42年ぶりに明治大学に新付属校が誕生
2026年度の首都圏中学入試の大きな話題のひとつに、日本学園中学校・高等学校が明治大学の系列校となり、明治大学付属世田谷中学校・高等学校に校名変更・共学化があります。明治大学付属校(以後、付属校・系属校・系列校・関係校をすべて付属校と記します)としては、1984年開校の明治大学付属八王子中学・高等学校(現校名)以来となります。
日本学園中学校・高等学校は、1885年創立の伝統ある男子校でしたが、2023年度中学入学生から付属校推薦入試で明治大学へ入学可能となったことから、【図1】のように入試難易度が大きく上がりました。これは、近年GMARCHで付属校化した中央大学附属横浜、青山学院横浜英和、青山学院大学付属浦和ルーテル学院の入試難易度変化よりも大きな変動です。
【図1】近年、付属校化した私立中学の偏差値変化

これで、明治大学の付属校は計4校となりますが、明治大学付属明治(合格可能性80%、偏差値73)、明治大学付属中野(同68)、明治大学付属八王子(同65)に対して、明治大学付属世田谷(同65)は、開校前から明治大学付属八王子と同じ難易度になっています。2025年7月17日現在、カリキュラムや付属校推薦基準の詳細等は未発表ですが、追加の情報公開によりさらに難易度が上昇する可能性が高いと、個人的には見ています。
共学校であり、京王線明大前駅から徒歩5分と交通の便が良く、明治大学付属校の共学校としては都内で最も東に位置しており、受験生を集めやすいからです。
大学付属校人気は継続する
明治大学の広報担当の副学長にお話を伺ったところ、明治大学は早慶・GMARCHの中で、一般選抜による入学者の割合が多い大学なのですが、今後は非一般選抜による入学者の割合を増やして、多様な学生を集めたい意向があるそうです。そして今回の付属校化は、少子化の中でも、優秀な学生を確保するための方策のひとつだということです。
これは明治大学に限ったことではなく、他の早慶・GMARCHも、付属校からの入学者を中高時代から確保して、付属校出身者には大学でも中心的な存在として活躍してほしいという思いがあるようです。
一般に大学付属校を第一志望とする中学受験生は、併願校も大学付属校を選ぶ傾向にあります。2026年度の大学付属校の首都圏中学入試は以下の日程で実施予定です。
【図2】早慶・GMARCH付属校の2026年中学入試日程(帰国入試除く)

従来は、「2月2日はGMARCH付属の日」と呼ばれていましたが、今回の明治大学付属世田谷の参入により、(午前入試に限れば)2月1日・2日とも8校となりました。首都圏模試2025年7月の合格可能性80%偏差値を見ると早慶・GMARCHの偏差値はおおむね高止まり状態で、付属校人気は続いています。
大学付属校選びの7つのポイント
筆者は2024年から2025年にかけて、首都圏の早慶・GMARCH付属中高をすべて訪問しました。そこで今回は、大学付属校を目指す受験生・保護者に注意していただきたい7つのポイントを挙げてみました。
❶同じ大学の付属校でも校風が異なる
早稲田実業学校の校長先生は大学でも指導しているのですが、「早稲田実業学校と早稲田高等学院の出身者は見分けがつく」とおっしゃっていました。育ってきた環境や教育方針によってそれだけ違いが出るようです。
また、同じ学校内でも中学時代はある程度面倒を見るものの、高校になると生徒を大人扱いし、自己判断と自己責任を求める学校もあります。ある程度面倒を見てもらいたいタイプの子どももいますし、放任型を好むタイプの子どももいます。だからこそ、併願する学校も含めて学校説明会や入試説明会などのイベントに足を運び、中学・高校双方の生徒の様子や先生の対応を確認しておくことをお勧めします。
❷内部推薦の基準は、同じ大学でも高校によって異なる場合がある
内部推薦を受ける要件としては、高校での成績を最重視する学校が多いのですが、高校1~3年生の成績が内部進学に影響する学校から、高3時の成績のみが対象の学校もあります。また、各学年で成績の重み付けを変えて評価する(一般的には3年生のほうが重い)学校もあります。
