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「神様の女房」特別編
【第6回】 2011年9月29日
著者・コラム紹介バックナンバー

脚本家・ジェームス三木氏インタビュー(後編)
「ウサギとカメの話も、
負けるはずのカメが勝負を受けた理由が
あったはずだと、脚本家は考えるのです」

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10月1日、いよいよNHKでドラマがスタートする『神様の女房』。“経営の神様”として知られる松下幸之助の妻、「松下むめの」の生涯を描いた感動の物語『神様の女房 もう一人の創業者・松下むめの物語』のドラマ化だ。主演の松下むめの役には常盤貴子、松下幸之助役に筒井道隆、むめのの父・清太郎役に津川雅彦など、豪華な顔ぶれの「土曜ドラマスペシャル」。3週間、3回にわたって放映される。
このドラマの脚本を手がけたのが、大河ドラマなど大ヒットドラマを数多く手がけたことで知られるジェームス三木さん。ジェームス三木さんは、どのようにして、このドラマ『神様の女房』を作り上げたのか。脚本家として心がけていること、さらにはその技術とは…。スペシャルインタビューの後半(取材・構成/上阪徹、写真/石郷友仁)。

エピソードを作るのではなく、疑問をといていくのです。

――原作の高橋誠之助さんが脚本を読まれて驚かれていました。どうして、同じエピソードがここまでドラマチックにできるのか、と。

 エピソードはいろいろありましたが、とにかく僕はまず疑問が浮かぶんですよ。「どうしてこうなのか」「これはどういうことなのか」…。よくよく読んでみると、そういうところが間違いなくあるんですね。

 僕は、それを徹底して追求していっただけなんです。ですから、エピソードを作ろうとしているのではなくて、疑問を解いていくんです。必死でそれを解こうとしていると、必然的にドラマになっていくんです。だから、どこまで追求していくか、なんですね。どうしてこうなるのか、と。

――追求してみると、こうじゃないか、ということが浮かぶのですね。

 ウサギとカメの話があります。ウサギがカメに戦いを挑んで、途中まではリードしていたのに、油断して居眠りをしてしまって負けてしまった。油断は大敵だ、という話です。

 でも、脚本家はその通りに考えません。だいたい、ウサギがカメに戦いを挑むというところから、「どうしてなのか」「本当のそんなに簡単なのか」なんですよ。

 だって、ウサギに誘われて、カメは本当に戦うと言うと思いますか。負けるのはわかっているわけですから。それなのに受けたというのは、何か理由があるんじゃないか、と考えるわけですね。

 最初に眠り薬を飲ませようという計略があったのかもしれない。ウサギにおべんちゃらをしたくて、負けるのがわかって受けたのかもしれない。それとも、そのカメは本当にウサギに勝てると思っていた、バカなカメだったのかもしれない。そういうことをどんどんどんどん掘り下げていく。そうしないと、実はあの話というのは、成り立たないわけです。

――いろいろなことに疑問を持ち、考えてみることが大事なんですね。

 日本の教育は、子どもに教えて覚え込ませるでしょう。だからダメなんですよ。何も考えていない。学者にしても、ただ覚えたことが出てくるだけ、という人はつまらないでしょう。脚本家は、考えないとドラマはできないんです。

 だいたい、今は覚えないといけないことは、みんなネット上にあるわけでしょう。聖徳太子が何年に何をしたか、なんて覚えていても仕方がない。それよりも、その知識を使って何をするか、が問われているわけです。

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「神様の女房」特別編

“経営の神様”として知られる松下幸之助の妻、「松下むめの」の生涯を描いた感動の物語『神様の女房 もう一人の創業者・松下むめの物語』が刊行された。10月1日からは、ジェームス三木脚本、常盤貴子主演でNHKのドラマ化も決定した(土曜日夜9時より。総合テレビ・全3回)。
著者の高橋誠之助氏は、幸之助・むめの夫妻の最後の執事として、二人に臨終まで仕えた人物である。松下幸之助には数多くの著作・評伝などが残されているが、夫人については実はほとんど知られていない。五里霧中の商品開発、営業の失敗、資金の不足、苦しんだ人材の採用と教育、関東大震災と昭和恐慌、最愛の息子の死、そして戦争と財閥解体…。幾度も襲った逆境を、陰となり日向となり支え、「夫の夢は私の夢」と幸之助の描いた壮大なスケールの夢を二人三脚で追いかけていったのが、むめのだった。
この連載では、本書プロローグ全文掲載、著者インタビューなどを通して、小説「神様の女房」と小説の主人公「松下むめの」の魅力について、紹介していく。

著者
髙橋誠之助(たかはし・せいのすけ)
1940年京都府生まれ。1963年神戸大学経営学部卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック)入社。主に広島営業所などで販売の第一線で活躍。入社7年目、29歳のとき突然に本社勤務の内示があり、「私は忙しい。松下家の家長として十分なことができない。それをきみにやってほしいんや。よろしく頼む」と松下幸之助直々の命を受ける。以来、松下家の執事の職務に就き、20年以上にわたり松下家に関する一切の仕事を担う。幸之助とむめのの臨終にも立ち会い、執事としての役目をまっとうする。その後、幸之助の志を広めるために1995年に設立された財団法人松下社会科学振興財団の支配人となる。2005年、財団法人松下社会科学振興財団支配人、定年退職。

「「神様の女房」特別編」

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