ザッカーバーグがいつもグレーのTシャツを着ている理由

 故・スティーブ・ジョブズ氏のトレードマークといえば、黒のタートルネックだった。氏は何十着も同じ黒のタートルネックを所有し、10年以上毎日同じ服を着ていたそうだ。フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏もいつも同じグレーのTシャツを着ている。

 彼らはなぜいつも同じ服を着るのか。ザッカーバーグ氏がその質問に「判断の数を減らすためだ」と答えたエピソードは有名だ。

 つまりその日着る服を選ぶような些細なことでも、「判断」は精神エネルギーを消費する。それならば、いつも同じ服を着ることにすれば判断のエネルギーを節約でき、もっと大事な判断のためにとっておけるということだ。ちなみにオバマ米大統領も同様の理由で毎日同じスーツを着るのだそうだ。

 もちろんジョブズ氏やオバマ氏は、毎日同じ服を着るだけでなく、並外れた努力を通じて、世界的大企業のCEOや米国大統領に必要とされる判断力を鍛えてきたにちがいない。

 大会社のCEOや大統領でなくても、人は毎日さまざまなレベルの判断を行い、問題解決を繰り返しながら仕事や生活をしている。自分一人のことを決めるならまだよいが、組織全体の方針を決めたり、大きなビジネスに関わる意思決定をする場合は、たくさんの情報をもとに総合的な判断をしなければならない。周囲に反対された場合は説得することも必要だ。ビジネスパーソンは皆、日頃から判断力を鍛えておいて損はない。

 本書では、「未処理箱(インバスケット)」に入れられた多数の未処理案件を、限られた時間の中で、より良い判断を下して処理できるかどうかを評価する「インバスケット」というビジネスゲームを詳しく紹介している。

トップエリートだけが持つ「判断力」とは?『9%のトップエリートがやっている最強の判断力』
鳥原 隆志著
WAVE出版
256p 1500円(税別)

 インバスケットでは、たとえばある病院の院長になったつもりで20件の未処理案件を1時間で処理する、というように、架空の想定で案件処理を行う。その際には判断の内容の正しさよりも、正しい判断プロセスで処理できたかどうかを評価する。つまりインバスケットとは、判断のプロセスを学ぶゲームなのだ。

 著者の鳥原隆志氏は、大手流通業にて、精肉や家具ワインなどさまざまな販売部門を経験。その後スーパーバイザー(店舗指導員)として店舗指導や問題解決に従事していた頃、昇進試験の一環としてインバスケットに出合い、研究とトレーニングを開始した。その経験と問題解決スキルを生かし、株式会社インバスケット研究所を設立。代表取締役でありながら自身もインバスケットコンサルタントを務める、インバスケットの日本における第一人者だ。