方法① 積立預金や定期預金の活用
大学進学の費用の確保として堅実なのは、早い段階から貯蓄をしていくことです。
積立定期預金は金融機関やサービスに預け入れの金額を決め、定期的に貯蓄する方法です。預入額に制限が少ないことや、途中で入出金ができるものもありますので、収入によって預入額を増額することも可能です。
定期預金は金額や期間を設定し、定期預金口座に貯蓄していく方法です。預金期間の満期を迎えると、利息を含めてこれまで貯蓄してきたお金を受け取ることができます。
2023年度時点で、大学の進学率は57.7%と毎年増え続けています。半数以上の人が大学に進学している現代、お子様が大学に進学する可能性は昔に比べて非常に高くなっていると言えるでしょう。
そのため、なるべく早いうちから貯蓄を始め、資金を用意することで、ひと月ごとの金銭的負担も少なくなります。将来のために、できるだけ早めに貯蓄を検討するようにしましょう。
※参考: 学校基本調査-令和5年度 結果の概要-
方法② 児童手当制度で支給されたお金を貯蓄する
児童手当制度は、お子様が高校生の年代まで支給される手当です。支給額は下記表の通りです。
児童の年齢 |
児童手当の額 (1人あたりの月額) |
---|---|
3歳未満 | 15,000円(第3子以降は30,000円) |
3歳以上 高校生年代まで | 10,000円(第3子以降は30,000円) |
※児童(0歳から18歳に達する日以後の、最初の3月31日までの間にある子をいいます。以下同じ)を養育している方 ※出典: こども家庭庁 児童手当制度の概要 |
児童手当は、毎年偶数月に、それぞれの前月分までの2カ月分が支給されます。こちらは、お子様が生まれた時、または他の市区町村から転入した際に、現住所の市区町村に認定請求書を提出することで、申請の翌月分の手当から支給されます。
第一子が生まれてから高校卒業まで、この児童手当を貯蓄することで、大学進学、または大学の費用に利用することができます。全額でなくとも、積立預金や定期預金を利用して、こういった手当の一部を活用していくのもよいでしょう。
方法③ 教育(学資)ローンを組む
大学進学に備えて、教育ローンを組むこともできます。教育ローンは、貸与奨学金と同様に大学進学時に必要なお金を借りられる金融商品です。
奨学金と違う点は、給付を受ける対象や返済者が、大学に通う本人ではなく保護者になるというところです。また、お子様の成績等に関わらず借入ができるため、利用する人の必要分を活用することも可能です。
大学は受験時に受験費用が必要になり、入学金や前期授業料も入学前に入金することになります。直前になって受験する大学が増えるなど、イレギュラーな事態には教育ローンを利用するのも一つの手と言えるでしょう。
教育ローンは日本政策金融公庫が運営する「国の教育ローン」と、JAバンクや三菱UFJ銀行など、各金融機関が運営するものに分かれています。国の教育ローンの場合は世帯年収や借入上限額が制限され、保証料がかかる場合があります。
一方、金融機関の教育ローンは、一定以上の収入があれば申し込みができますが、各金融機関により条件が異なります。そのため、利用する際には条件をしっかりと確認するようにしましょう。
方法④ 奨学金制度の利用
大学の費用の捻出によく利用されるのが奨学金です。2022年度の学生生活調査では、55.0%と半数以上の学生が奨学金を受給していることがわかります。
奨学金には大きく分けて、返済不要の給付型の奨学金と、返済が必要な貸与型の奨学金があります。こちらは世帯収入といった家計基準や学力基準によって、どちらの奨学金を受給できるかが変わってきます。
また、日本学生支援機構(JASSO)や大学ごとの独自の奨学金、民間企業の奨学金等、多くの種類があり、大学入学前に予約ができる奨学金なども用意されています。これらの奨学金には必要条件があり、それを満たしていることで奨学金を受けることができます。例えば、前述の高等学校等の1年次からの学力基準や収入・所得基準、資産基準といった家計基準があります。
また、大学ごとの奨学金では、在住の地域条件や採用候補者数、申請期間等も定められていることが一般的です。
入試成績優秀者が受けられる奨学金
大学には学費免除制度が設定されていることがあり、各大学ごとに条件や要件は異なりますが、入学時に必要な入学金や授業料の一部が免除されます。
その中に、入試成績優秀者が受けられる奨学金があります。こちらは入試成績の上位者に給付される奨学金です。条件や金額は大学によって異なるため、志望する大学がどのような学生を対象にしているのか確認してみましょう。
種類 | 入試成績優秀奨学生 |
---|---|
資格 |
一般選抜(A方式)において、各学部成績上位の合格者(対象者約500名※)のうち、入学した者。 ※対象者には、A方式合格通知書にてお知らせします。 |
人数 | 対象者全員 |
