臨海セミナー(中学受験対策)を一言でいうと
神奈川県を中心に全国展開している最大手塾で、校舎数は500以上ある。面倒見が良く、国立・私立も都立・公立一貫校も両方の入試に対応している塾だ。
中学受験専門の塾の多くは私立中学対策が中心で、公立一貫校対策には力を入れていないが、臨海セミナーは都立・公立中高一貫校対策コースを設置し、私立と公立の併願がしやすくなっている。
カリキュラムやテキストは四谷大塚準拠
「国立・私立中学受験」(小学1年から小学6年)コースは四谷大塚のカリキュラムで行っている。テキストも『予習シリーズ』を使用。四谷大塚の公開組み分けテスト(クラス分けのためのテスト)も受験するので、大きな母数の中での自分の立ち位置が分かる。
また、予習シリーズは中堅校から難関校対策まで対応しているため、文量が多かったり、情報が細かすぎたりすると感じる生徒もいる。そういったニーズに答え、臨海セミナーでは予習シリーズをもう少し端的に分かりやすくまとめた内容のオリジナルテキスト『リピートトレーニング』を作成している。
予習シリーズでは、ひとつの単元を数ページで説明していることがしばしばあるが、それを1ページにまとめている。「そのテキストだけを売ってくれないか」というお問い合わせもあるほど予習シリーズの補助教材として優秀だが、外部には販売していない。生徒のニーズに合わせて指導する方針を示すオリジナルテキストである。
このオリジナルテキストは四谷大塚のカリキュラム内のものだが、それ以外にもオリジナルのプリントを使用している。社会では「生活知識テスト」で時事問題を扱い、理科では「理科発見プリント」などで補完している。
モチベーションをあげる気さくな講師
気さくで活気ある講師が多い。いわゆる体育会系のスパルタ指導ではない。「褒める・認める・励ます」ことを目指し、生徒のモチベーションをあげていくように努めている。
臨海セミナーでは、授業をシステム化し、「臨海方式AQuA」という授業を行っている。「臨海方式AQuA」とは講師が問いかけをし、生徒を講師が指名し、答えさせるというもの。生徒はいつ自分が差されるか分からないという緊張感を保ち、授業に集中していく。
この「臨海方式AQuA」の授業ができるように講師たちは研修を積んでいく。育成専門の部署、人材育成センターが細分化された研修プログラムを管理し、多くの研修を実地している。
学生講師を含め、新人講師は週に3回の研修を受け、授業研修では上司や先輩講師の前で模擬授業を行い、アドバイスをしてもらう。また、月に一度は、授業アドバイザーが各講師の授業を見学し、その質が保たれているかどうかをチェックしている。
大手塾の課題は「どの校舎でも同じクオリティの授業を提供すること」であるが、国内最大手の臨海セミナーはその課題をクリアすべく、力を入れている。講師の研修を体系化し、校舎によって授業の質に差が出るといったことがないように努めている。ちなみに女性講師が多いのも特徴で、校舎全体の3割が女性の校舎長だ。
授業の前後にテストで理解度を確認
最初に先週の内容のテストがあり、それからその日学ぶ内容をやり、生徒が理解し、問題が解けるところまで指導していく。最後にその日習った内容がどこまで身についているかを調べるためにテストを行う。なお、授業の前後のテストは両方とも5分ぐらいである。
授業は講師が一方的に話すのではなく、双方向の授業だが、生徒が自由に発言するわけではない。私語は厳禁で、生徒は講師に差されてから発言をする。1クラス20人ほどなので、双方向の授業が問題なくでき、講師が教室全体に目を配ることができる。
都立・公立一貫校コースも充実
中学受験塾の多くはまだ公立一貫校対策に力を入れていないが、臨海セミナーは、専門の「都立・公立中高一貫校」コースを設置し、東京、神奈川、千葉、埼玉の都立・公立中高一貫校入試に対応している。
