経営×経理

米津 私の実感としても、まさに「年商20億円」がクラウド会計を導入してメリットが大きい会社規模の上限だと感じます。どれくらいの規模の会社まで導入しているのですか?

実島 うちの事務所での上限は年商30億円くらいです。Eコマース企業で、取引数が月当たり数万件という顧問先でも、問題なく機能しています。

土井 飲食業のように現金取引の多いところでは、どうされているのでしょうか?

実島 飲食や小売業では、売上を日ごとに銀行入金してもらうようにしています。小口現金を置かず、どうしても必要な支払いは社長さんや店長さんがいったん立て替えた後で精算してもらい、レジから絶対にお金を抜かないようお願いしています。飲食業に限らず、基本的に中小企業で経理の専任者がいない企業では、小口現金は設けないよう伝えています。交通費の現金精算もやめてもらい、月に一度、給料と一緒に振り込むようにして、銀行取引から入出金を追いかけられるようにしているわけです。

他部署と兼任している経理担当者は
業務時間が「5分の1」になる例も

 会計にかかるコストダウンの効果が著しいが、実はそれだけではない。企業の人員構成にも効果を生む可能性を秘めている。

土井貴達(どい・たかみち) 1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

土井 そもそも、企業側がクラウド会計導入で最初に感じるメリットとは何なのでしょうか?

実島 最低でも年商が2億円くらいないと経理の専任者は置きにくいですし、経理担当者でも、総務や庶務と兼任しているケースが多いですよね。なので、「その中の経理の仕事が大幅に軽減される」と伝えています。経理業務にとられる時間が5分の1に減ったという企業もあります。私は以前から顧問先に自計化(企業が自ら会計処理をすること)を進めていましたが、忙しくて申告直前までなかなか入力していただけないケースがほとんどでした。そのため、経営者やその奥様が経理をやっている会社も含めて、すべての顧問先にクラウド会計を入れてもらうようにしました。クラウド会計だと、銀行口座と連携させるだけで8、9割方の経理処理ができるわけですから。

米津 夏休みの宿題のように、申告前にねじり鉢巻きでやる必要がなくなって、スムーズな処理ができるようになると。

実島 そのほか、申告前に当期の業績が把握できていないために、フタを開けると500万円の納税が必要になったり、大赤字で銀行から融資を受けられない、などということもなくなるでしょう。

Special Columns

土井貴達 どい たかみち

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

米津良治 よねづ りょうじ

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

河江健史 かわえ けんじ

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。


「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?

2012年頃に登場し、わずか5年で100万社以上の企業が導入している「クラウド会計」。GmailやDropboxがあたりまえのようにビジネスの現場に普及しているように、今後、会計・請求・給与・経費精算などのバックオフィス系だけでなく、 顧客管理や在庫管理などあらゆる経営リソースがクラウド化していくことは間違いないと見られている。本連載では、クラウド会計をどう活用するか、企業の事例を中心に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』(ダイヤモンド社)の著者の3人の税理士がインタビュアーとなって紹介する。

「「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?」

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