塾・予備校には4つのタイプがある
塾・予備校を選ぶ際に気をつけておきたいポイントや、注意点などについても触れておきましょう。塾・予備校は、次のように大きく4つの種類に分けることができます。
・集団授業型
・映像授業型
・個別授業型
・学習管理型
それぞれのタイプごとにメリット・デメリットがあります。特徴をしっかりと把握して、自分に合った塾・予備校を選ぶことが重要です。
各タイプのメリット・デメリット
①集団授業型
集団授業型は、1人の講師が多数の生徒を相手に講義を行う集団型の塾・予備校です。特に大手予備校で見られるタイプで、かつてはこのタイプが塾・予備校の主流でした。浪人生が通うことを想定し、ターミナル駅にある大学の講堂のような広い教室で、いわゆる“カリスマ講師”が複数人の生徒を前に講義形式で授業を行っているケースもあります。ときには100人規模の生徒に教えることも珍しくなく、一人ひとりに合わせたカリキュラムや授業ではない点がデメリットといえるでしょう。
②映像授業型
映像授業型は、講義を映像化してインターネット等を通じて配信し、所定の教室などで生徒に受講させます。今ではこの映像授業型が主流になっており、集団授業型の塾・予備校のカリスマ講師の授業を、地方であってもいつでも受講できるようになっています。ただし、なかには大学受験に関する専門的な知識がなく、映像教材を流しているだけという塾・予備校もあるので注意が必要です。
③個別授業型
個別授業型は、講師と生徒が1対1、もしくは2〜3人という少数の生徒に対して指導を行うタイプです。集団授業型では難しい、個々人の学習レベルに応じた指導を受けることができます。ただし、講師は大学生のアルバイトであることが多く、学生に任せきりになっていることも少なくありません。受験対策も学生の経験に偏っているおそれがあります。
④学習管理型
学習管理型は授業をすることよりも、むしろ受験に関する戦略を伝えたり、勉強の進捗状況等をチェックしたりして、問題があれば改善案をアドバイスするなど、生徒の勉強をマネジメントすることに指導の主眼を置いています。授業そのものよりも結果を出すことを重視している、いわば肉体のパーソナルトレーニングの塾・予備校バージョンといったところです。講師は大学生のアルバイトであることが多いことから、③の個別授業型と同様のデメリットが生じやすいという点で注意が必要です。
これら4つのタイプに加え、新しく低価格のアプリ授業やYouTubeでの無料授業も出始め、どんどん質が上がっています。参考書にも映像授業が付くようになってきました。以前よりも授業が低価格に、より身近になってきて、積極的に活用できれば学力を上げることのできる環境が整ってきています。
とはいえ、せっかく良いものがあっても、自分に合わせた使い方ができていなかったり、勉強をやり切れなかったりすれば、結果を出すことはできません。これら塾・予備校のタイプごとのメリット・デメリットを踏まえて、最も合うものを選ぶとよいでしょう。
いい塾・予備校を見分けるための3つの質問
4つのタイプのうちどれが子どもに適しているのかを見定めて、そのなかからさらに絞り込んで入るべき塾・予備校を選びます。検討の際には、次のような内容を塾・予備校に対して質問してみるとよいでしょう。
① 合格させる自信があるかどうかを尋ねる
「無理です」などと断言されたら、そのような塾・予備校に通わせても意味がありません。ただし、高校3年生の時点で偏差値40の受験生が東京大学を志望しても、ほとんどの塾・予備校が「無理です」と言うはずです。「可能です」と言うようなところは、それはそれで怪しいので、具体案を確認し、本当に信頼できるかどうかをしっかりと確認したほうがよいでしょう。
② 指導方針を確認する
生徒への指導に関して、確固たる方針のない塾・予備校は、教え方が行き当たりばったりになるおそれがあり、期待する成果は得られないでしょう。どの教材を使うのかなど、授業に関する細かな方針は塾・予備校によって異なります。この点に関しては、専門家である塾・予備校の方針を信じて任せてしまってよいでしょう。
③ どのような形で結果を出してくれるのかを聞く
「いつまでに、偏差値をどの程度まで上げてくれるのか」というように、具体的な形で確認しましょう。なお、塾・予備校に入った後に想定していた結果が出ないようであれば、今後はどのように改善を図るのかを示してもらいましょう。その答え方次第では、別の塾・予備校に変えることも検討しなければなりません。
