地元の喫茶店で聞いた
秋田で自殺が多い意外な理由

医師の6割が「ストレスチェック」の効果に懐疑的なワケ昨年末からストレスチェックが義務化されていますが、果たして社員のメンタル不調を防げているのでしょうか

 9月10日は世界自殺予防デーだった。これは2003年に世界保健機関が定めたものだが、日本においても世界自殺予防デーにちなみ、2007年以降、9月10日からの1週間が自殺予防週間とされている。そんなわけで、自殺予防週間は終わってしまったが、今回はそのあたりを少し考えてみる。

 突然だが、日本で自殺が多い月をご存じだろうか。ここ数年、自殺者が最も多いのは3月と5月だ。私はてっきり秋から冬にかけてが一番多いものだと思っていた。少し前の、旅先での出来事が原因だ。

医師の6割が「ストレスチェック」の効果に懐疑的なワケ参照:警視庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等(平成28年3月内閣府自殺対策推進室)
拡大画像表示

「なんで秋田県が自殺率高いかわかる?」

 2年前の春のこと。日本三大花火大会の一つ「大曲の花火」の会場である秋田県大仙市の大曲を私はあてどなくぶらついていた。岩手県で2日空けて用事が続くという妙なタイムスケジュールのために暇を持て余し、鉄道の旅に出かけ、「あ、何か聞いたことある地名だ」ということで大曲に降り立ったのだった。

 花火の街を打ち出している大曲駅周辺をとぼとぼ歩いても、当然そんな時期に花火なんか打ち上げないし、そもそも真っ昼間だ。うろうろし飽きて喫茶店に入ったところ、「このあいだ、笑福亭鶴瓶がロケでうちに来たのよ」と自慢された。その後、私が南国生まれだと知った喫茶店のママに投げかけられたのが、秋田県の自殺率の高さに関する問いだ。ちなみに、2015年の秋田県内の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数、内閣府調べ)は全国ワーストである。

 ぼーっとしようと思って立ち寄った喫茶店で、いきなり「自殺」という単語が出てきて狼狽しながら「え、冬寒くて嫌になるからですかね」というようなことを言ってみると、「違う違う。花火を見るからよ」という答えが返ってきた。こっちはちんぷんかんぷんだが、常連っぽいおじさん、おばさんが「そうだそうだ」とばかりにうなずきながら話に加わってきた。

 毎年8月末に行われる花火大会が終われば、あっという間に冬が来る。花火を見たがゆえに、これからやってくる冬の厳しさがより一層つらいものに感じられ、死を選ぶというのだ。ほんまかいな。店にいた人たちは「花火を見ると自殺してしまう」と主張するくせに、「見たことないならぜひ一度見に来るべきだ」としきりに勧めてきた。ご当地ギャグですか。

 ちなみに、全国の統計を調べたついでに、気になって秋田県の傾向もチェックしてみたが、秋以降に急激に自殺者が増えるということはないようだ。やっぱり花火が原因じゃないじゃないか。