桜蔭中学校を目指す生徒たちの3人のママ

 Aさん:埼玉在住の会社員夫婦です。長女をSAPIXに通わせて桜蔭中学校に合格しましたが、本人の希望で別の共学校に進学をしました。

 Bさん:都内の会社員です。夫が海外赴任でいないためワンオペで、2人の子どもを育てています。次女が早稲田アカデミーに通って桜蔭中学校を目指していますが、偏差値は今65前後ですからどうなるか。本人は女子校志望というだけで、どうしても桜蔭という気持ちはないようです。

 Cさん:地元の中小塾に通って、桜蔭中学校を目指しています。実は、私は塾講師なので学習面のフォローをするつもりでしたが、娘が言うことをきかなくて(笑)。夫はあまりやる気がなくて、使えずに困っています。下に弟がいますが、この子は中学受験をさせない予定です。

桜蔭中学校を目指したきっかけは?

 司会:どうして桜蔭中学校を目指そうと思われたのでしょうか。やはりお嬢さんは勉強が得意だったんでしょうか。

 Aさん私が桜蔭出身なんです。在学中は学校に反発もしましたが、大人になってからやっぱりちゃんと女子を育ててくれる学校だと痛感し、娘も入れたいと考えました。それで合格実績が高いSAPIXに小学4年から入れました。

 Bさん:うちの場合、長女は日能研から中堅の伝統校に入りました。夫が車で夜お迎えに行ってくれてたんですが、現在は彼が海外赴任でいないので、家から一番近い塾ということで、近所の早稲田アカデミーに小学3年から入れました。

 そうしたら、小学4年の夏前に偏差値が65を超えて、校舎長からやんわりと「桜蔭を目指したら」と勧められたので、一応目指しています。目標は高いほうがいいかと思って「第一志望は桜蔭」と私が言っているだけで、実際の志望校はどうなるかわかりません。

 Cさん:私は塾講師ということもあり、娘は桜蔭に向いていると思うので受験させるつもりです。勤務先とは違う塾に通わせており、娘の塾では自分が講師ということを隠しています。娘にも口止めしています。

中学受験で大学入試相当を求める桜蔭中学校の入試

 Bさん:娘さんが「桜蔭に向いている」と思ったのはどういう意味ですか? 勉強が得意ってことでしょうか。

 Cさん難しい問題を解くのが得意ってことです。雙葉中学校や白百合中学校は基礎的な問題を出します。それはコツコツ努力できる真面目な子が欲しいってことなんですよ。娘はコツコツタイプではないから、桜蔭のほうが居場所がありそうです。

 Aさん桜蔭にもコツコツ努力する子はいましたが、そうじゃない子も目立ちましたね。授業中寝ていて先生に怒られているのに、テスト前だけ覚醒してそれなりの成績を取る子とか、遊び人だったのに高校3年になったら猛烈に勉強して現役で東大に入った子とか。今思うといい学校でした。

 司会:どのあたりがいい学校だと思われますか?

 Aさん謙虚さや誠実さを叩き込まれました。私も中学受験が終わったばかりの頃は「自分は頭いい!」と勘違いしていましたが、周りはもっとすごい。東大の理Ⅲに受かる学力があるのに「医学部に興味がないから」と、違う学類に進学する子もいました。そういうクラスメートがいる環境だと、自分の身の程が高校生の時点でわかりますからね。

 Bさん:すごい世界ですね。

 Cさん国語の入試問題の読解量は、「大学入試相当」といわれることがあるほどです。あれを解ける小学生は特別な子たちですよ。東大で「性別は3つある。女と男と桜蔭」といわれているって話がありますが、まさにそんな感じです。

 Aさん:そうなんですよ。ホント、女子として扱われないんです(笑)。東大は女子が少ないから割とチヤホヤされるんですけど、桜蔭生は例外。でも考え方が男子に近いので、男子に同化していました。

渋幕や渋渋が桜蔭より上位に?

 Bさん:そうなんですか。うちの娘は男子が苦手なので、女子校に行きたいっていう気持ちだけはハッキリしています。Aさんの上のお嬢さんは共学に進学されたそうですが。どうしてなんでしょうか?

