経営×経理

実島近い将来、クラウド会計が普及することで、自社で管理する設備内に情報システムを構築する従来型のオンプレミスの会計ソフトは消滅するでしょう。でも、たしかにそのことをなかなか現実的な話として理解してもらえません。本当は「これからの時代はバックオフィスを自動化し、意思決定のスピードを上げて会社経営の生産性を上げることが重要で……」と大上段から説明したいのですが、経営者の方々の心にあまり響かないようなのです。そこでカギになるのは、会計事務所と顧問先との「信頼関係」だと感じます。クラウド会計のサービスを比較検討して、選定し、自社に適した形で運用するところまでを導入企業側だけでやりきるのは非常に難しいのが実情です。クラウド会計は月額3000円程度からと安価に導入できますし、弊社では長年クラウド会計を使い続け、顧問先にとって間違いなくメリットのあるものだとわかっていたからこそ、自信をもって薦めてきました。

土井 導入メリットを詳細に説明するよりも、普段からの信頼関係をいかに構築しているかが、より重要だというわけですね。とはいえ、顧問先としては具体的なメリットも気になりますよね?

実島 もちろん、顧問先ごとの事情に即したメリットの説明は必要です。たとえば、クラウド会計を使えば、会計帳簿から自動的に入出金や現預金残高の推移がグラフ化され、指定した期間中の現預金の増減を、勘定科目や取引先、品目、部門別に集計して毎日確認できるようになります。そのほか、請求書や在庫、給与などの情報にも数クリックでアクセスできる。経営情報を即時に把握できれば、決算書や税務申告書を作成したり、将来の資金繰りを検討したり、ひいてはクラウド会計の導入自体をサポートすることも会計事務所のサービスになりえます。

土井 なるほど。顧問先がクラウド会計を導入する際、どのような「勧め方」をしていらっしゃるか、もう少し具体的に教えていただけますか?

実島 たとえば、既存の顧問先企業に対してネットバンキング口座の開設を促し、クレジットカード決済を勧める。そうするとクラウド型会計ソフトに日々、自動的に入出金・決済データが取り込めるようになり、会社の業績が常に把握できるようになる。危機感の強い企業ほどクラウド会計導入に敏感ですから、「会社をよくするためには、社長が数字にある程度強くならないといけない。そういう方向に一緒に変えていきましょう」と提案する際に、クラウド会計が強力な武器になります。また、「会社だけでなく自宅のパソコンやスマートフォンからも操作できる」というメリットを理解してもらうことも重要でしょう。ちなみに、弊社ではマネーフォワード社の「MFクラウド会計」を導入しています。

Special Columns

土井貴達 どい たかみち

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

米津良治 よねづ りょうじ

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

河江健史 かわえ けんじ

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。


「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?

2012年頃に登場し、わずか5年で100万社以上の企業が導入している「クラウド会計」。GmailやDropboxがあたりまえのようにビジネスの現場に普及しているように、今後、会計・請求・給与・経費精算などのバックオフィス系だけでなく、 顧客管理や在庫管理などあらゆる経営リソースがクラウド化していくことは間違いないと見られている。本連載では、クラウド会計をどう活用するか、企業の事例を中心に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』(ダイヤモンド社)の著者の3人の税理士がインタビュアーとなって紹介する。

「「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?」

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