成績が関係するのは高校からだからといって、中学の学習をおろそかにしていると、基礎学力の不足から高校の授業についていくのが大変になるのは言うまでもありません。さらに、中学から高校に進学する際に一定の成績や英語資格検定の基準を設けている学校もありますし、高校では進級できない生徒がいる付属校もあるのです。
系列大学への内部推薦基準に、外部英語資格検定試験で一定以上のスコアを求めている場合も少なくありません。内部進学対象者となる最低基準のほかに、「●●学部の場合は英検△級以上」という基準があったり、「英検□級以上は加点」というような制度を設けている学校もあったりします。
また、学力試験を課す学校もあり、実施学年・回数・教科(科目)数も学校によって異なります。高校が独自に問題を作成する学校、系列校共通の独自作成問題の学校、全国的な模擬試験を使用する学校もあります。
法政大学付属のように内部推薦基準が同じ大学もあれば、明治大学付属の既存3校のように各校ごとに基準が異なる場合もあります。明治大学付属世田谷の基準は2025年7月17日現在、大学側と交渉中であり未発表ですが、基準項目は高校3年間にわたる推薦得点(学業成績や探究の成績など)、英語資格検定(英検2級以上)、模擬試験の成績等で、学部・学科の選定に際しては、各種検定などの成績を推薦得点に加点して、その結果をもとに決定することになりそうだと谷口哲郎校長はおっしゃっていました。
なお、内部推薦基準や推薦枠は毎年見直しされているので、高校入学(進学)年度によって基準が異なる場合があります。インターネット上に上がっている情報の中には古い情報が残っている場合もありますので、詳しい基準は直接学校に問い合わせることをお勧めします。
❸内部推薦基準を満たしても全員が希望の学部・学科に進めるとは限らない
希望する学部・学科に進学できるかどうかについても、付属校により異なります。多くの場合は大学側から学部・学科別に受け入れ枠が示され、上記❷の成績順に希望学部・学科を選択していく方法をとる付属校がほとんどで、希望学部・学科への入学が(ほぼ)保証される付属校は少数派です。
一般的には系列大学の看板学部へ希望者が集まる傾向があるようですが、GMARCHでは理系学部が文系学部ほど充実していない大学も少なくなく、理系学部の内部推薦が激戦になる付属校もあります。文系学部の場合はおおむね第三希望までの学部に進学できる付属校が多いようですが、文学部など学科ごとに推薦枠を提示する大学の場合、1学科当たりの推薦枠は少人数となるため、希望通りの学科に進めない場合もあるようです。
また、付属校の先生方に伺うと、年によって志望する学部・学科に偏りが出ることがあり、「前年は内部推薦枠が余ったのに、今年は枠以上に志望者が集まった」というケースもあるようですので、日頃から上記❷の順位を高める努力をしておくことが、進路実現の可能性を高めると言えるでしょう。
❹進路変更をする場合にはリスクが生じる
12歳の段階で「〇〇学部に行きたい」「将来〇〇になりたい」といった夢や希望を持っていても、中高6年間での体験や学び、さまざまな人との出会いによって、大学で学びたい学問や将来やりたいことが変わる子どもは結構います。6年後の子どもが学びたい学問系統が、系列大学に設置されていない場合もあります。その場合は、系列以外の大学を目指すことになります。
しかし多くの付属校は、系列大学への進学を前提に(内容面でも進度の面でも)カリキュラムを組んでおり、大学入試一般選抜に対応した指導を行わない(「外部受験対策は塾や予備校でやってください」というスタンスの)付属校も少なくありません。一方で立教大学新座のように、高2から1~7組は内部推薦クラス、8組は他大学進学クラスというようにクラス分け対応している学校もあります。
進路変更をする場合、大学付属校の中には他大学の指定校推薦枠を持っている場合も少なくありません。また、立教女学院のように、付属校在学中に行った探究活動や書き上げた本格的な論文を武器に総合型選抜での進学者が多く、他大学進学者も含めて年内に大半の生徒の進路が決まる学校も存在します。
❺内部推薦権を確保したまま他大学を受験できる付属校とできない付属校がある
他大学を受験する場合は内部推薦権を放棄しなければならないのは、早稲田大学(日本医科大学医学部指定校推薦は除く)、慶應義塾大学、学習院大学、青山学院大学、立教大学の付属校です(2025年度現在)。
