地獄のような「引きこもり」の日々を送りながら、ひょんなきっかけから、アーティストとして“社会復帰”できた人もいる。

 前々回の当連載で紹介した、イラストレーターのKacco(カッコ)さん(43歳)。「引きこもり」や心の病などをカミングアウトした人たちが所属するプロダクション「K-BOX」の主宰者だ。

仕事中に突然、目まいや吐き気…
入院するも「摂食障害」で体重は激減

 Kaccoさんが引きこもったのは、28歳のとき。阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などが起きて、日本が漠然とした不安感に包まれていた95年頃のことだ。

 転職を繰り返した末、宅建の資格を取り、不動産関係の会社に勤めていたKaccoさんは、仕事中、目まいや吐き気、頭痛などに襲われるようになった。

 いまから振り返れば、そうした症状は、小さい頃から抱えていた。しかし、症状の出るスパンがだんだんと短くなってきて、ついには週に何度も現れるようになるなど、仕事どころではなくなってしまったのだ。

 そこで、内科で診てもらったものの、原因はわからずじまい。神経内科へ行ってみても、「どこも異常がない」といわれた。

 その後、紹介された脳外科に検査入院。仕事も辞めた。しかし、原因はやはりわからなかった。

 病院の食事は、食べては嘔吐の繰り返し。入院生活は長くなった。

 そのうち、食べ物に対する恐怖感が強くなり、食事を運ぶ台車の音がゴロゴロと聞こえてくると、鳥肌が立った。そして、動悸がしたり、気分が悪くなって倒れたりした。やがて、点滴で対応できる限界まで、体重が落ちた。

 結局、Kaccoさんが紹介された先は、大きな病院の精神科。まず「摂食障害」と診断され、次に「そううつ病」や「パニック障害」などともいわれた。

 入院生活は、通算で1年7ヵ月にも及んだ。しかし、地獄のような日々は、退院してから始まった。