給付額 | 授業料年額の2分の1 |
備考 | 入学年度のみ対象 |
※出典: 名城大学 名城大学内奨学金制度 |
1回生 |
・公募は行わず、入試成績の上位者から選考し、合格発表時に採用候補者を決定します。 ・奨学金として割り当てられた予算の枠内で、 A給付(200,000円)とB給付(100,000円)の採用候補者を選考します。 ・A給付とB給付の人数等、詳細は今後検討されますが、 より多くの人に奨学金が給付されるように、B給付のみの採用となる場合もあります。 ・採用候補者は、一次手続きの際に「給付申請書」を提出することで、採用内定者となります。 ・給付方法は、納入すべき学費への充当となります。 ・給付期間は1年(1回生時)です。 なお、2回生進級時には2回生を対象とした「成績優秀者奨学金」に申請することができます(詳細後述)。 ・入試方式を問わず全員が対象となりますが、勤務先が学費を負担する社会人学生は除きます。 |
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2回生 |
・2回生進級時に公募を行います。給付希望者は定められた期間内に出願してください。 ・奨学金として割り当てられた予算の枠内で、 A給付(200,000円)とB給付(100,000円)の採用候補者を1回生時の成績を基準に、上位者から選考します。 ・A給付とB給付の人数等、詳細は今後検討されますが、 より多くの人に奨学金が給付されるように、B給付のみの採用となる場合もあります。 ・給付方法は、申請時に届け出た銀行口座に前期と後期に分けて振り込まれます。 ・給付期間は1年(2回生時)です。 入試方式を問わず全員が対象となりますが、勤務先が学費を負担する社会人学生は除きます。 |
※出典: 立命館大学 奨学金 |
入学前に予約できる奨学金
大学には、入学する前に予約できる予約型の奨学金があります。こちらは経済的に困窮している学生等が成績基準に応じて、入学金の免除や減免、授業料の給付等を受けられる奨学金です。また、条件を満たしていれば、4年間継続して給付されることもあります。
採用候補者数や支給される金額、応募期限等の条件は大学ごとに異なりますので、早めに確認するようにしましょう。
以下で2025年度の奨学金の一例を紹介します。2026年度入学者対象の奨学金については、各大学からの情報を随時確認するようにしてください。
申請期間 | 2024年10月11日(金)~11月8日(金)まで |
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対象 |
明治大学への入学を希望する、 学業優秀(全体の学習成績の状況が、5段階評価で3.8以上の者)でありながらも、 経済的に困窮している受験生 一般選抜(学部別入学試験・大学入学共通テスト利用入学試験・全学部統一入学試験) |
収入要件 |
保護者(父母)の「令和6年度(令和5年分)の所得証明書」記載の収入・所得金額を合算した金額が次の者 給与世帯の場合、 上限収入 (控除前)が、 首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)は400万円、 首都圏以外は700万円 給与世帯以外の場合、上限所得が、 首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)は100万円、 首都圏以外は300万円 |
給付金額 |
1年次、入学諸費用から授業料年額2分の1相当額を減免 2~4年次、在籍年次の春学期中に授業料年額2分の1相当額を本人口座へ給付 |
給付期間 | 4年継続 |
採用候補者数 | 1,000人以内 |
選考結果 | 12月下旬(予定) |
※出典: 入学前予約型給費奨学金「おゝ明治奨学金(おお明治奨学金)」 |
申請期間 |
第1回/2024年11月5日(火)~2024年11月26日(火) 第2回/2025年1月6日(月)~2025年1月20日(月) ※国の制度との併願・併給は不可といたしますので、 当該制度の申請者が本奨学金に申請できるのは、国の制度の採用発表後の第2回申請期間のみとなります。 |
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対象 |
2025年度一般入学試験または大学入学共通テスト利用入学試験で青山学院大学を受験する者 (推薦入試等特別入試利用の場合は不可) |
地域条件 |
東京都(島しょ部を除く)、神奈川県、埼玉県およびび千葉県以外の道府県に 父母(父および母がいない場合は、代わりに家計を支えている者)が居住し、 入学時より本学へ自宅外から通学する者 |
収入要件 |
