ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経営のためのIT

経営者は「攻めのIT投資」をどう捻出し、
評価していくか

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第69回】 2017年6月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
2
nextpage

 経済産業省と東京証券取引所が2015年から共同で開始した「攻めのIT経営銘柄」も、国内企業の長期的な企業価値向上を目指して選定・公表されている。同銘柄の主旨には、「我が国企業が厳しい国際競争を勝ち抜いていくためには、従来の社内業務の効率化・利便性の向上を目的としたIT投資にとどまることなく、中長期的な企業価値の向上や競争力の強化に結びつく戦略的な攻めのIT投資が重要」と述べられている。

 また、同銘柄を選定するにあたっての基本的な要件である企業価値向上のためのIT投資プロジェクトとして「IT活用による『革新的な生産性向上』の実現」「IT活用による『既存ビジネスの拡充』の実現」「IT活用による『ビジネス革新』の実現」の3つの要素を評価するとしている。

 さらに、銘柄創設から3年目となる「攻めのIT経営銘柄2017」の選考においては、「日本再興戦略2016では、IoT・ビッグデータ・AI・ロボットなどを活用することで『第4次産業革命』を実現することを目指しており、これらの新たな技術を活用し、新たなビジネスや価値を創出するIT活用をより重点的に評価」するとしている。これは、図1で示したポートフォリオの右上に当たる「ビジネスの変革・創造」への取組みを重視することを意味する。

攻めのIT投資の特徴と評価の難しさ

 昨今のAI、IoTに代表されるデジタライゼーションへの取組みやデジタルビジネス創出に向けたIT投資は、すぐに効果が表れるとは限らないし、確実にリターンが得られるとも限らない。ある意味、未知への挑戦であり、不確実な取組みへの投資となるため、そもそもROI(投資対効果)という考え方がそぐわない一面もある(図2)

 こうしたイノベーション案件への投資には、起案当時者の強い意志と経営レベルのコミットメントが必要である。したがって、単なる「支出」ではなく、まさに意図を持った「投資」と捉えることが求められる。KPIや目標の設定においても、そもそも現状を測定することが困難なものもあり、ありたい姿についても実現可能性や市場性などに対する想定を含んだものとならざるをえない場合がある。

 したがって、そうした想定や不確実性を加味して、適宜軌道修正を行いながら柔軟な判断ができるような新たな投資評価の枠組みが必要となる。ただし、そのような場合であっても見込まれる売上増加や創出されるであろう顧客価値や事業規模など、狙いとする目標値を設定しなければならない。目標がなければ、投資の可否、推進の続行・中止などの判断を下すことはできないため、KPIの考え方は依然として必要といえる。

previous page
2
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


経営のためのIT

日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

「経営のためのIT」

⇒バックナンバー一覧