 Aさん:文化祭での印象ですね。ある共学校の文化祭が楽しかったので、「ここに進学したい」と言い出して。1月に浦和明の星に受かっていたから、2月は1日が桜蔭中学校、2日目から3日連続で豊島岡中学校というスケジュールを考えていたんですが、本人が違う学校を受けると主張するので、予定が狂いました。

 Bさん:受験校は全部合格されたんですか?

 Aさん:1月の渋幕(渋谷教育学園幕張中学校)は残念でした。うちからは通えないし、過去問もちょっとやって、「クセがある問題で解けないや」と娘は笑ってたんですが、案の定不合格でした。

 Cさん今、女子の最難関は渋幕ですからね。渋渋(渋谷教育学園渋谷中学高等学校)も偏差値だけだと、もう桜蔭中学校より上になりつつあります。

 Aさん:娘の友達は桜蔭中学校に受かったのに、埼玉から渋幕に通っていますよ。

 司会:「女子の最上位層の第一志望は多様化している」と大手塾も入試分析会で話していますね。

中学受験の変化が、校風に影響も?

 Aさん:桜蔭の校風も、ちょっと私たちの頃とは違ってきているようにも思います。大人に管理されて勉強をしてきた感じの子が増えているというか。

 Bさん:うちの次女は宿題を一人でやっていますよ。上の子は日能研の関東系だったので宿題がそれなりに多かったんですが、次女はもっと量をこなせていますね。次女はYouTube依存なので、「宿題が終わったら動画を見せてやる」と言うと頑張れるみたいです。

 Cさん:それはかなり優秀ですよ。中学受験に向いています。うちの子は得意な科目しかやらないので大変です。社会が苦手で「どこで米がとれるかなんて覚えてなんの意味があるのか」と反抗しています。 

 Aさん:頭がいいからそういうふうに疑問を感じるんですよね。

塾の勉強や宿題は、取捨選択が大事

 司会:桜蔭中学校を目指すとなると、勉強はやはり大変でしょう。

 Cさん:いや、男子御三家に比べたら楽ですよ。今、女子で競争が激しいのはボリュームゾーンであって、最難関は楽になっています。桜蔭中学校も入試問題を簡単にしてますし。

 Bさん:うちの次女は最近、勉強が大変になってきました。宿題が終わらなくて、YouTubeが見られない日も出てきて、泣いています。人生長いんだから、週に何日かはYouTubeを見なくてもいいと思うんですが。

 Aさん:どこの塾でもそうだと思いますが、桜蔭中学校を狙うぐらいの学力だと上位クラスにいるから、男子の御三家対策に巻き込まれるんですよね。私は「そんなに上のクラスにいなくてもいい」と気づいて、宿題は基礎的な問題だけやらせるようにしていきました。

 もちろん、クラスが落ちて本人は不安がってましたが、「大丈夫だよ」と励まして(笑)。小学6年の時はαの底辺にいたんですが、宿題は十分に難しかったですね。

 Cさん:SAPIXのαの底辺は、中学受験全体からしたら最上位ですから。私は塾講師なので宿題の取捨選択ができますが、普通は無理ですよね。みなさん真面目だから、全部やろうとして疲弊していくという。

 Aさん:うちは伝家の宝刀、高級個別指導を使っていました。1コマ15,000円ほど取られますが、宿題の取捨選択もしてくれて助かりました。

 Bさん:1コマ15,000円!? 月6万円ですね。

 Aさん:6年生の時は週2日ですから12万円でした。

 Cさん:もっと使っている家庭も多いですよ。SS-1に週5日通わせるとか。うちは個別指導は使わない方針でしたが、社会をやらせるのに、安いところに通わせようかと検討中です。娘は桜蔭に合うので入ってほしいですね。

 Bさんお二人とも桜蔭中学校の良さを理解された上で、通わせたいというお考えだと知って、やはりいい学校だと思いました。娘が順調にいけば受験させたいと思います。今日は勉強になりました。

 司会:ありがとうございました。

桜蔭の座談会を終えて

 女子の共学志向が高まっている。しかし、女子の私立一貫校の大学進学実績は桜蔭が圧倒的な結果を出し続けている。その理由の一つには入試問題があるようだ。論理的な思考力を求める。一方で、中学受験はボリュームゾーンが主流になっているから、ハードルは下がっているのかもしれない。最難関女子校としての伝統を理解した上で進学を目指している受験生や保護者には、ぜひ頑張ってほしいところだ。 *プライバシー保護のため設定やエピソードをアレンジしております。