これら3点の他に、受験校選びのサポートといった進路のフォローを行ってくれるのかどうかも確認するとよいでしょう。受験校選定について、塾・予備校・学校は基本的には受け身で、生徒が出してくる志望校に対してアドバイスをするというスタンスです。しかし私はこの受験校の選択こそ、プロの視点が必要だと考えています。
受験校選びは受験方式や配点、傾向、倍率、本人の学力との比較、受験日程などの検討が必要で、なかなか骨の折れる作業です。私は受験校戦略を「合格への起爆剤」と呼び、多くの時間を充てています。同じ学力でも戦略の良し悪しで合否が分かれるのです。
また、子どもが家では勉強に集中できないタイプの場合は、外で勉強できる環境を確保することが必要となります。この場合は、塾・予備校に自習室があるかどうかも確認しておくことをおすすめします。
保護者も塾・予備校の利用者である意識を持つ
塾・予備校に入れた場合、子どもはもちろんですが、保護者もまたその利用者であるという意識を持つことが必要です。受験の制度や大学選びなどについて、わからないことがあれば質問したり、相談したり、アドバイスを求めたりするなど、親も塾・予備校を積極的に利用するようにしましょう。
保護者のなかには塾・予備校はあくまでも子どもが通うところであり、保護者はあまり関わるべきではないと思っているのか、気になることや聞きたいことがあっても何も言わない人がいます。しかし、入学金や毎月の授業料などの名目で、数十万円あるいは数百万円単位の決して安くはないお金を支払うのですから、払った費用分は使い倒すぐらいの気持ちを持つことが必要です。
塾・予備校の利用に関してもう一つおすすめしたいのは、「家でしっかりと勉強をしているのか」「最近悩んでいることはないか」などといった、家庭内における子どもの勉強や生活に関する情報をできるだけ伝えておくことです。
私の予備校でも、特に子どもに関して気掛かりなこと、不安なことなどがあれば教えてほしいと生徒の保護者にお願いしています。マイナス面も含めた情報を家庭と塾・予備校とで共有し、連携することで、子どもの状況に応じたベストな指導を行うことが可能になるでしょう。
塾・予備校は基本的に子どもの味方です。安心して、ためらうことなくいつでもどんどん頼ってください。
学力が高い人と低い人との差は「才能」ではなく「工夫」
ここまで塾・予備校の選び方や活用方法について解説してきましたが、受験で成功するためには「常に考えること」が重要です。受験校の選択、志望校への戦略、勉強時間の増やし方、教材への取り組み方、勉強方法など、目標が決まってからは、それを達成するための手段を考え、実行していきます。
大学受験は「勉強時間の確保+分析・計画・実行」の繰り返しです。ただ問題を解く、ただ暗記するだけでなく、有限な時間のなかで短期間で知識量を増やさなければならず、合格のためにはさまざまな工夫が必要になります。志望校合格のためにとても重要なことではありますが、残念なことにこれらのことを考慮に入れて受験に向き合っている人はあまり多くはありません。
実際に、「自分は頭が悪いからできない」「要領が悪い」と言う人が多くいます。また、「あいつは特別だ」「自分とあの子は頭の構造が違う」など、できないことを能力のせい、自分ではどうにもできないものと考えている人がいます。確かに才能の差もあるでしょう。しかし、今の学力が高い人と低い人との差は何かというと、私は「知識の蓄積量」と「工夫の仕方」の違いであるととらえています。
職業柄、東京大学をはじめとする多くの難関大学の学生と話をしますが、皆やはり何かしらの工夫をしています。しかも何度も試行錯誤し、自分の勝ちパターンを見つけています。また、難関大に合格する生徒の共通点として、科目の内容に関する質問よりも、戦略や勉強法についての質問が多い傾向にあると感じています。
常により良い方法を考えて時間感覚を持つことは、才能などではなく、トレーニングで養っていけます。もしE判定、D判定であれば、常に考え、工夫することを意識してください。まだ自分の力を出し切っていないはずです。まずは考え方を変えることから始めてください。学力は努力で変えられるものです。
塾・予備校を効果的に活用するためには工夫が重要です。 提供されるサービスの使い方を考えて、どのタイプの塾・予備校に通うかを決めていきましょう。
まとめ|自分に合った良い塾・予備校の見極め方
大学受験の塾・予備校のイメージとして、一番に思い浮かぶのは集団授業型でしょう。しかし、現在では予備校の形態も多様化しており、それぞれメリット・デメリットがあります。そのなかから自分が一番活用できる塾・予備校を選んだうえで、効果的な学習方法を試行錯誤していくことが大切です。
生徒も保護者も利用者という意識で、積極的に塾・予備校を利用するようにしましょう。