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性犯罪を含む数々の犯罪を、その裁判を傍聴することで観察しつづけてきたライターの高橋ユキさんと、性犯罪加害者更生プログラムの専門家である精神保健福祉士、社会福祉士の斉藤章佳さん。両氏が2016年の性犯罪をふり返る対談、後編は今春発覚した朝霞少女誘拐監禁事件から始まった。(構成/フリー編集&ライター 三浦ゆえ)

「自分が教えてあげる」
小児性犯罪者の深刻な認識異常

斉藤 私が所属する榎本クリニックで10年前から続けている性犯罪者再犯防止プログラムは、一度罪を犯した加害者にもう二度と性犯罪を繰り返させない、つまり再犯防止が主な目的ですが、受講者のなかには小児性犯罪者も少なくありません。

高橋 小児性犯罪というと、その対象の定義は?

斉藤 基本的には被害者が13歳以下。彼らは小児性愛障害にあたるとされていて、アメリカ精神医学界が発行しているDSM-Vによると、少なくとも6ヵ月にわたり、思春期前の子ども、または複数の子どもとの性行為に関する強烈な性的に興奮する空想、性的衝動にとらわれている、または行動が反復すると定義されています。朝霞少女誘拐監禁事件の被害者は事件発生事、13歳でした。逮捕された寺内樺風も今年で23歳と若いですが、小児への性的関心は早くから自覚されるケースが多いです。10代のときからというのも珍しくありません。

高橋 彼は監禁したのはごく初期だけで、その後の約2年間は少女を自由にさせていたと主張しています。むしろ恋愛関係にあるつもりだったとも……。

斉藤 性犯罪者の多くに顕著な「認知の歪み」が認められますが、小児性犯罪者は特にその深刻度が大きい。自身の行動は児童に対する純粋な愛情ゆえ、と思っている加害者も多いです。もしくは、教育的指導と称して児童に接していると主張する者もいます。

高橋 それは、自分がその子を育てるという意味ですか?