2025年新課程共通テスト 数学の試作問題の詳細

 次に公表された試作問題の内容を詳しくみていきましょう。全体的には、「未知の状況に対し、求めた数値・数式から何を分析し、どのような結論を出すのか」という従来の共通テストの出題意図や傾向が変わったわけではないように思います。新課程の内容は、分析や問題解決に利用できる内容ばかりである(確率統計全般、仮説検定、外れ値、期待値など)ため、論理的に思考し、問題解決を行う問題が増えたように感じます。

数ⅠAの試作問題

 まずは第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」について解説します。今回の出題では、国際空港の利便性について、空港とターミナル駅との「距離・時間・費用」について調べています。特徴を示したデータを基に考察していきます。

第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」-1
出典:大学入試センター

(1)では移動距離について基本的な統計量を求め、外れ値を調べています。

第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」-2
出典:大学入試センター

(2)では散布図や箱ひげ図から、データの傾向を把握して特徴を表現しています。標準偏差や相関係数の意味を考える問題になっています。

第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」-3
出典:大学入試センター

(3)では二人で仮説を立て、実験を通じて主張の妥当性について、判断していきます。問題作成方針にあったように日常の事象を取り上げ、目的に応じて数、式、図、表、グラフなどを活用する問題となっています。

 次に、第4問数学A「場合の数と確率」についてです。当たりくじを引く回数に関する確率やその期待値について出題されています。

第4問数学A「場合の数と確率」-1
出典:大学入試センター

(1)では確率や新課程の内容である期待値を求める典型問題になっていました。また、(2)の文章量が例年の2倍ほどになっていました。

第4問数学A「場合の数と確率」-2
出典:大学入試センター

 この文章量は参考書で勉強していてもなかなか出合うことがありません。普段の学習から素早く問題の要点や論点を理解する練習が必要となってきそうです。

数ⅡBCの試作問題

 まずは第5問数学B「統計的な推測」についてです。こちらは環境問題となっているマイクロプラスチックについて砂浜に含まれる個数を調べる場面になっています。

第5問数学B「統計的な推測」-1
出典:大学入試センター

(1)では問題作成方針にあったように、事象を数学化し、確率変数の平均、分散、標準偏差などを用いて、「砂浜に含まれるマイクロプラスチック」の全個数を考察しています。

第5問数学B「統計的な推測」-2
出典:大学入試センター

(2)では昨年の調査から今年の「マイクロプラスチック」の母平均が昨年と異なるといえるかを仮説検定していきます。

 最後に第7問数学C「平面上の曲線と複素数平面」です。コンピュータソフトを用いた実験についての問題でした。〔1〕と〔2〕が出題されています。

第7問数学C「平面上の曲線と複素数平面」-1
出典:大学入試センター

〔1〕は方程式の係数の変化に応じて表示される図形についての問題。

第7問数学C「平面上の曲線と複素数平面」-2
出典:大学入試センター

〔2〕はコンピュータソフトを使って、複素数平面上に表される複数の点の様子を観察し、その複数の点を基に描かれる図形についての問題でした。

 文章量も多く、思考力を必要とする問題で、時間内で終えるのはなかなか難しい内容になっていました。大学入試センターによると、試作問題の第7問は〔1〕平面上の曲線〔2〕複素数平面の2題構成になっていますが、他の構成も考えられるとのことなので、実際の入試では形式が変わる可能性もあります。

国公立大学の二次試験での数学ⅡBCの扱い

 国公立文系の二次試験については、新課程になり、主に文系向けの「数ⅡB」が「数ⅡBC」へと変わりました。今回追加された範囲では、「統計」「複素数」が出題されるかが注目すべき点でした。統計や複素数が二次試験でも出題されるとなると勉強時間がより必要となるためです。

 河合塾の調査によると、数学BとCに関して、多くの大学では文系理系ともに出題範囲に大きな変化はなさそうです。

二次試験の数学の主な出題範囲

数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C(文系)
出題範囲 割合
数列・ベクトル 86%
数列・統計・ベクトル 6%
数列・統計・ベクトル・複素数平面 1%
全範囲 4%
数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C(理系)
出題範囲 割合
数列・ベクトル・複素数平面 73%
数列・統計・ベクトル・複素数平面 19%
数列・ベクトル 4%
全範囲 2%

※出典: 河合塾(2023年3月15日現在、河合塾調べ)

 数ⅡBCまでが範囲の大学(主に文系)では、数列・ベクトルのみの出題が86%で、数列・統計・ベクトルの出題は6%、数列・統計・ベクトル・複素数平面の出題は1%と、出題範囲を拡大した学校は僅かでした。なお、数ⅢCまでの理系大学は、数列・ベクトル・複素数が73%、統計まで含めるところが19%となっています。

2025年新課程共通テスト 数学のまとめ

 今回の新課程への変更により、これまでは国公立大学理系の二次試験や私立大学の試験で必要とされていた内容が共通テストの出題範囲になりました。また、分析・思考問題や文量が毎年のように増える傾向にあります。

 そのため、高校1、2年生から標準レベルまでの問題で苦手をつくらないようにし、受験勉強を早くから始めなければ、対策時間が足りなくなる可能性があります。新課程の内容で過去問がないものもあるので、模試形式の実戦的な問題集に多く取り組むのがおすすめです。また、同じではありませんが、「複素数平面」については2006年までのセンター試験の過去問も参考にしてみましょう。

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