5年2学期の単元の「理解」が合否を分ける
順当勝ちするために重要なことは「小学5年2学期で苦手単元を作らないこと」です。これはいろいろなところで言われることなので、もしかしたらもうすでにご存じだったかもしれませんね。「なんだそんなことか」と思わせてしまったら申し訳ありません。
しかし、皆さんが思う以上に、この小学5年の2学期というのは重要なのです。例えば、入試によく出る単元No.1といえば「速さ」なのですが、その派生パターンである「旅人算」、「時計算」、「流水算」、「通過算」、「仕事算」といった単元の数々も怒涛のように攻めてきます。どの単元も基本的な考え方は共通で、相互につながっています。しっかり深掘りして理解すると、似たような単元もまとめて解けるようになります。
とはいえ、表面的な解法パターン暗記の勉強をしていると、似ているだけにどれがどれだかわからなくなり、パニックを起こします。たくさんの解法パターンを覚えなくてはならないのは事実ですが、その解法になる「原理」や「理由」をきちんと理解しないまま暗記しようとしても、なかなか定着につながらず、苦手意識ばかりが募ります。
原理を理解しないまま「暗記算数」をやっている子は、小学4年生の単元だったら「過不足算」、小学5年生の単元だと「割合」が苦手な子が多いようです。もし1学期に習ったこれらの単元が「難しい~」「嫌い~」と言っているようでしたら、小学5年の秋に習う速さ関係はだいたいどれも苦手になるでしょう。一度でも苦手意識を持ってしまうと、立て直しは困難です。
表面的な理解でなく、本質的な理解ができているか
さらに小学5年秋のカリキュラムには、「速さ」と並んで入試で合否を分ける重要単元の「比と図形」があります。「相似」や「面積と辺の比」といった内容です。
これらの単元は、複雑な図形の中の一部を頭の中で部分的に切り出して考えて解く問題です。図形をイメージする力が低く、どこを見てよいのかわからない子は解くのに困ってしまいます。
図形の中には、「意味がある部分」と「ない部分」があります。意味がある部分を見つけるまでには、試行錯誤というか、視点の切り替えが必要です。この作業が苦手で、図形の中に隠れている「相似」などの「意味がある部分」を見つけ出せない子は、「比と図形」が苦手になってしまいます。
問題を解くカギになるのは「図形の認識力」のほうで、解法を覚えているかどうかではありません。解説を読んで、あるいは先生の説明を聞いて「わかった」と思っても、結局できない子はここに原因があります。
これまでの図形問題で「表面積が苦手」とか「展開図が苦手」と言っている子は図形の認識力が弱くて、「比と図形」にも苦労する可能性が高くなります。
これらの小学5年秋の重要単元を表面的な理解で通過してしまい、小学6年生になった時にすっかりわからなくなってしまうと、そこから立て直すのは本人も親御さんも苦労します。ですから、今このタイミングでしっかりと理解できるまでたどり着くことが大切です。
子どもの「理解している『つもり』」を防ごう
では、本質的な理解ができているかどうかは、どうすれば確認できるのでしょうか?その方法は、「理解していないとできないことをしてもらう」です。
例えば「速さ」関係の問題であれば、「なぜその解法になるのかを説明してもらう」のが効果的です。「比と図形」であれば図形を回転させたり、多少変えたりして、類題を作って解いてみるのがよいでしょう。まったく同じ問題を解いても、図形の認識力のトレーニングにはなりません。知識の確認になるだけです。
そうして「ちゃんとわかった」のレベルまで理解を深めると、その時に解けるようになるのはもちろん、時間がたっても忘れにくくなります。私たちテスティーではこの理解のレベルを「ステイライン」と呼び、指導の際に非常に大切にしています。
理解度を測るのは、慣れないと最初は大変ですが、原理としてはそれほど難しくありませんので、ご家庭でもぜひ意識して見ていただければと思います。そして、理解が不十分だなと感じたら、納得できるまで説明してあげることと、定着するまで反復練習をすることを徹底していきましょう。
子どもの自己評価に任せておくと、「理解している『つもり』」になってしまうことが多いので、しっかりサポートしてあげてくださいね。
それでは!