップのための勉強や、日々の仕事への取り組み、健康的な食生活など。理想通りにできなかったことがありますよね。

 子どもたちも同じです。理想通りではなかったとしても、友達の誘いを断ってサボらずに塾に通ってきただけでも、数年間大変な頑張りをしてきているのです。

 その頑張りを「それくらい受験生だから当たり前」だなんて思うのは、「給料もらっているんだから身を粉にして働くのは当たり前」というパワハラ上司や経営者と同じ発想です。

「自分ならどんなふうに評価されれば一生懸命働きたいと思うか?」

 そう想像してみれば、お子さんなりの頑張りに対して、どんな評価や声かけをすると子どもの成長につながるのかわかるはずです。

合格・不合格の要因を子どもと一緒に分析しよう!

 続けて2つ目の秘訣は、合格・不合格の要因をお子さんと一緒に確認することです。

 もし結果が不本意であったとしたら、まずは秘訣その1「これまでの努力の積み重ねを評価する」を実践してから、「もう一度やり直せるとしたらどうするか?」をお子さんに聞いてみてください。改善すべき点にお子さん自身も気づいてくれるはずです。

 また、結果が合格であった場合も、同じように「どんな行動が成功の要因だったか?」を聞いてみましょう。これからも続けるべきことが明確になります。そうして中学入学後に自分がすべきことを確認してみてください。この中学受験という経験を今後に活かすうえで役立ちます。

合格を子どもと一緒に心から喜ぼう!

 最後の3つ目の秘訣は、第2志望以下の学校の合格も心から喜ぶことです。これは第1志望の学校が不合格だった場合は特に大切です。

「高い目標を掲げて頑張ってきたけれど、残念ながらその目標に届かなかった。」

 大人の仕事でもあり得る話なので、自分の身に置き換えて考えてみましょう。目標に到達できなかったことを叱責されるのと、目標までは到達できなかったけれど得られた成果に対しては良い評価をしてもらえるのと、どちらの方が「次も頑張ろう」と思えるでしょうか?そう考えると、お子さんにどう接していくべきかがわかるはずです。

 結局のところ、「頑張ったから良いことがあった」と思うことができれば、人は「次も頑張ろう」とやる気を出せます。そして、第2志望・第3志望といった学校の合格が「良いこと」かどうかは、多くの場合周囲の評価に影響されます。特にお父さんお母さんが喜んでくれるか、友達がスゴイと言ってくれるか、その影響は大きいです。

 他人の反応に左右されることが良いか悪いかはさておき、お子さんに「頑張ろう」と思わせるには、手にした合格の価値を高めてあげることが大切です。

 反感を持つ方がいることも覚悟して、はっきり言います。ときどき「偏差値〇〇以下の学校なんか行かせても仕方ない」というようなことを言ってしまう方がいますが、中学受験の経験を活かすという観点からは最悪な対応です。

 子どもが手にした「合格」という成果を貶めるようなことは絶対に言ってはいけません。全力で喜んで、全力で合格の価値を高めてあげましょう。

中学受験後も親は子どもの信頼できるサポーターであろう

「終わり良ければすべて良し」という言葉があるように、人間の心理は必要以上に「終わり方」の印象が強く残りやすいです。そしてまた、「良い結果」よりも「悪い結果」の方が強く印象に残ります。

 中学受験で第1志望に合格できる子は約3人に1人と言われます。たとえ結果が不本意であっても、中学受験を価値ある経験として活かすために、親は受験後も変わらず子どもにとって信頼できるサポーターでありつづけましょう。

  1. 「受験結果」ではなく「これまでの努力の積み重ね」をポジティブに評価すること。
  2. 合格・不合格の要因を、お子さんと一緒に確認すること。
  3. 「不合格」ではなく「合格」により目を向けて、手にした合格の価値を高めてあげること。

 この3つの秘訣を意識して、中学受験を終えたお子さんに「中学受験のために頑張ってきて良かった」という気持ちを与えてあげてください。そして、お父さん・お母さんも将来振り返ったときに、「我が子に中学受験をさせて良かった」と思えるようにしてくださいね。

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