「令和6年度所得証明書(令和5年分の収入·所得がわかるもの)」に記載の 収入・所得を父母合算した金額が以下の者 1. 給与·年金収入金額(税込):800万円未満 2. その他、事業所得金額:350万円未満 上記1、2双方の収入・所得がある場合には、合算して総合的に判断 |
給付金額 | 年額50万円(給付) |
給付期間 |
原則4年間の継続支給 ※毎年の進級時に学業成績および家計状況による継続審査あり |
採用候補者数 | 約350名(予定) |
選考結果 |
第1回選考結果通知/2024年12月下旬 第2回選考結果通知/2025年2月中旬予定 |
※出典: 受験生向け奨学金制度(地の塩、世の光奨学金) |
方法⑤ 自宅から通学可能な大学へ進学する
受験から入学までにかかった費用は、下の表のように、自宅生のほうがかかった費用が少なく済んでいます。
国公立 | 私立 | |
---|---|---|
自宅生 | 1,380,100円 | 1,671,400円 |
下宿生 | 2,098,800円 | 2,372,200円 |
※出典: 新入生の保護者25,857名から回答「2024年度保護者に聞く新入生調査」概要報告 |
下宿生の場合、住居費やその引っ越し費用、生活費等、自宅から通学するよりもお金が必要になります。どうしても進学したい大学が遠方にある場合は仕方がないことですが、自宅から通える範囲に学びたい学問の学部を設置している大学があれば、自宅通学のほうがお金はかからないので節約になります。
このあたりは、自宅通学と下宿先からの通学のどちらに、どのようなメリット・デメリットがあるのか、家族と話し合いながら決めていくとよいでしょう。
方法⑥ 複数出願で割引を使う
大学によっては、同大学で複数の学部を受験することで割引がされ、1受験あたりの受験料が安くなることがあります。
例えば、中京大学では「3受験pack」という出願方法があり、本来3回受験するとかかる最大90,000円の入学検定料を、45,000円に割引してくれます。また、この出願方法を利用すれば、1受験あたりプラス5,000円で追加することも可能です。
このような制度は中堅大学によくあるので、志望大学がこういった制度を実施しているか確認してみるとよいでしょう。
※参考: 中京大学 入学検定料が50%割引になる入試の受け方って?【3受験Pack】
方法⑦ 入学金を複数出さないようにする
大学に合格した場合には、大学をキープしておくために入学金を支払わなければなりません。ただし、この入学金は基本返金されません。
文部科学省によると、私立大学の入学金の平均額は24万806円(2023年度)です。この支払いが1回だけではなく、受験の方法によっては複数回必要な場合もあります。国公立大学を受験する場合には、私立大学の受験日までには日にちがあるため、最低でも1大学には入学金を納めることになるでしょう。
先に私立大学の滑り止めを受験し、私立大学の本命を後で受験した場合には、両者の受験日が離れていると、滑り止めにも本命にも入学金を納めなければならなくなります。さらにこのケースでは国公立大学(一番の本命)に合格した場合には、私立大学に納付した入学金すべて(2校分)が無駄になることも考えられます。
そのため、受験する大学を前もってよく選定し、入学金を複数出さないようにすることで、無駄なお金を発生させずに節約につなげることができます。
※参考: 令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等 平均額(定員1人当たり)の調査結果について
まとめ
今回ご紹介したように、大学進学までには大きなお金が必要になりますが、前持って準備を進め、さまざまな情報を集めることで進学費用の節約や確保を行うことができます。今回ご紹介したものの中には、条件に該当しないと利用できない制度もありますので、ギリギリになってから焦らないように、事前に大学進学についての準備をしておくようにしましょう。
また、大学にどこから通うのか、奨学金を借りるのかなど、お子様と話し合って決めたほうがよいこともありますので、お金の問題について家族で話し合う時間を取り、納得の上で各ご家庭に合ったお金のやりくりをしていくことをおすすめします。
【参考】
新入生の保護者25,857名から回答「2024年度保護者に聞く新入生調査」概要報告、学校基本調査-令和5年度 結果の概要-、こども家庭庁 児童手当制度の概要 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)奨学金、名城大学 名城大学内奨学金制度、立命館大学 奨学金、入学前予約型給費奨学金「おゝ明治奨学金(おお明治奨学金)」、受験生向け奨学金制度(地の塩、世の光奨学金)、中京大学 入学検定料が50%割引になる入試の受け方って?【3受験Pack】、令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等 平均額(定員1人当たり)の調査結果について