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アマデウスたち

湯浅 誠
宗教家でも左翼活動家でもない新鮮

週刊ダイヤモンド編集部
【第38回】 2008年7月18日
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湯浅 誠
写真 加藤昌人

 清潔感をまとった青年が淡々と、貧困問題の根を説く。1000件を超える生活保護申請に同行した体験は事の本質をとらえ、視点は低く優しく、だが、理論的である。宗教的いかがわしさとも左翼思想の押し付けがましさとも無縁であることの新鮮さと安心感が、人びとの耳目を彼に向けさせる。

 数年前から指摘していた「ネットカフェ難民」が、ようやく存在を知られるようになった。だが、「日本はまだ貧困層がいるかいないかという論争のレベルにある。解消手法の議論以前だ」と自覚する。社会全体に染み込んだ、「貧困層はいても少数例外」であり、しかも「自己責任の結果」という思い込みが壁となり、容易に壊れない。

 なぜか。「自己責任で片づけるのがいちばん簡単だから。それ以上、かかわりたくない。考える余裕もない。社会全体に溜めが失われている」。だが、社会分析は問題を解決しない。最近、言い方を変えた。「自己責任で転落した人なら死んでもいいんですか。それは動物の社会でしょう」。

 兄は障害者。東京大学進学時点で社会に違和感があった。なにかを変えるために、組織人にだけはなるまいと決めた。一度は学者を目指したが、博士論文に費やす3年が惜しく、「生活改善プロセスを共に喜べることに手応えを感じる」現場を選んだ。

 「今が勝負時」。貧困が“ブーム”のうちに、1965年に打ち切られた貧困層調査を政府に再開させねばならない。永田町と霞が関に、踏み込み始めた。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)

湯浅 誠(Makoto Yuasa)●貧困者支援者。1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得後中退。在学中から養護施設ボランティア、ホームレス支援、イラク復興支援などにかかわり、現代日本の貧困問題を現場から訴え続ける。現在、NPO自立生活サポートセンター・もやい事務局長ほか。著書に『貧困襲来』。

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