公立一貫校入試で課される適性検査を通過するためには、私立中学同様に基礎学力が必要となる。適性検査で地理に関する問題が出た時には地理の知識が必要になるし、図形の計算に関する問題が出たらその解き方を学んでいないといけない。
まず、基礎的な学力を身につけてから、適性検査対策をし、資料を読み取る力や記述力を鍛えていく。作文添削指導では原稿用紙の使い方から、論理的な文章の書き方を教えていく。
小学6年の「適性検査対策講座(土曜日)」や「志望校別対策講座(日曜日)」「神奈川公立中高一貫校添削講座」「都立中高一貫校添削講座」などの講座はそれ単体で受講することもできる。
「国立・私立受験」コースを受講している生徒が、公立一貫校も併願したい場合、小学6年になってから、平日は通常の私立受験対策の授業を受け、週末は公立一貫校対策の講座を受けることもできる。中学受験対策の塾で、私立一貫校対策と公立一貫校対策の両方を学べるところは多くないから、臨海セミナーは私立と公立の併願を考えている生徒にはメリットが大きいだろう。
塾と生徒、保護者が密に協力できる体制
臨海セミナーは「塾と生徒と保護者が協力しあって受験を乗り越える」という方針の塾であり、関西塾の手厚さに近いものがある。定期的に講師が保護者に電話をしたり、面談を行ったりする。それとは別に生徒面談も実施する。
「中学受験生は小学生なので、塾側と家庭が情報を共有しあってフォローしていくことが大切だと考えています」(中学受験科責任者 川畑真之介さん)
自習室があり、分からないところがあれば講師やチューターが随時質問に対応し、授業の前後にも質問対応をする。
学年・段階に合わせた豊富な講座
通常の授業以外にも講座を多く設定している。小学5年の前期向けの「復習講座」は小学4年の範囲の復習と次週の予習をする。小学5年で学ぶのは、小学4年で勉強した内容を進化させたものであり、復習が予習になるためだ。算数は基礎問題を反復することで応用問題への下地にしていき、国語は長文に特化して読解力をつけていく。
小学5年からは「弱点克服講座」が始まる。週の復習をし、基礎を身につけさせる。算数では基礎的な問題をとりあげ、国語では長文に特化する。
これらとは別に「YT週テスト講座」(小学4年~小学6年前期)では、四谷大塚のレベル別テストを受ける。その週に習った内容を中心としたテストで、結果は全国規模のデータを基に分析し、数日後にはweb上で結果を確認できる。苦手分野はその後の解き直しでフォローができる。
「入試対策講座」(小学6年)の前期では小学5年の理科と社会の復習をし、模試への対策をしながら、基礎の見直しと応用を学ぶ。後期は、入試問題の過去問を解いていき、単元ごとの重要な箇所の復習をする。問題を解いて、確実に得点にする実践的な力を鍛えていく。
臨海セミナーに合うのはどのような生徒?
先に述べたように公立一貫校対策の講座も充実しており、幅広い中学受験を考えている生徒には魅力だろう。面倒見もいいので、それを求める家庭とも相性はいい。一方で、勉強の仕方や取り組み方に独自の方針がある家庭からすると、塾からのフォローやコミュニケーションが過剰に感じられるかもしれない。
どんな評判の塾か
臨海セミナー(中学受験対策)の基本データ
校舎数 |
522校(臨海セミナー全体、6月1日現在) |
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生徒数 | 67,018名(2022年9月現在) |
自習室の有無 | 原則あり(使用していない部屋を教室開放する教室もある) |
質問対応 | あり(授業前後、休み時間等) |
授業の生徒数 | 10名~20名 |
専任講師の比率 | 非公表 |
生徒の男女比 | 男子50.2%:女子49.8% |
授業料 |
<国立・私立中学受験コース>
詳細は教室までお問い合わせください。 教材費・模擬試験代などが必要となります。 |