明治大学、中央大学、法政大学は一定の条件付きで内部推薦の権利を所持したまま他大学を受験できます(同)。一定の条件とは、例えば「国公立大学は無条件で可能だが、私立大学の場合は系列大では学べない内容である場合に限る」「系列大学への内部推薦が第一志望の生徒よりも優先順位が下がる」「模擬試験で〇回以上△判定以上を取っている場合は認める」といったものです。
❷で触れた通り、基準は見直されていきます。多くの付属校では高校進学前後に生徒・保護者に基準の説明がありますので、その際に確認するとよいでしょう。
❻内部進学率が高いほうがお得?~内部進学率の見方
【図3】は各付属校の系列大学への内部進学率の推移を示したものです。
【図3】首都圏大学付属校の内部進学率

各付属校によって比率は異なりますが、これは系列大学とのつながりの強さを示すものとは一概に言えません。例えば、1行目の早稲田高校は近年48~49%で推移していますが、実は早稲田大学からの推薦枠が余っている状態が続いているため、推薦枠を広げる交渉をしていないそうです。2025年春の卒業生のうち早稲田大学推薦進学者は146名でしたが、東京大学24名を含む国公立大学に68名、私立医学部医学科に10名進学と(これらに加えて、いわゆる浪人を選択する生徒もいます)、他大学志向が強いのです。
また、明治大学八王子は2025年春の卒業生310名のうち、明治大学への推薦権を得た生徒は294人(95%)ですが、実際の推薦進学者は283人でした。推薦権を得ても行使しない生徒に加え、国公立大学進学やいわゆる浪人を選択して明治大学に進学しない人もいるため、表の数値より低くなる場合があるのです。
そして【図3】を横に見ていくと、年によって内部進学率は、その年の卒業生の志望状況に応じて上下する場合があることがわかります。このため、どれくらいの生徒が内部進学するのかを調べる場合は、単年度だけではなく複数年度の実績を見ることをお勧めします。経年比較して変化幅が小さい付属校と大きく伸ばしている付属校がありますので、この数値は付属校選びの参考になるでしょう。
明治大学世田谷は、卒業生の約70%以上が明治大学へ推薦入学できる体制を構築することを目指していくと発表しており、既存の明治大学付属校3校よりも内部進学率は低いですが、同校卒業生の明治大学での(GPAなどの)活躍次第によって、推薦枠が今後増えていく可能性もあります。
❼大学付属校=エスカレーター式とは言えない
大学付属校というと、「エスカレーター式」に楽に大学に進学できるというイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、各付属校に足を運んでみての感想は、付属校に入学すれば、何もしなくても大学に運んでいってくれるわけではないということです。確かに、系列大学への階段は用意されていますが、その階段を上っていくのは生徒自身なのだという印象です。
特に中学段階では、基礎学力をつけるという意味で、かなり丁寧に宿題などを課している付属校は少なくなりません。進学校と異なり、学ぶ進度はそれほど早くなくても、学ぶ深度にはこだわりがある付属校が多いように思います。
高校段階では、大学入試対策を効率よく行う進学校とは異なり、特定の教科や科目に大きなウエイトを置くというよりも、幅広い教科・科目を学ぶカリキュラムを設定している付属校が多いので、嫌いな教科・不得意な科目であっても「捨てる」ことができず、まんべんなく学び、一定の成績を取る必要があります。また、学校の成績だけではなく、実力テスト、英語資格検定、探究活動、卒業論文などを課す付属校もあります。
早慶・GMARCHクラスでは、大学側も付属校から推薦された生徒の成績面や活動面で一定以上の質を求めているため、(エスカレーターのように)他人任せでのんびりしているばかりでは、系列大学の入り口に届かないのです。このため、自ら学んでいく(階段を上っていく)姿勢が必要になってきます。大学付属校の多くでは、みな同じ大学を目指しているので、仲間同士で助け合ったり教え合ったりしながら階段を上って成長していける点は、付属校の良さのひとつと言えるでしょう。
大学附属校はコスパやタイパが悪い?
早慶・GMARCH付属校の難易度はおおむね上昇・高止まり傾向にあり、人気が衰えておらず、2026年度入試も激戦になることがわかります。各校の偏差値もすべて65~77の範囲です。この辺りと同じ偏差値の進学校には、東京大学をはじめとする難関国立大学や医学部医学科、海外大学などへの合格実績が豊富で、一般選抜などで早慶・GMARCHに、余裕をもって合格できる受験生が多数在籍している学校が数多くあります。中には早慶・GMARCHの指定校推薦枠を持っていても、枠が余る学校もあります。
このため「中学入学段階で大学進学先を早慶・GMARCHに決めてしまうのはもったいない」「(一般に付属校は授業料等の学費は高めで)中学から通うとするとコスパが悪い」と考える受験生・保護者も少なくありません。確かに、中学受験段階で早慶・GMARCH付属校に合格できる学力を持っている受験生ならば、御三家をはじめとする難関進学校も十分狙えます。そして、中学入学後から大学受験を見据えて学習を積み重ねれば、入学した難関進学校がターゲットとしている大学へ合格する可能性は高くなると言えましょう。難関進学校のカリキュラムと比較すると、大学付属校のカリキュラムは余裕がある傾向にありますので、確かに「タイパが悪い」と見ることもできます。
一方で、大学付属校には付属校なりの良さがあります。系列大学との連携で、中学時代から各学部でどんなことが学べるのか大学教員から説明を受ける、大学の実験室を見学する、中高生用にカスタマイズされた模擬講義を受けられる、大学生や大学院生と一緒に探究活動ができる、将来の学びを意識して学問への興味関心が高まるなど、現在の学習意欲にスイッチが入る機会が一般的な進学校よりも多く用意されています。高校段階では大学の講義に出席して大学の単位を取得したり、大学生と資格取得のための勉強ができたりする付属校もあります。
また、文系学部に進む生徒でも数学Ⅲ・Cの履修が必須だったり、第二外国語の履修が必須だったりと、大学入試には直接関係ない教科・科目を学んで教養の幅を広げておくことは、将来の予測が困難なVUCA※の時代において決して無駄なことだとは言えません。
※現代の特徴である、変化(Volatility)、不確実(Uncertain)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)の頭文字をとったもの
まとめ|付属校は勝ち組か負け組か
中学から入学した場合、中高の6年間は長いのです。やりたいことをトコトン突き詰めていったり、いろいろな校内外の活動にチャレンジしたりすることも、付属校は進学校よりやりやすい環境だと思います。何をやる・やらないにしても自分で決めていくわけですから、そのような自己決定の中から「自分の軸」を定めていく機会となります。
6年の間には良い時も悪い時もあり、中だるみする場合もあるでしょう。失敗したり悔しい思いをしたりすることもあるでしょうが、苦労も失敗も糧にして、学業面での遅れが出ても取り戻しがしやすいのは、進学校よりも付属校だと個人的には思います。このような点から考えると、付属校は必ずしもコスパやタイパが悪いとは言い切れません。
学校選びは、受験生や保護者の教育観に左右されます。進学校が良いのか付属校が良いのかも、各家庭によって正解は異なってきます。子どもによっても向き不向きがあります。併願校も含めて受験校を決める時期になってきましたが、受験生や保護者が納得できる学校選びをしていただきたいと思います。